115回医師国家試験まであと3か月

こんにちは。

115回医師国家試験まで、残り3か月となりました。
先の話だと思っていた試験が近づいてきて、不安な人も多いかと思います。

今回は、115回医師国家試験の出題委員の顔ぶれや、最近の傾向を中心に分析して、これから3か月どのように過ごすのがいいかを、自分がもし受験生だったらどう勉強していくか、という視点で書いてみようと思います。



今回から、委員長が変わったために、全体の傾向が少し変化することが予想されます。
さらに、新しく試験委員となった先生の中には総合内科および総合診療の専門の先生が多く含まれていることも、注目すべきポイントです。

現在、新専門医制度では、専攻として「総合診療科」が加わり、Generalに診ることができる医師が必要とされています。
さらに、スーパーローテーションでは精神科・産婦人科・小児科が必修として加わり、外来研修が必須となったことで、患者が来た際に「専門外だから」と断ることがない、どんな患者がきても最低限の対応ができる医師を育てようという考えがあるように思います。

以上を反映して、医師国家試験では近年、
・過去に何度も出ているような、医者であれば常識の知識を問う問題
・複数の診療科/臓器を横断するような総合的な知識を問う問題
・細かい医学知識ではなく、次にどうしたらよいかの判断を問う問題
の割合が増えてきています。
また、公衆衛生では医療費の増加/高齢化社会/若者の自殺といった社会上の問題と関連する問題が複数出題されています。

試験委員の顔ぶれをみてみると、
・新任の先生は総合内科/総合診療科/腫瘍内科を専門とする先生が多い。出題委員長も腫瘍内科医。
・内科では血液内科、マイナー科では眼科/精神科の先生が大きく入れ替わっている。
・それ以外の内科の新任の先生は膠原病/腎臓/内分泌の先生が多い。これらの分野は、近年医学知識のアップデートが多く、また高齢化社会となっているために需要が増している科でもある。
・外科では、小児外科の先生が新しく着任された。乳腺外科/呼吸器外科の先生も入れ替わっている。
・産婦人科の新任の先生は合併症妊娠/産科救急の専門家。
・ほとんどの先生は110回よりも後から着任しており、古参の人でも108回には着任している。
というのが重要だと思われるポイントです。

すなわち、以上のことから考えると、自分だったら
・過去問は直近5年分を重視して完璧にする。古すぎても出題者が異なるため効率が悪い。
→答えを覚えるのではなく、他の選択肢のどこが誤っているのかを検討する。臨床問題では、診断のポイントになるのは問題文中のどの部分なのかを確認する。
間違えた問題では、自分が何を知らなかった/勘違いしたから間違えたのかをきちんと振り返るようにする。
間違えた問題は1週間後に再度解いてみて、解けるようになっているか再確認するとよい。
この過去5年分のまとめすらできていない状態で、出るかどうかもわからない直前予想講座に手を出すのは危険なので、やめておいたほうがいい。
(ただし、Medu4の国試究極MAPは過去問頻出事項がまとまっているため、知らないことがないかの確認として非常に有用だと感じた。成績が上位30%以上の人では知っている内容がほとんどで、あまり効果は実感できないため不要だろうと思うが、下位層にとっては非常によい講座だと思う)

・臓器横断的な問題が出されても対応ができるよう、総論的内容をしっかりと勉強しておく。
→「この病気ではこの症状!」という1:1対応の縦切りの勉強に加えて、「この症状(主訴)で思い浮かべるべき疾患にはどのようなものがあるだろう?」という横切りの視点での勉強を忘れないようにする。
臨床問題では、スナップ診断をする場合には、矛盾がないかを確認するクセをつける。
例えば、「突然の移動する背部痛」というキーワードでは、大動脈解離に引っ張られやすいが、尿管結石である可能性もある。(むしろ有病率的にはそちらの方が高い)
年齢やリスク因子、発症様式、経過、症状など、「その疾患らしい所見」はきちんと揃っているか、「その疾患らしくない所見・矛盾する所見」はないかを必ず確認してから選択肢を選ぶようにしよう。

