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「邪神イレイザー」のカルテ (クソカード医学会用資料15)

まえがき

 「邪神イレイザー」は漫画・遊戯王Rでのキーカードである「三邪神」のうちの一体で、バンデット・キースや同作のラスボス・天馬夜行に使用されたモンスターです。この「三邪神」は「三幻神」に対する抑止力として生み出された設定なのですが、「三幻神」「三幻魔」と異なりやや影が薄く、サポートカードも「神の進化」くらいの不遇な扱いです。
 そんな「三邪神」の中でもさらに影が薄いという生粋の影キャ神がこの「邪神イレイザー」。圧倒的戦闘性能と初見じゃ誰もわからない特殊裁定を誇る他の邪神「邪神アバター」「邪神ドレッド・ルート」と異なり、扱いづらさもトップクラスのこのカードを、どうにか肩書き通り神の抑止力として活かしてあげたいです。

邪神イレイザーについて

  患者の性能は以下の通り。(出典:遊戯王デュエルモンスターズデータベース)

 割りと原作通りにデザインされており、神の耐性を持たない以外は結構再現度は高いです。ただし、その原作でもキースや海馬に酷評されてたところがあるので、それがいいか悪いかは別の話。
 効果を見ていくとまずは難しい召喚制限が嫌でも目に付きます。ただ、これは三邪神や三幻神にある程度共通しているのでまあ目をつむりましょう。三幻神と違い悪魔族なので「ダブルコストン」などが使えますし。まあ出しづらいのは変わらないんですが……。
 1の効果は攻撃力守備力の決定効果。相手フィールドのカード1枚につき1000は上昇幅こそ大きいものの、相手依存な上に、相手の場にカードが多いということはこちらは劣勢という意味でもあります。高打点を得る前に制圧される、リリースが確保できずそもそもこいつを召喚できない、妨害でまともに機能しない……などなどの状況に陥るのは明白です。
 2の効果はセルフ自壊効果。そのまま3の効果を発動できます。
 この3の効果が目玉とも言える全体除去。お互いのフィールドすべてを更地に変えるモンスター版「最終戦争」、もしくは劣化アーゼウスのような効果です。2の効果だけでなく単純に破壊で除去されても、戦闘破壊でも発動します。一度場に出してしまえば相手はおいそれと手が出せなくなるものの、破壊耐性持ちや破壊以外の除去には弱いので安心はできません。

 ここまで見てくれば皆さんもうおわかりでしょう。
 この「邪神イレイザー」、1と3の効果がいまいち噛み合っていないのです。
 トークンでのリリース確保と相手のフィールドを埋める「ブラック・ガーデン」や、相手の魔法罠を発動しづらくする「魔封じの芳香」「心鎮壺」などで相手の盤面を埋め、イレイザーの打点を上げる戦法を取ったとしましょう。当然コントロール系の構築になると思います。
 その戦法自体は悪くないのですが、もしそのイレイザーが破壊されれば、フィールドを一掃します。自分のカードを道連れに
 せっかく築いた盤面が一瞬で水の泡。ヴェーラーや泡影で攻撃力0にされたり「オネスト」などで戦闘破壊されても、「激流葬」やミラフォでふっとばされても、とにかくイレイザーが破壊されれば全体除去は発動し自分のカードもろとも道連れにします。強制効果ゆえに。
 「神縛りの塚」や「ハードアームドラゴン」で破壊耐性をつければ多少はマシになるものの、戦闘破壊のネックは大きいです。そもそもそれだけのリスクがありながらただの高打点モンスターにしかならないし……。

 じゃあむしろ2の効果から3を使う全体除去メインで使おうか……となると、それはそれで3体リリースして召喚する割に合いません。アーゼウスとかでいいんです。
 最上級モンスターゆえの手札事故率や3体のリリース確保を加味すると、その枠にライストや「サンダーボルト」を多めに積んだほうが除去として優秀です。

 まとめると、
①ステータス上昇を狙ってコントロール系のデッキにすると自身の全体除去効果が足を引っ張る
②全体除去だけ使おうとすると3体リリース&召喚権の割に合わない
③最上級モンスターゆえの手札事故率
 これで神の抑止力が務まるのだろうか……。

 さて、じゃあどうするかというと選択肢は一つ。
 かつてクソカード医学会にて賛否両論の大議論と革命をもたらした画期的治療法…………そう、リバースブレイク療法です。
 これは自分で患者を破壊しまくるというかなり荒っぽい治療法ですが、それでしか救えない患者がいるのも確か。破壊されると全体除去が強制発動するイレイザーを、この治療法でどうにか輝かせて見せましょう。

 「邪神イレイザー」の3の効果の発動条件は「このカードが破壊され墓地に送られた場合」。つまり、手札からだろうがデッキからだろうが破壊され墓地に行けば全体除去は発動するわけです。
 デッキからの破壊は手段が限られますが、手札からなら比較的簡単に破壊可能です。そう、【炎王】ならね。

 「炎王の孤島」は自分の手札・フィールドのモンスターを破壊して炎王モンスターをサーチするカード。これで手札のイレイザーを破壊し、「炎王獣ヤクシャ」をサーチしつつ全体除去につなげます。
 「炎王獣ヤクシャ」も破壊されると自分の手札・フィールドのカードを破壊できるので、こちらでも手札のイレイザーを破壊し戦闘破壊や除去からの巻き返しに使えます。
 問題点①②③をまるごと解決する方法、それは手札から除去札として使うです。

