国家試験まであと2か月(1)

こんばんは。
更新が滞ってしまい申し訳ありません。

いよいよ国家試験まであと2か月となりました。
焦りを感じている人も多いかと思います。
4、5年生も、進級試験が近づいてきて、勉強を始める人が出てくるころかと思います。

そこで、医師国家試験の受験にあたって、日常的に気をつけたいポイントについてお話ししようと思います。
今回は、
「Fast」と「Slow」を切り替える練習をしよう
という内容です。

まず、
診断学の考え方のなかに、System1(Fast)とSystem2(Slow)というものがあります。
非常にザックリと、大雑把にいうならば、System1は閃き・直感に該当するもので、System2は深い思考・検討に該当します。

普段の勉強においても、FastとSlowを使い分けて勉強をしていくべきです。

どういうことかというと、問題演習を行う際には、
<Fast>
・診断のキーワードを捉える練習をする
→右季肋部痛+発熱+意識障害があれば、胆管炎を疑う、夜間血尿+溶血+ヘモジデリン尿であればPNHを疑う、など、診断のために重要なキーワードを覚える
・問題を解いた際に、反射的に解けるレベルまで反復して演習をする:答えを丸覚え(この問題の答えはa!ではなく、他の選択肢はこういった理由で違うから消去法でa、のように理由まで言えるように)
・過去3年分(5年分)や必修に出題範囲を設定してランダム演習を行い、わからない内容/知らない知識がないかをサクサク確認する

<Slow>
・間違えた問題や、わからない選択肢について、臓器別のテキストやYearNote、病気がみえるなどの本、Web検索などで確認し、周辺知識を覚える
・スナップ診断をした際には、その診断で矛盾するところがないか(大事な所見すべて揃っているか、逆にみられてはいけない所見はないか)を確認する
・正解の疾患以外に鑑別に上がる疾患にはなにがあるか、何がきっかけでほかの疾患は除外できたのか(鑑別順位が下がったのか/合わない点は何か)を考える
・その疾患についての知っていること(疫学、病態生理、症状、検査(画像検査・生理機能検査・検体検査)、病理像、治療...)はどうなっているかを考える/調べる
・模試やテストゼミ、100回代前半の問題など、まだ解いたことのない問題/覚えていない問題を時間をかけてしっかりと解く練習をする

というように、頻出問題や常識問題を反射で解けるようにするための訓練と、じっくり1問1問を考えて解き、さらに関連事項を調べる勉強とをどちらもやっていく必要があります。

これを怠ると、過去問をパッパっと流していくだけのジャンクアウトプットとなり、新作問題や古い問題のリメイクに対応ができなくなってしまったり、ゆっくり考えすぎて時間がなくなり、焦ってケアレスミスをしたり、勘違いをしてしまう、といったことになります。

こうした「Fast」の訓練をしていくことで、112D30→114A59のようなほぼ同じ問題を瞬殺することができるようになり、時間に余裕が生じます。
国家試験では、早く解き終わった場合にスマートフォンやタブレットを含んだ荷物を持って退出ができるため、次の時間のための勉強ができます。
とくにA、Dブロックには公衆衛生は出ず、B、C、E、Fにのみ出てくるため、AとDは早めに解き終えて、公衆衛生の暗記事項・頻出計算問題を見直すという戦略は非常に有効です。

そして、複数の「キーワード」に分けて疾患を記憶しておくことで、診断がつけやすくなるだけではなく、知識をサッと引き出しやすくなります。
これは実際の診療においても学んだ知識を活かしやすくなり、重要です。

さらに、「Slow」の訓練をしっかりとしておくことで、新作問題にも対応することができるようになります。
国家試験の問題では、新規の知識を問う問題でも、ほとんどの場合、5つの選択肢のうち3つは既存の知識で切れるようにできています。
(そうでない問題はみんなできないので落としても差がつかない)
しっかりと選択肢を考察しておくことでこの3つの選択肢を切ることができ、関連知識を調べておくことで残り2つから正答を絞ることができます。
スムーズに解く、「Fast」の練習は重要ですが、焦って闇雲に正答選択肢を暗記するだけのジャンクアウトプットになってしまってはただの時間の浪費です。

さらに、ほかに鑑別にあげないといけない疾患はなにかを考えて問題を解くようにすることで、思い込み(アンカリング)による誤診を減らすことができます。

一般問題が苦手だという人は多いです。
それは、普段なんとなくで問題を解いてしまい、選択肢をしっかり考察することができていないためです。
1問1問を大事に解き、その疾患についての要点を押さえることでしか一般問題の得点率は伸ばせません。


試験本番では、まず「Fast」の経験を生かして、ぱっとみでわかる問題を処理します。
(ただし見直しはすること。誤っているものを選べ、や2つ選べ、3つ選べ、を見逃さないように)
そして、パッと見でわからない(類題を解いたことがない)問題を、「Slow」の経験を活かして診断を絞り込み、選択肢を1つでも多く切れるようにしていきます。
そうして一通り問題を解いたのち、ケアレスミス・マークミスをしていないかを確認します。
こうした訓練を、模試や国試の過去問を時間を測って直前までに数回こなしておくといいでしょう。
使い分けに慣れてくれば、30〜40分もあれば1ブロックを解き終えることができるようになります。


残りの時間がだんだんと少なくなってきて、焦る人が増えてきます。
周りが自分が知らないことをたくさん知っていて、不安になることもあるかもしれません。
勉強をしても成績が伸びず、悩むこともあるかと思います。
しかし、そういったときこそしっかりと考えて勉強をすること、1問1問を意識して解いていくことが重要になります。
「Fast」の問題演習と、「Slow」の問題演習、どちらかだけをやるのではなく、どちらもやるように気をつけて演習をしていくことが、問題演習の質を高めるために重要だと考えます。
繰り返しになりますが、勉強方法を間違えず、周りの友人から引き離されないだけの演習量を確保するようにすれば絶対に落ちません。
医師国家試験は、諦めてしまった人、頑張るときに頑張れなかった人、やり方を間違えたまま戻れなかった人だけが落ちる試験です。
ときおり、いま自分がやっていることは大丈夫かを振り返るようにしましょう。

残り2か月、頑張りましょう。

みなさんの合格を応援しております。
必ずしもお返事できるというお約束はできませんが、ご相談をいただければ可能な限り対応します。
今後ともよろしくお願い申し上げます。


5年生以下のみなさんも、問題演習をする際には上記のようにポイントをしっかり意識して解くようにしましょう。
普段から意識をして問題演習をしている人と、そうではないひとでは1年間の間にとんでもない差がつきます。
国試に受かるだけであれば、差がついても問題ないですが、マッチングや、医者になったあとのことを考えると、この差は非常に重要です。




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