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VOICE for FUTABA Season3 – Vol.0「3年目を迎えるプロジェクトのこれから」

双葉町民と町に関わる人々の声に耳を傾けるために、2021年度から活動を開始したVOICE for FUTABA。今年度で3年目を迎えるなかで、これからの活動についてプロジェクトメンバーはどのように考えているのか?Season3のvol.0として今回は、VOICE for FUTABAの今後について議論を交わしました。

【参加メンバー】
・髙崎 丈(KIBITAKI代表)

双葉町出身。元「JOE’S MAN 2号・キッチンたかさき」のオーナーで、2022年に「髙崎のおかん」をオープン。日本酒のお燗を広める活動を展開中。株式会社タカサキ喜画を双葉町に設立、その中でKIBITAKI プロジェクトを立ち上げて双葉町の再出発におけるさまざまな活動を企画・プロデュースしている。

・官林 春奈
双葉町出身。ポストプロダクション・地方テレビ局勤務の後、株式会社omegane(映像制作会社)代表取締役を経て現在はフリーランスの映像ディレククターとして活動中。千葉県在住。

・清水 信宏/町井 智彦
UR都市機構 東北震災復興支援本部 福島復興支援部 地域再生課
原子力被災地での持続的なまちづくりに向けて、関係人口の拡大や誘導による地域再生に取り組む。町内外のさまざまな人が関われるコトづくりを目指し、多様な主体との協働・連携を進めている。

・小林 雅幸
株式会社Rurio代表取締役
東北大学工学部を3月に卒業、双葉町での活動により注力するべく任意団体を法人化し、代表を務める。これまでに双葉町でバイリンガルツアー「PaletteCamp」やバイリンガル雑誌「iro」を発案。双葉町から世界に発信力を持つメディアブランドを作るべく、浜通りを駆け巡る。

・島野 賢哉
株式会社サムライジンガ 代表取締役/プロデューサー
ブラジル、台湾における芸術文化を中心としたプロジェクトに携わる。クリエイティブサウンドスペース『ZIRIGUIDUM(ジリギドゥン)』創設者。髙崎とともにKIBITAKI プロジェクトに参画し、さまざまな事業推進に携わっている。

今年度のVOICE for FUTABAの活動について

髙崎 みなさん、今年度もよろしくお願いします。これまでの2年間で町民やさまざまな方の貴重な声をたくさん聞くことができましたが、今年度もさらにこのプロジェクトを発展させていければと思っています。

島野 昨年までと大きく異なるのは、双葉町の避難指示が一部解除になり、町の住民が徐々に増えていることですよね。現在、何人くらいの住民がいらっしゃるのですか?

清水 町の職員の方から先日お聞きしたところでは、現在は約80名とのことです。

町井 昔の町民の方が戻って来られたり、町役場の職員の方が住まわれたりもしているのですが、新しく双葉町に移住してきた人も少しずつ増えてきた印象がありますね。新たに双葉町に誘致した企業の方なども、新しく町民となっているようです。

島野 双葉町を取り巻くフェーズが大きく変わってきていますよね。

小林 避難指示が一部解除になったことで、僕たちが主催している体験型ツアー「PaletteCamp」の狙いも変更しました。去年までは、ヨガなどのイベントを開催して学生を集め、少しでも双葉町に関わってくれる若者の人数を増やそうと考えていました。しかし今年からは、継続的に双葉町に関わってくれそうな人や、まちづくりについての議論を交わせる人に的を絞ってアプローチしようと考えています。「PaletteCamp」などで双葉町に関わりを持った方のひとりが双葉町に移住しました。そうした実績も生まれてきているので、双葉町に興味を持ってもらえるような活動を継続して行っていきたいですね。

島野 双葉町出身である髙崎さんや官林さんの周りではいかがですか? 具体的に町に戻って定住を考えている方も出てきていますか?