破械邪神イレイザー

 しかし、いくら全体除去を使おうが自分の盤面を築けなければ勝利はできません。なんでもかんでも吹き飛ばしてしまうイレイザーに加え、「炎王の孤島」も破壊されると自分モンスターをすべて破壊してしまいます。
 こんな地雷原のような自分フィールドでまともな盤面を築くとなると、破壊を逆利用できるカテゴリでなければ難しいでしょう。炎王、ネフティス、ユベル、スクラップなど多々ありますが…………一番イレイザーと相性がいいのは【破械】で間違いないはず。

 【破械】はその名の通り破壊を展開の起点とするリンクテーマで、モンスターも魔法も罠も破壊されると破械モンスターをリクルートできます。
 破械魔法・罠を伏せつつ「炎王の孤島」で「邪神イレイザー」を破壊した場合、

「邪神イレイザー」で全てのフィールドのカードを破壊
⇒破械魔法・罠が破壊され破械モンスターをリクルート
⇒イレイザーで破壊された「炎王の孤島」の効果で自分モンスター破壊
⇒破壊されたモンスターの効果でデッキからさらに別の破械モンスターをリクルート

 という動きになります。モンスターが途切れることなく現れ、リソースに一気に差がつき、そのまま押し切れることも珍しくありません。
 加えて、破械モンスターは全てイレイザーと同じ悪魔族。「魔界発現世行きデスガイド」や「魔サイの戦士」を利用できる上、リンクモンスターである「破壊神ラギア」「破壊神アルバ」は破壊されると墓地の悪魔族モンスターをサルベージも可能です。

 イレイザーでフィールドを一掃し、破械モンスターを展開。その後リンクにつなげてイレイザーを回収。さらなる除去を構えつつリンクモンスターで押し切る……これが【破械邪神イレイザー】です。

相性のいいカード

 破械デッキを軸に、イレイザーと炎王を足せば完成。

・魔界発現世行きデスガイド
・魔サイの戦士
 ブレソやトロイメアにつなげつつ墓地にイレイザーを送る。その後破械リンクモンスターで回収。

・破械童子ラキア
・破械童子アルハ
・破械童子サラマ
 破械下級モンスター。全てレベル3なのでデスガイドでもリクルート可能。ガンガンデッキから出して破壊していく。

・貪欲な壺
 デッキからの特殊召喚を多用する上に墓地が肥えやすいので。破械モンスターをデッキに補充する他にも孤島のサーチ先のヤクシャや、イレイザーの回収のために破壊したラギアやアルバを戻すのにも。

・呪われた棺
 無理に入れる必要はないものの、相性がいい。イレイザーの全体破壊に巻き込んだ場合、相手のフィールドにモンスターは残らないので、強制的にハンデスさせられる。

・I:Pマスカレーナ
 自分の破壊からは守れないものの、アルバやラギアと同じく相手ターンにリンク召喚可能。破壊神が居ない場合はこちらをつかう。

・トロイメアリンクモンスター
・閉ザサレシ世界ノ冥神
 破械童子の効果で特殊召喚に悪魔族縛りがつくため、相性がいい。相手ターンに特殊召喚して妨害も行える。

・幻影騎士団ブレイクソード
 お互いのカードを破壊できるため好相性。"対象に取られず破壊されない"効果に弱いデッキなので、緊急手段として「ダウナード・マジシャン」から「天霆號アーゼウス」につなげることも可能。

デッキ構築

 自分のカードを破壊してアドにする。破壊できない相手はリンク素材にしたりユニコーンでデッキバウンス。アーゼウスとサロスは奥の手なのでなるべく温存したい。
 天敵はやはり除外。

メインデッキ(40枚)
・魔界発現世行きデスガイド×3
・魔サイの戦士×1
・破械童子アルハ×3
・破械童子ラキア×3
・破械童子サラマ×3
・炎王獣ヤクシャ×3
・破壊神の禍霊×2
・雙極の破壊神×1
邪神イレイザー×3
・テラ・フォーミング×1
・貪欲な壺×3
・雙王の械×3
・炎王の孤島×3
・呪われた棺×2
・破械唱導×2
・破械雙極×3
・メタ・バース×1

EXデッキ(15枚)
・幻影騎士団ブレイクソード×1
・ダウナード・マジシャン×1
・天霆號アーゼウス×1
・トロイメア・ケルベロス×1
・トロイメア・フェニックス×1
・破壊神ラギア×3
・I:Pマスカレーナ×1
・トロイメア・ユニコーン×1
・破壊神アルバ×2
・破壊雙王神ライゴウ×1
・アクセスコード・トーカー×1
・閉ザサレシ世界ノ冥神×1

 フリーや、多少誘発を積むなど調整してリンクRegで使用しましたが、なかなかいい戦績です。医学会式重症度で言えば3.5くらいでしょうか。
 除去を破壊や戦闘に頼っている【閃刀姫】などのデッキや、盤面外からの除去に弱いロック・メタビ系のデッキにはそれなりに有利。
 一方で除外や墓守は無理。また汎用では「墓穴の指名者」にはかなり弱いので、その辺のケア手段が課題ですね。

実績。

あとがき

 第6回クソカード医学会ではまたミラールームでの対戦になりました。デッキ自体はちゃんと回るんですが、フィールド全ぶっぱという性質上、相手の治療をがっつり妨害してしまう形になり、さすがに居た堪れなかったですね。デッキのチョイスが難しい。
 今回は除去札として使いましたが、ちゃんとしたアタッカー運用も考えて入るので、いずれ別の形の邪神イレイザーデッキも披露したいですね。

 次は最もあの世に近いクソカードの1つ、「悪魔の知恵」の治療を試みています。理論は組み上がったのでどうデッキに落とし込むか……。

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