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木犀の香を思い出すように。

山が色づいていたことに、漸く今日、気が付いた。
最近は朝から晩まで、必死で体を動かして働いている。
言葉にすると大仰だが、「命を搾り取っている」と、感じる。
そんな中でも、suisaiの活動について、言葉にして残しておかなければならないことがある。
だから、とても遅くなって心苦しいが、感謝を込めて、書き残しておく。

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9月は2度、ゲストとして出演の機会を頂いた。

9/23には新宿にて、10大学合同ライブへ。

「STARS」という名を冠したこのライブでは、関東近郊の10大学のサークルに所属するグループが、各々の個性や特徴を発揮しながら、思い思いの演奏を披露していた。
それぞれの場所で育まれ、時間を経て形作られてきた輝きが交わり、線をなし、ひとつの場を作る。
新たなきらめきの仕方を目の当たりにしたり、その日初めて交わった軌道や、象られた星座もあったことだろう。

suisaiはそんな中で、彼らの目にどう映ったのだろうか。
自分にとってそこは、過去と未来の交わる場でもあった。
彼らの歌う姿は、過去であり、同時に未来だった。たしかに、そう見えた。

自分は、suisaiはどうだったろう。彼らの目に映る自分の姿は、耳に訪れる声の重なりは、
歴史、冷えて硬くなった過去ではなく、呼吸し、温度を持った今として、
そして良い悪いはあれ、彼らにとっての未来の何がしかとして、
あの場にその身を置けただろうか。

自分自身は、そこに長く立ち会うことはできなかったが、そんなことを想像し、
そしてかつて、所かまわず手を伸べて、遠くで歌っている誰かとつながろうとした自分自身の姿を、勝手に重ねたりも、した。
誰も喜ばない昔語りだから、これ以上は心のうちに留めておく。
大変遅くなってしまいましたが、主催、スタッフ、出演者の皆様、本当にありがとうございました。

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9/28には鎌倉にて「カマクラ・アカペラ・サミット」へ出演した。

昨年度コンテスタントとして出場し、最優秀賞を頂いたこのイベントに、今年は有難いことにゲストとして招待を受けた。
同じゲストとして、プロアカペラグループの「TRY-TONE」の皆さんと共演を果たすこともできた。

当日は殆ど観光などはできなかったが、出演前に、少しだけ会場の鎌倉宮の周辺を歩くことができた。

歌声が聞える境内から、鳥居をくぐり、石畳を下り、まっすぐに走る道を往復するだけの、ごく短いもので、
それでも、次第に遠ざかる舞台での歌声に代わり、静けさー単なる空虚さとは別種の、
優しく、大らかな余白のような静けさが、身体を包んでいくのを感じた。

幾つもの小径。朝顔の生垣。
今はもう北の湖のほとりに処を移した、小さな雑貨店。
冷房が壊れたからと、外の風を導き入れる料理屋。

この街はこうして大らかに、そこに暮らす人、訪れる人の数多の思惑を受け入れて、
ただ静かに、それでも空しからず、そこに在る。
自分も、そこにうたを載せればいい。そうすればきっと、また新しい色やかたちが、現れるはずだから。

薄曇りの空。あの舞台から、何を届けられただろうか。
どんなうたも、祈りを抱いている。あの場で歌うと、改めてそう気付かされる。
運営スタッフの皆様、共演のコンテスタント、TRY-TONEの皆様、ご来場の皆様、改めて、ありがとうございました。

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いまはまだ実らぬ日々を、自棄になりそうになるのを必死に堪えながら、息を切らしながら、ひた走っている。
それでも、秋の実りに幾らか遅れながらも、新しい試み、幾つかの報せを用意している。
力を貸してくれている方々、そしてsuisaiのメンバーには、感謝しても足りない。
次に綴るときには、そのことについても伝えられたらと思う。

止まっているように見えても、淀まずに流れる水のように。
少しずつでも、お伝えしていけたらと思っています。

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