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「インフィニティ・ダーク」のカルテ(クソカード医学会用資料37)

まえがき

 以前予告していた通り、今回はデュアルモンスターの治療です。
 「インフィニティ・ダーク」は第5期のパック『GLADIATOR'S ASSAULT』で登場、つまり剣闘獣やあのカオス・ネオスの同期です。
 デュアルはその前パック「TACTICAL EVOLUTION」で登場し、ユニオンモンスターから約5年ぶりに追加された新モンスター群で、当時からめちゃくちゃ使いづらいと話題となった難病指定カード群になります。
 とはいえ、「ギガプラント」や「E・HERO アナザー・ネオス」を主軸としたデッキが一時的に環境に顔を出したり、炎属性戦士族とシナジーを引っ提げた新規カードが登場したりと、地味に侮れない勢力でもあります。

 そんなデュアルモンスターの中でも一際輝いていない1体が「インフィニティ・ダーク」。イラストはダークヒーローっぽくてカッコよく、名前も中二心をくすぐりますが、果たしてその効果は……?

デュアルモンスターについて

 さて、まずはデュアルモンスターについて詳しく語っておかなくてはならないでしょう。
 デュアルモンスターは、
・フィールド・墓地では通常モンスター扱い
・フィールドでもう1度召喚できる。その後効果モンスター扱いとなり、効果が使用可能になる
 という特徴があります。
 これはこう言い換えてもいいです。
召喚権を2回使わないと効果が使えないモンスター群
 これが如何に絶望的な特徴であるか、懸命なデュエリスト諸兄には説明するまでもないでしょう。
 当然、上級・最上級モンスターにはリリースが必要ですし、そもそも悠長に次の自分ターンまで待ってモンスターを再度召喚など、現代ではもちろん、当時でも現実的ではありませんでした。

 「じゃあ召喚権を使わず特殊召喚してから再度召喚すればいいのでは?」
 という疑問にはある程度は「そうですね」といえますが、結論から言うと「ノーですね」と答えるしかありません。
 なぜなら、特殊召喚でいくらデュアルモンスターを並べたところで"召喚権は1つ"だからです。
 1体で場を制圧できるような効果のデュアルモンスターはさすがにおらず、むしろ他のモンスターと組み合わせて初めて最高のアドを叩き出せるタイプが多いです。
 なので、召喚権を増やさないことにはデュアルモンスターデッキはまともに機能しないのです。

 さて、ここまではデュアルモンスターの悪い点。ここからは評価できるポイントを。
 まず、その発動できるようになるまでがめちゃくちゃ遠いデュアルモンスターの各自効果は優秀なものが多く、割りと破格な性能のものもいます。
 特に同名ターン1とコストのない蘇生・展開、除去は多いです。

 次に、サポートが豊富な点です。
 再度召喚するまでは通常モンスターなので、通常モンスターサポートを当然使えますし、除去・アドバンス召喚補助・召喚権追加ができる「化合電解」、再度召喚状態でどんなデュアルでもリクルートできる「デュアル・アブレーション」、除去とドローを併せ持つ「デュアル・スパーク」などは優秀です。

 これらを統合して考えると、デュアルモンスターは『召喚権の問題から他のデッキに混ぜて使うには使いづらすぎる一方、デュアルとそのサポート主体で固めてしまえば割りと強い』という形になります。
 相手の妨害は手薄いので、相手ターンに動ける出張セットを足すといい塩梅でしょうか。

インフィニティ・ダークについて

 ……というデュアルモンスターの特徴を踏まえた上で、今回の患者の性能は以下の通り。(出典:遊戯王デュエルモンスターズデータベース)

 出た! 表示形式変更効果!
 最初期の遊戯王にはとりあえず取ってつけたような「表示形式を変更できます(キリッ」効果のモンスターが多く、このカードもその1体です。
 デュエルがロースピードだった時代ならまだ多少の妨害になりましたが、高速化し1ターンで勝負が決まることも珍しくない現代遊戯王で、しかも表示形式の変更できないリンクモンスターまでいる中でこの効果はかなり重篤な類と言わざるを得ず、多くの患者が診療所に駆け込んでいると聞きます。

 しかもこの「インフィニティ・ダーク」はただでさえデュアルモンスターで効果発動がし辛いうえに、攻撃宣言時に表示形式を変更するという界隈屈指の遅さを持ちます。
 守備の低い「デーモンの召喚」などを守備表示にして戦闘破壊したり、「マシュマロン」などの壁モンスターを攻撃表示にして殴るというデザインなのでしょうが……現代でそういう場面に遭遇できるのか……?
 ついでに攻撃力も1500。「クリッター」や「キラー・トマト」対応で、守備表示の「デーモンの召喚」を戦闘破壊できるラインという当時ならではの配慮も、現代では虚しさを感じます。

