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#323 赤福

 夕方になって俳句の会に行った妻が帰ってきた。妻は、伊勢神宮周辺での俳句を作る吟行(ぎんこう)の会に参加した。夕食後、私たちはお茶を飲みながら、伊勢の名物の粒あんたっぷりの赤福を食べていた。

 妻が今日の俳句の会に参加された、93歳になられた女性の話をした。朝、集合の時、彼女が「今日で私は最後になります。俳句は好きやから、まだ続けたいんやで。けど足(膝)が痛いので、みんなみたいに歩けへんねん。いつも皆さんが私に気を使ってくれていることはありがたいと思っていたんやけど、これ以上みんなに迷惑かけると思ったら心苦しい気持ちもあってな・・・。」といった。

 「今日もつえをついてゆっくり歩いて、俳句を作っていたわ。神社の入り口で『石段上れへんのでここで待ってるわ。』と言ってた時もあるわ。無理して続けていてくれたんや。」と妻が言った。

 彼女は終わりになって、「皆さん長い間ありがとうございます。」といってバス停に歩いていった。

 私が「足が痛いので吟行に行けへんの残念やろな~。」と言った。
 
 妻は、「そう思うわ。まだしっかりした人やから。けど、これ以上俳句の会に参加できへんと思ったので、自分からみんなに別れのあいさつに来たんやで。自分で最後の別れを言って、自分にけじめつけたんやわ。帰り際もしっかりしていたように見えたわ。ほっとした顔をしてるように思えたわ。」と妻が言った。

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