・小児外科は意外と盲点となりやすい。小児で手術が必要な疾患は多くはないので、どういった病気で、どういう時に手術となるのかを確認しておく。小児の内科的疾患については出題委員の変動は大きくはないので、過去問の分析を。

・血液内科/眼科/精神科は出題委員の変動が大きく、新作問題の割合が多いと予想されるため、過去問直近5年分だけでは心許ない。さらに、これらの科目は近年難しい問題が数多く出題されている。予備校のテキストや教科書で全体像を再確認し、抜けがないかを確認、満遍なく演習を重ねておく。

・内科/外科ともに腫瘍の専門家が多い。
TNM分類を全て覚える必要はないが、良性腫瘍と悪性腫瘍の違い(病理像/画像)や、手術がどこまでできるのか(肺癌であれば、「手術できるのはN1まで」と覚える)は整理しておく。

・産婦人科では、妊娠異常症(妊娠高血圧症候群、妊娠糖尿病など)や、母子の命にかかわるような病態(子宮破裂や常位胎盤早期剥離など)の診断/検査/対応についてはまとめておく。あとは過去問演習を。
という方針で勉強をしていくのがよいと思います。

おすすめをしたいのは、大学の友人でも、ネット上の友人でもいいので、定期的に勉強内容の共有(最近間違えた問題を出し合うなど)をしたり、進捗状況/勉強量を報告しあうということです。
一人で勉強をしていると、気がつかないうちに「それは出ないでしょう...」というマニアックな内容ばかり勉強していたり、知らず知らずのうちに怠けてしまって周りから置いていかれる、ということが往々にしてあります。
人と話すことで、ストレスの解消にもなります。
卒業試験やポリクリが終わった大学も多く、各自で勉強をしているという人も多いですが、ここで勉強の方針を間違えてしまうと後々とんでもないことになるので、残り3か月は誰かしらと協力して勉強をしていくことを強く勧めます。

残り3か月。何をしたらいいのか、どう勉強すればいいのかが分からず、困っている方がいれば、参考にしていただけると幸いです。
医学は範囲が広く、掘り下げれば無限に細かい内容が出てくるので、試験が近づくにつれて焦りと不安が出てくるかもしれませんが、間違った勉強法をしたり、遊びすぎたりしなければまず受かります。大丈夫です。
残り3か月、頑張りましょう。

みなさんの合格を応援しております。
必ずしもお返事できるというお約束はできませんが、ご相談をいただければ可能な限り対応します。
今後ともよろしくお願い申し上げます。
医師国家試験クイズくん 管理人W

-追記-
現5年生以下の方は、いまは闇雲に過去問演習をするのではなく、6年生になるまでは病態を意識して、なぜそうなるのか?を考えながら、毎日少しずつでいいので分野ごとにコツコツと勉強をしていくことを勧めます。
それぞれの疾患について、
「この病気はこういう機序で起きるから、どういう患者に多くて、どういう症状を呈しやすくて、どういう検査が有用で、どういう治療が有効で、どういう経過を辿りやすいか」
ということをまとめていくといいです。
その後、勉強した疾患についての問題をQBやMedu4のデータベース、大学の試験問題で演習をしていきます。

また、診断においては、
・患者情報:どのような患者が
・主訴:どういう訴えで
・発症様式:突然/急性/亜急性/慢性に発症して、改善/増悪/横ばいに経過している
という3つの視点が重要なため、それぞれの疾患について、スラスラと言えるようにしておきましょう。
例をあげれば、
心筋梗塞
患者:喫煙歴の長い高齢者が
主訴:胸痛で来院
発症様式:突然発症で、時間経過で症状は横ばい
といった感じです。

ポリクリや部活で忙しいかと思いますが、一足先にはじめて積み重ねておくとのちのち非常に有利です。
マッチングや国試前に、自分は周りよりも勉強してきたから大丈夫!と思えるようになっていると安心できます。
コロナ禍で大変ですが、頑張っていきましょう。

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