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声劇フリー台本「Lotus Flower」

1「おはよう」

1 未読放置されたLINEにまた被せて送ってみる。重いかなって思って送信取り消ししようとする手。跡が残ってしまうから思いとどまった。

ピロン

2 朝、支度中になった通知音。寝坊気味だった俺は確認せずポケットに携帯を突っ込んだ。きっとあいつからだから大丈夫。そう思うようになったのはいつから?

1 思い出される付き合いたての頃。私から送らなくても来ていたLINE。誘われていた電話。でも今はどう?全部私から。

2 忙しくなった私生活。部活と両立できない勉強。いらだちを覚えながら過ごす毎日。ストレスは溜まりに溜まって目の前のことも盲目になっている。

2「おはよ。昨日疲れて寝てたわ」

1「そうだと思ってた!気にしなくていいよ!」

1 気を使ってわざと多めに使う記号。この文字を打った時の表情は死んでいた。

2「ごめんな」

2 俺はなんで謝ってるんだろう。悪いことをした訳でもないのに自然に出てくる言葉は謝罪だった。

1 一体君は何に対して謝ってるの?小さなことに腹が立って同時に悲しくなって私の心は忙しく動いた。

2 帰り道、君が好きな蓮華の花を見つける。白からピンクへ彩られていく花びらはとても綺麗だ。思いついたように携帯を出す。

2「今から会える?」

1 数ヶ月ぶりに見た彼からのお誘いの言葉。胸が高鳴って悩んでいたことなんてどうでも良くなる。化粧ポーチ、ちゃんと持ってきたかな。髪型変じゃないかな。鏡をチェックしながら思う。あぁやっぱり私は君がいい。

2 君を待つ時間は苦じゃなかった。疲労した心なんて忘れて駆け回っているように気持ちが踊る。どうやって声をかけようかなんて柄でもないこと考えて君の反応が目に浮かんで頬が緩む。俺はちゃんと恋してたんだな。

1「おまたせっ」

2「え、走ってきたの?」

1「なんか走らないと落ち着かなくてさ」

2「なんだよそれ」

1「なんだろこれ」

2 目を合わせて笑い合う。何気ない会話。僕らにずっと足りていなかったもの。

1「ここの公園、遊んでる子達いないね」

2「そうだね。この時間の割には静か」

1 言葉をかわさない無言の時間。それさえも愛おしいと思う。君の隣、私だけの場所。

2「最近ずっと忙しくてさ」

1「うん」

2「部活高校からやめようと思ったのに勧誘に負けて仕方なく入ったんだけど朝練あるしOFFはすくないし」

1「えっ早起き苦手なんじゃ…」

2「そうなんだよ。俺は毎日遅れず行ってんのに誘ってきた奴らは堂々と遅刻してくるし勉強も結構な速さで進むから置いていかれそうになるし」

1「うん」

2 君の相槌が心地よくて胸に秘めていた思いが溢れてくる。誰かに話すことってこんなに心の荷が降りるんだって実感する。

1「分かるよー高校生大変だよね」

2「ほんとに。もう何もかもに疲れちゃってて目の前のことあんまり見えてなくて揉めたりすることもあ」

1「大変だったの知らなかった。ごめんね、気づけなくて」

2「いや、言ってなかったから」

1「私、帰宅部だから結構余裕あるしテスト勉強だって早めにできるからその…頼ってね?」

2「うん」

1 君のその言葉が暖かくて目頭が熱くなる。俺、辛かったんだな。

2 押し殺して来た本心。もっとかまって欲しいとか素直になれたら何か変わるかなって思いながらも気持ちのうちを文字に出来なかった。でもそれで良かったんだって君の言葉を聞いて思う。文面なんかより会って話すのが1番いい。

1「私さ」

2「うん?」

1「ずっと寂しかった。返信遅いし電話誘ってくれないし」

2「ごめん」

1「でもね、顔みて1回話したらほんとに満たされた。会うって選択肢私の中に今日までなかったなー地元一緒なのに」

2「ほんとにもっと早く言えばよかったな。」

1「LINEとか電話とか無理してしなくていいからたまにはこうやって誘ってよ。」

2「うん、そうする」

1「1人で抱え込んじゃだめだよ?」

2「ありがとう。あ、そうだ。俺さっき蓮華みたよ」

1「ほんと?私今年は見ずじまいかなー」

2「おかげで好きになった、あの花」

1「それはよかった?」

2「もう7時半だってさ」

1「えーまだ明るいのにね。帰るか!」

2 蓮華の花言葉は「心が和らぐ」この花を僕は君に送りたいと思う。

1.2「「ありがとう」」

1 君に聞こえない声で小さく呟いた


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