髙崎 私の周りでは、まだいませんね。双葉町で開催されるイベントに積極的に関わっていいきたいという声は聞きますが。

官林 私の周りでも定住を考えている人はいません。ただ、私たちの親世代では、故郷に戻って生活したいと考えている人がいると聞きます。もちろん、双葉町にはまだ病院がないので、健康に不安がない元気な方々に限られてしまう話ではありますが。また、双葉町でリーズナブルに住居が借りられるのであれば、現在の家との二拠点生活をしたいと考えている人もいるようです。

町が直面する新たな課題とは

町井 双葉駅の西側地区に建設している「えきにし住宅」では住人を順次公募しているのですが、毎回かなりの倍率になっているようです。それだけ今は双葉町の住宅に対するニーズが高く、供給が追いついていない状態です。

官林 実は私も公営住宅の募集に落ちました。双葉町への移住の意欲が高まっていても、私のように抽選で落選したりすると、その気持ちが削がれると思います。せっかく双葉町に移住したい人が増えてきているのに、それに応えられない今の状況はかなりもったいないと思いますね。「双葉町に住めないなら、近隣の町に家を借りようか」と思ってしまう人も多いでしょうし。

髙崎 僕も「実家を半年間貸してほしい」と、あるアーティストさんに頼まれています。双葉町に住みたい人は増えていると僕も感じますね。

官林 私の実家が更地になっているので、例えばそこに簡単な小屋を建てることができれば、二拠点生活などの拠点にもできます。そうした拠点を設けることへの行政のサポートも今はまったくないので、支援制度の整備も行ってほしいと私は思います。

清水 避難指示が一部解除になったので、移住したい人の住居の受け皿や支援制度を用意するのが次のステップですよね。

髙崎 ただ、個人的に感じるのは、今は行政としても全然余裕がない状態。だからこそ、私たちが民間で動いていくことも重要だとも思います。

小林 住民の方に「なぜ双葉町に戻ってきたのですか?」と聞くと、「ふるさとだから」と応える方が多いんですよね。まだ環境が整っていなくて生活は不便だけど、ふるさとだから戻ってきたと。新しく移住しようか興味を持った若者には「ふるさとだから」という理由はないわけですから、ちゃんと生活できるような環境整備も長期的な視点で考えていく必要がありますよね。

島野 住まいと生活の環境の問題を解決することは、絶対に必要ですよね。双葉町への移住に興味を持つ方が増えているなかで、その方々を受け入れられるかどうか、双葉町は重要な局面を迎えていると思います。移住したい人を迎え入れられる仕組みの構築が、双葉町が現在抱える大きな課題だと思うので、その解決に向けたさまざまな方々のご意見もVOICE for FUTABAのなかで聞いていきたいですね。

今後のトークセッションについて

島野 例えばですが、すでに双葉町で住み始めている方々による「住民のトークセッション」や、双葉町で働いているけれども「近隣の町に住んでいる方々のトークセッション」などは、双葉町での新しい暮らし方のスタイルを考えていく上で、貴重な声を聞けそうですよね。

小林 そうですね。僕は「今後の双葉町をどうしていくべきか」の議論が全然足りていないと思っているので、みんなでいろいろ議論していきたいです。僕たちの団体「Rurio」でも、まちづくりの専門家などを招いて議論するイベントを企画したいと考えています。そうした活動とVOICE for FUTABAがうまく連携していけると良いなとも思っています。

高崎 そうしたイベントでの議論を通して、全国に同じような仲間がいることがわかり、いい感じで地方が巻き込まれていくのがよいと思います。

小林 会に参加することでモチベーションを高められるとよいと思いますし、双葉町は「なぜ文化が生まれたのか」といったことを深く考えさせられるところだと思っています。

髙崎 僕は今度、双葉町の実家で「なにもしない合宿」というのを開催する予定です。誰でも参加いただけるイベントで、みんなで集まっておしゃべりするだけの合宿なのですが(笑)、地方創生に携わっているおもしろい方々にも参加いただく予定なので、そういう活動もVOICE for FUTABAの発信と絡めていけたらいいですね。イノベーションは意図的ではなく、宝くじ的な偶然の産物で、まずはそうした場をつくるのが大事と思っています。

清水 いろんな方の意見を聞くことで、思わぬ発見が絶対ありますよね。先程、官林さんが二拠点生活用の住居を探している方がいるという話をされていましたが、私はそれを知らなかったので、すごく興味深い話だと思いました。

町井 VOICE for FUTABAでは、声の大きい人ばかりではなく、普段はあまり意見を言うことができていない方からもお話を伺いたいですよね。

官林 そうやってVOICE for FUTABAでお聞きした意見を、きちんと行政などにも届けていきたいですね。

島野 VOICE for FUTABAでお聞きした声が、行政の施策に活かされたり、新たなプロジェクトが生まれるきっかけになったりするような流れをつくっていきたいですね。

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