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さびしさと、吊り合うものを。

抱き締めて、手を握る。
握った手を、離す。
大きく手を振る。
またねえ、と、声を出す。

まだ届く、まだ届く、それでも、
だんだん、だんだんと、離れていく。
そうしてふたりはまた、ひとりとひとりになった。

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8/3に、広島で行われたアカペラライブ
Work Life Balance vol.2」に、suisaiで出演した。

一昨年の9月に、九州でのライブで共演した仲間からの誘いで、歌う機会を頂いた。
中国地方への遠征は初めてだったが、個人的には、旧い仲間との再会もあり、またスタッフ、共演者の方々も大変暖かく、アットホームな雰囲気で、長旅の疲れや緊張もほどけた。

初めて聴いてくれた方、
YouTubeでの演奏を既に聴いてくれていた方、
その場に居なければ分からない、呼吸とともにある声を、音を、届けることができたのではないかと思う。
課題も見出しつつ、次にも繋がっていく舞台だった。

改めて、本当にありがとうございました。
お土産、持って行けなくてごめん。
また会おう。続けていれば、きっと。

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Balanceー吊り合いが取り出されるとき、

そこには、隔たりをもった複数があって、
しばしばそれらは、もとは溶け合っていたものであったりして、
そして、僕等がその隔たりを感じるとき、
物差しや、天秤や、時計、
そんないくつもの「はかり」を用いる。

それは同時に、心に来る寂しさの処し方、でもある。
誰かや何かとの隔たりを自らの世界に繰入れようと、絶えず試みているのだと、思う。

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分かり易いこと、ではない。
だからいつも、不安は離れていかない。
単純な楽しさを届けた方が、幾らか良いのではないか、
なんて、今更弱気になることも、ある。

それでも、やめないのだろう。
たとえ、かたちの取り方を変えても、余白と疑問符を追いかけることを。

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離陸する。速度が上がる。
肺が押し付けられ、縮む。
機体がゆっくりと腰を上げ、地面を離れた。
戻れない。戻らないと決めたから。

「ああ、」
小さく声を漏らした。
この声ももう、聞えない。
少しの間だけ仕舞っていた物差しを、また取り出す。
愛しいものとの距離を確かめて、
胸に来るさびしさとの吊り合いを探す。
そんな日々が再び、始まる。

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さびしさを巡って、人は生きる。
同じ球の上で、目にも留まらぬ速さで、廻りながら。
誰もが、それぞれの見えない「はかり」を、胸に提げている。
きっとそれは、うたの形をしていても、いいはずだ。

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