 問題点をまとめると、
①デュアルモンスター
②遅い上に使いどころの少ない表示形式変更効果
③打点不足
 となります。

 まず方向性を定めるために問題点②を解決したいところ。
 使い所の少ない表示形式効果、それも自分ターンの攻撃宣言時にしか使えないとなると用途は限られます。
 先述の通り、「マシュマロン」のような戦闘破壊できないモンスターをサンドバッグにするのがやはり現実的でしょうか。
 相手がそういったカードを使うとは限らないので、「ギブ&テイク」を用います。自分の墓地のモンスターを守備表示で相手の場に特殊召喚できるため、「インフィニティ・ダーク」との相性は抜群です。

医学会推奨治療薬

 ただ送りつけたモンスターを「インフィニティ・ダーク」で殴るだけでは1000少々のダメージにしかならないので、ゲームエンドを決められる展開と打点強化も必要です。
 問題点①のデュアルモンスターであるという点の解決と合わせて、上で紹介したデュアルモンスターサポートで展開力を底上げします。
 「化合電界」「デュアル・アブレーション」とそれらをサーチする「重起士道ーゴルドナイト」「二量合成」はまず欲しいところです。

再度召喚するたびにサーチができるので
「化合電界」で除外⇒次のターン再召喚でハンドアドを稼げる
打点強化の効果もあるので好相性。

 ただし、やはりこれだけではゲームエンドはやや遠い……。
 さらなるサポートは必要でしょう。

炭酸化合ダーク

 【化合獣】は全体でデュアルをサポート可能なテーマなのでぜひ加えたいテーマです。

デュアル限定なものの、万能サーチ&墓地落とし
2枚分デッキ圧縮可能という見方もできる
レベル2デュアルでは最高打点
特殊召喚効果は使いづらい

 中でも「化合獣オキシン・オックス」は打点不足解消を大きくサポートできるコンボが使用可能です。

 このカードは手札からデュアルモンスターを特殊召喚し、自分フィールドのモンスターすべてのレベルを特殊召喚したモンスターと同じにします。
 一見打点向上には関係のない、エクシーズ召喚向けの効果ですが、ある連中と組み合わせることで打点問題を解決して余りある治療が可能となります。

 下級化合獣は全員レベル2モンスター……そう【スプライト】です。
 「化合獣オキシン・オックス」で化合獣を特殊召喚し、「インフィニティ・ダーク」含む自分のフィールドのモンスターをすべてレベル2にし、「スプライト・ガンマ・バースト」で打点をかち上げてサンドバッグを殴り潰す。
 これが「インフィニティ・ダーク」を活かすための最後のピースになります。

サーチしやすいのも魅力

 となると、サンドバッグにするモンスターも「ギガンティック・スプライト」でリクルート⇒リンク素材にして墓地送りできると無駄がないですね。
 戦闘破壊耐性持ちのレベル2モンスターは該当1件。「Xーセイバー パシウル」です。

「スプライト・ガンマ・バースト」で強化されてしまうので、
「ギブ&テイク」はバースト後に発動

 パシウルはゴルドナイト同様に「増援」対応なので、サーチして「デュアル・アブレーション」等のコストにして墓地に送ることもできます。

 流れをおさらいしましょう。
 まずは「デュアル・アブレーション」を構えるのが最優先。素引きが好ましいですが、「化合電界」からのゴルドナイトでサーチしてもいいです。
 同時並行でスプライト展開でのサーチ・リクルートとその過程での「Xーセイバー パシウル」の墓地送りを行います。
 相手ターンと次の自分ターンにアブレーションを発動できれば場に「化合獣オキシン・オックス」「インフィニティ・ダーク」は並びますし、手札に化合獣モンスターと「スプライト・ガンマ・バースト」を引き込むのも難しくはないため、あとは「ギブ&テイク」または「トラップトリック」があれば理想形でコンボが決まります。

 一見、必要なカードが多すぎるコンボに見えますが、合計打点が足りるようなら必ずしもガンマ・バーストが必要ではないですし、相手の場にモンスターが並んでいるようなら無理にサンドバッグにこだわらずにそのモンスターを攻撃表示にして殴ってもよいので、意外と融通は効きます。(肝心の「インフィニティ・ダーク」の活躍が地味になりますが……)

 一見関係のない【デュアル】と【スプライト】を、【化合獣】が名前の通りつなぎ合わせる働きをしてくれる最新の化学医療デッキ。
 これぞ【炭酸化合ダーク】です。

相性のいいカード

 「ギブ&テイク」サーチと墓地送りが課題。

・「絶対王 バック・ジャック」
 「トラップトリック」「ギブ&テイク」確保はもちろん、デッキトップ操作でパシウルなどが居たら即墓地送りを狙えるため好相性。「デュアル・アブレーション」などのコストで墓地に送ってもいいし、リンク素材にしてもいい。

