「一歩その先」を見据えて行動を(前編)

こんばんは。
今回は5年生以下を対象に、マッチングの話と、ポリクリの話を、「先取り」という少し変わった目線からしてみたいと思います。
今回の前編では、マッチングについてお話しします。

6年生のマッチングも終わり、いよいよ5年生はマッチング対策に動き出すことになります。
とはいっても、コロナ禍で見学が制限されている地域も多いため、本格的に動き出すのはまだ早い、と考えている人も多いと思いますが。

そして、ポリクリが再開している大学も多くなってきました。
いままでコロナの影響で休校になっていたために、その分長期休みを削って実習を行う大学もあると聞いています。
そこで、ポリクリが始まったばかりの4-5年生に向けて、こういう試みはどうですか?という提案をしたいと思います。

前半:マッチングについて

まず、大学病院研修(自大学・他大学)と、市中病院研修について、「一般的に言われている」それぞれのメリットを確認しましょう。

大学病院
・アカデミックである(論文を出したり学会発表ができる)
・同期の人数が多い
・教育的である
・他科に相談がしやすい(自大学であれば)
・貴重な症例が多い
・採用試験はあっても対策は不要なことが多い
・カンファレンスが多い
・夜間休日でも検査ができる。検査項目も多い。
・最新の検査/治療を見ることができる。

市中病院
・給料が高い
・手技をする機会が多い
・救急当直/救急外来当番を多く経験できる
・福利厚生がしっかりしていることが多い
・採用試験がある所では勉強をしてきた人も多い
・カンファレンスが少ない
・雑用が少ない傾向にある

というものです。
市中病院のメリットは大学病院のデメリットであり、大学病院のメリットは市中病院のデメリットにもなっています。
(例:市中病院は給料が高い⇄大学病院は給料が安い)

しかしながら、
大規模な市中病院(いわゆるブランド病院群)では、採用されるかどうかという問題こそありますが、
・そこそこよい給与
・学会発表のチャンス
・症例が多く、貴重な症例も多い
→救急当直の回数や手技のチャンスも多い
・専門家も多く、教育的な施設も多い
→最新の治療や治験を行っている施設もある
・内科/外科であれば後期研修で残ることもできる
という、大学病院と市中病院のいいとこどりができます。

では大学病院で研修する意味がないかというと、そういうわけでもないです。
自分が考える利点としては、

・自由な時間が多い
雑用こそあれど、受け持ち患者が少ないことが多く、当直も少ない施設が多いので、自由に使える時間が多い。医学の勉強も、それ以外の勉強も行えます。

・ローテーションの融通が効く
大学病院では、医者の人数が多く、研修医がいなくても業務が滞りなく進むことが多いです。
一方で、市中病院では、「病棟維持のために常に誰かが外科や循環器内科を回っていないといけない/回りたくなくても回らないといけない」という事態がしばしばあります。
殆どの大学病院では、2年目の選択期間をすべて自分の志望している科にすることができるため、有利です。

・マイナー科への入局が圧倒的に有利
都市部では、マイナー科の医師が過剰となっており、毎年後期研修を行える人数に制限があります。
科によっては、都内で研修できる人数は40人を切っていて、採用試験は激戦となっています。
内科でも、採用枠が限られており、後期研修の採用試験で不合格となる人が少なからずいます。
ここで考えてみてほしいのですが、みなさんが採用をする人だったら、すでに10か月程度一緒に働いてきた即戦力の研修医と、よその病院から1、2日見学に来ただけ、しかもその科は1-2か月程度しか研修できていない研修医では、どちらを採りたいと思いますか。
都市部で一部の内科やマイナー科を考えている場合には、大学病院で研修を行うことが非常に重要になります。

・海外留学に強い
海外での臨床を行いたいとUSMLEの勉強をされている方たちはご存知かと思いますが、海外での研修や留学では、「コネ」が非常に重要になります。
大学病院では、提携している海外の施設に毎年留学生を送っていますし、教授や准教授から推薦書を書いてくれるような力のあるスタッフを紹介してもらえるチャンスもあります。
ある程度勉強が進んでいて、海外で臨床をしたいと考えている人には、大学病院での研修はおすすめできます。
勉強をする時間も多いですし。

