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#294 最終処分場

 和室の押入れの奥に、袋に入れて長い間しまってあった、来客用の座布団を処分したいと妻が言った。ほとんど使うことがなく、押し入れの中の広いスペースに、何枚もの夏用・冬用のかなり分厚い座布団がおかれていた。

 今では、机や椅子・ソファー・ベットで日常生活をおくっている。畳に座布団を敷いて正座することもほとんどない。

 最近は5年ほど前、孫の宮参りの時に我が家でささやかな宴をしたときに使ったのが最後だった。

 この座布団は、40年ほど前に、結婚式の嫁入り道具として、妻が持ってきたものだ。当時の私の村では、親戚や近所の人に嫁入り道具を披露する習慣があった。
 「お父さんとお母さんに、家具や布団も座布団も買ってもらったわ。無理して高いものを買ってくれたからな~。使わへんけど、捨てられへんかったんや。」と妻が言った。

 私と妻は、軽トラに座布団や粗大ごみをのせて最終処分場に行った。妻は、知り合いにもらってもらおうか・買取店に持って行こうかなどずいぶん考えたあげく最終処分場に決めた。帰り道の妻は、さっぱりとした表情だった。

 「まだ処分するものたくさんあるわ。若い時の洋服も処分するわ。着物も仕立て直して子供にやるわ。」と妻が言った。

 #QOLあげてみた


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