・「八汰烏の骸」
 バック・ジャックで引ければ万能ドローに。「ギブ&テイク」確保後にトラトリが腐らない利点も。

・「ギガプラント」
・「永遠の淑女 ベアトリーチェ」
 レベル6で並べやすい「ギガプラント」からのベアトリーチェで、パシウルやバック・ジャックなど好きに墓地送り可能。

・「炎妖蝶ウィルプス」
 カーボン・クラブやベアトリーチェの効果で墓地に送った好きなデュアルを再度召喚状態で蘇生できる。昆虫族なので「ギガプラント」に対応している他、そのギガプラが手札にあるならアブレーションのコストで墓地に送りウィルプスをリクルート⇒ウィルプスで即ギガプラ蘇生⇒ギガプラの効果でウィルプス蘇生し再度召喚⇒さらに墓地のデュアルを蘇生……と展開の幅がかなり広がる。

・「ペンテスタッグ」
 リンク2で素材縛りがゆるく、貫通効果を付与できる。パシウルは送りつけられたけど肝心の「インフィニティ・ダーク」が用意できなかった場合などに。デッキコンセプト崩壊してるじゃねえか!

デッキ構築

 運用方法は上でまとめた通り。
 デッキが食われかねないのでスプライトの投入を最低限にしていますが、ランクマでやるならもっと寄せたほうが良さそうです。

 使用感は、さすがにちょっと準備が遅くコンボ成立までに終わるか、または逆にスプライト出すとサレンダーされるのでいまいち決まらないですね……。実績も撮れない……。
 コンボ成立まで「インフィニティ・ダーク」の使い道がないのも問題点。
 デッキの重症度は2~3ですね。ほぼスプライトのおかげでコンボ度外視ならソロはなんとかなります。

その他構築研究報告

 「インフィニティ・ダーク」以外にも、攻撃や戦闘ダメージに関する効果を有するデュアルモンスター全般が『化合バーストコンボ』の恩恵に預かれます。(そんな重症でもない効果のモンスターもいますが)
 今回は中でも一番重症そうな「インフィニティ・ダーク」を使った形ですが、それぞれ属性や種族、持っている強みが違うので、【炭酸化合】ベースで色々な組み合わせでデュアル治療デッキを作成可能です。逆に戦闘関係ない効果のデュアルモンスターはこの治療法は使えないということでもある……。

 また、この【デュアル】⇒【化合獣】⇒【スプライト】のシナジーは『化合バーストコンボ』以外でも優秀で、除去は得意な反面で相手ターンの妨害が苦手な【デュアル】の欠点を【スプライト】が補える点も強いです。
 興味あれば是非試してみてください。

相性のいいデュアルモンスターの例

・「ヘルカイザー・ドラゴン
 2回攻撃効果を持つ。なんなら【炭酸化合】で一番強いかも。
・「ヴァリュアブル・アーマー
 全体攻撃可能。昆虫族軸になるので「ギガプラント」「炎妖蝶ウィルプス」が活きる。「ペンテスタッグ」や「おジャマトリオ」とも好相性。
・「シャドウ・ダイバー
 レベル4以下の闇属性モンスターを直接攻撃可能にする。「化合獣オキシン・オックス」でレベルを操作すれば、闇属性なら誰でも直接攻撃可能にできるという『化合バーストコンボ』とのさらなる噛み合いが光る。「二量合成」などと組み合わせてワンキル系デッキが組めるかも。
・「デュアル・ランサー
 貫通効果持ち。「ペンテスタッグ」がいるのでそれ自体は地味だが、【スプライト】とも相性のいいレベル2汎用海竜族の「深海のディーヴァ」がいるので海竜族軸やシンクロ軸でなんと組めてしまう。
・「水面のアレサ」「幸運の笛吹き」「ナチュラル・ボーン・サウルス
 戦闘破壊を条件にする面々。それ自体で勝敗を左右する効果ではないので、【スプライト】の妨害能力とそれぞれ種族を活かしたコントロール軸デッキにする形か。
・「真紅眼の黒炎竜」「灼熱王パイロン
 普通に使い道ある黒炎竜はまあともかく、戦闘と関係ないパイロンもその物足りないバーンが戦闘後のトドメとなり得る。炎属性のスプライトや「炎妖蝶ウィルプス」と合わせて、火霊術などを共有する形のデッキになるだろうか。

あとがき

 デュアル治療デッキ。(すでに発見してる人も要たのかもですが)上記のコンボを考えついたときは嬉しかったです。
 デュアルは効果自体は強いものも多いので、今後さらなるサポートが登場すれば輝くカードも増えるかもしれませんね。

 同様に構築を進めていた「トゥーン・ドラゴン・エッガー」「トゥーン・デーモン」ですが、出来上がったデッキが案外強く、思ったより重症じゃないのかなと公開を迷ってます。軽症患者としての紹介になるかも。
 なので次回は未定です。

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