以上のようなものがあります。

4年生でCBTが終わってから、5年生が終わるまでの間にに、自分が将来どういうことをやりたいかを漠然とでいいので考えてみることをお勧めします。

進みたいマイナー科がすでに決まっている場合や、美容に進みたい場合、医学以外のことをやりたい場合、海外に行きたい場合など、すでに将来のビジョンがある場合では、大学病院での研修はよいものになると思います。
マッチング対策は不要なことが多いですし、残った学生生活を趣味や部活、バイトなどに励むのもいいでしょう。

逆に、現在やりたいことが明確ではない場合や、将来内科医・外科医・産婦人科医などになりたい場合、いろいろな手技にTRYしたり、即戦力で働きたい場合、将来は都市部での生活を望まない場合、お金が欲しい場合などではまずは市中病院で研修をするといいと思います。

ちなみに、将来何科になろうか、とか、どういう働きかたをしたいかということを考えるのにはポリクリや病院見学が非常に有効です。
そちらは次回の後編で詳しくお話しします。

続いて、受験病院の選び方ですが、
市中病院を考える場合は、まずは見学生の多そうな有名病院からいくつか調べてみるのがよいと思います。
人気病院には、給料や待遇、教育など、人気になるなりの理由が隠れていることが多いですし、見学生が多いために職員や研修医が学生の扱いに慣れているので、練習にはもってこいです。
見学者が多いため、口コミも数多く集まっています。
上述のように、有名病院では、大学病院と市中病院のいいとこどりになっている施設も多いです。
穴場となるような給料が高いハイポ病院や、定員割れをするような野戦ハイパー病院もありますが、いきなりそういう施設を見に行くよりかは、まずは一般的な施設をいくつかみた上で訪れて比較をし、メリット/デメリットを考えるのがいいと思います。

ここで、見学に行った際に「先生はほかにどういう病院を受けましたか?おすすめの病院はありますか?」という質問をすることで、その施設と併願ができて、特性が近い病院についての情報を集めることができます。
ネットには載っていないような、
掘り出しものの良待遇病院の情報が見つかることもありますから、おすすめです。

見学やネットでの口コミで行きたい病院の候補がいくつか決まったら、試験の内容や採用基準をみて、今後の方針を決めましょう。何を重視して採用しているかは、ネット上に転がっていることもあれば、見学先で聞けることもあります。
筆記重視の病院であれば、いつぐらいから対策をすれば間に合うのか、どういう勉強をどのくらいすればいいのかを見積もります。見学に行って過去問を入手し、対策方法を聞きましょう。
面接重視の病院であれば、急にイメージを変えることや業績を打ち立てることは難しいので、必要がありそうなら事前に準備をしておくといいでしょう。どういった人物が好まれるのかは、見学に行った際に研修医をみて考察します。
見学回数重視であれば、何度も何度も行くしかないため、早めに動き出して周りと差をつけましょう。
コネが必要な病院では、これはもうなんとかしてコネを作るか、諦めるかしかないです。私の友人は、病院の中の自大学出身の人を探して、そこから採用に関わる先生を紹介してもらっていました。

マッチングでは、たくさん受けるデメリットは対策が大変、履歴書を作ったり見学に行くのが大変というものしかありません。
多く出したもん勝ちの、学生有利のルールとなっています。
知人には、有名病院に12個出願して、第5志望で出した超人気病院に合格したという猛者もいます。
周りよりも早く動きはじめることにはメリットしかありません。
あとで間に合わず後悔するくらいなら、ちょっとやりすぎなくらいがよいと思いませんか。

少し長くなってしまったので要点をまとめると、

大学病院と市中病院のメリット・デメリットを理解しよう:大学病院研修は悪いところだけではない
初期研修病院を考える際は、後期研修やその先のイメージをしてみよう
まずは有名な病院をいくつか見学して、見学に慣れよう
見学では、研修医の雰囲気と、試験の対策方法、併願病院の確認をしよう
マッチング先の候補が浮かんだら、対策を練って周りよりも早く動き出そう

ということです。

ここまでお読みいただきありがとうございます。
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