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AI慣れによる精神的なリスク/全能感の復活と反抗期

この2,3か月はテクノロジー系、ビジネス系、クリエイティブ系の話題の中心はAIで、TWITTERでもAIに触れた人達の反応を様々な形で多く見ました。その中で感じた事を所感的に書いていきます。

■全能感と反抗期

全般的に感じるのは僕自身も使用してみて、AIによって出来る事の拡張性はとてつもなく広く深くなったと感じます。先月のマイクロソフトのビルゲイツのAIに関するブログでも全体感として下記の様な所感を発表しています。

こちらがブログの本文になります。

ChatGPTで要約した内容が下記になります。

・ビル・ゲイツ氏は、AI技術が今後の社会のあらゆる分野で重要な役割を果たすと考えています。
・AIは医療分野で、がんの早期発見や精密医療に貢献することができます。
・農業分野でもAIが貢献でき、土壌分析や天候予測、農作物の収穫量予測などが挙げられます。
・教育分野でもAIが活用されることで、より効果的な教育が提供される可能性があります。
・AIの進化によって、社会的な課題が生じる可能性があるため、適切なルールや規制が必要です。
・AI技術は人類の生活をより良くする可能性がありますが、そのためには私たち自身が適切に活用し、管理することが重要です。
・AIはデータに基づいて予測を行うことができるため、ビジネスの分析にも役立ちます。
・AIによって、音声認識や自然言語処理の技術が進化しています。
・AIは、将来的にはロボットや自動運転車などの分野でも重要な役割を果たすことが予想されます。
・AI技術は、特に途上国において医療や教育の改善などに役立つ可能性があると考えられています。

翻訳で確認しましたが内容に相違はありません。
重要そうな点で抜けているなと感じたのは教育に関連する部分で、貧困層の人達にとって教育の問題を解決できる可能性を持っているという点です。こちらは別途後述しようと思います。

こういった要約というのはAI利用に関するほんの序の口という感じで、ウェブ上を見ていると「こんな事までしている人がいるのか」という発見が至る所に散見されます。

例えば僕自身も仕事で使えそうだなと思ったものですと下記などがありました。

テスト的に日本のゲーム史についてChatGPTで纏めて貰ったものをPlutinumで出力したのが下図です。


日本のゲーム史についての出力

もちろんChatGPTが対応してない年代や未学習の事項などはできませんし、前提条件として正誤が判断できる分野である等はありますが、通常上図を作成するとなると手動では数時間はかかってしまうボリュームが5分程で用意できます。

Midjourneyなどの画像生成などでは数週間かけて完成させる様なイメージがこれも数分程度で用意できます。


・全能感
特にTwitter上ですが、現状のChatGPTやMidjourneyなどのAIを使いこなしている人達の中に「あれっ、ちょっと言動の雰囲気変わったかな」と感じる人を見かける様になりました。

また、Twitterの仕様上いいねを押したりした履歴によっておすすめ表示が変わるのでAI関連の人がフォローしていなくてもここ1,2か月は非常に多く表示されます。

先日発表されたTwitterのアルゴリズムですね。

少し具体的に書くと攻撃的な言葉を含む投稿やAIへの知見が薄い人を見下す様な投稿、自身を礼賛する投稿などですね。

子供っぽくなった様な印象もあります。

上手く表現はできないのですが、様々な記事やメディアでも書かれている様にAIは人の能力を拡張する要素があり、そのAIによって拡張される事で得られた結果を自身に投影するというのが人によっては起こり得るのかなという感じです。

例えば画像生成AIはこれまでの様々な画家やアーティストやイラストレーターやクリエイターの遺してきた結果(財産)をベースにしていますが、プロンプトを入力して出力した画像はそういった背景を特に語る事はなく”貴方のプロンプトの出力結果”として生成物を与えてくれます。

シンプルに言うと、努力や修練をスルーして最高の結果を生み出せます。

確かにこの構造は「神様の能力」に近いものの様に思えます。
例えば神話や漫画などに出てくる様に、手をかざして一言念じたら一つの街を作り上げた、みたいなものです。
プロンプトによって命じる事で、素晴らしいアート作品を一瞬で生み出す、これは神様の所業です。
であればその結果を見る事で全能感を感じるというのは自然な流れなのかもしれません。

この全能感というものですが、実は誰もが子供の頃には持っていた感覚です。

つまり子供の頃は何も出来ない=何でもして貰える、という事から「自分は特別な存在なんだ」という考えに至ります。ですが出来る事が増える、成長するという事は自身が何でもして貰える特別な存在である事と少しずつ決別(理解)していくという感じです。その中での抵抗、反抗期を経たりして自身と世界の関係性や状態を理解していきます。

社会学者である宮台真司さんも対談などでよく話していて、太字にした部分は今回の記事と関連性がありそうなので引用します。

・[反抗期]の成立条件は親による抑圧
・今は統計的に7割以上に反抗期がないので、反抗期が成立しない
・反抗期のない人間は[全能感]を捨てられていないので、[承認欲求]が捨てられない

仮説ですがAIについて利用者に以下の働きを促進するのかもしれません。
 ー 使用する事で全能感を呼び起こさせる
 ー 現実とのギャップで反抗期が再度起きる
 ー 全能感を捨てるストレスよりもAIへの信用、依存を深める

前述した、Twitter上でこれまでと違って攻撃的な雰囲気になった、というのはこの2番目の部分、
AI利用によって反抗期が引き起こされたのかもしれません。

その場合、冒頭で述べている様にこれはあくまでもAIの能力によって拡張されたものなので勘違いになります。電卓を持つ事で「私はあらゆる計算を瞬時にできる人間だ」と思うのと同じくらいに滑稽な状態です。電卓が手元から離れれば消えてしまう能力です。

少し話は逸れますが、イーロン・マスクが進めている事業”Neuralink”はこの”電卓が手元から離れる”のを解決させる事業の様なので実現すればその概念は大きく変わる事になります。


■肉体と精神の劣化と狭まる選択肢と破滅

話を戻して、この全能感というものは取り扱いが中々難しいです。幾つかの記事もリンクしながら書いていきますがリンク先も見て頂けると幸いです。

こちらの記事の中では以下の様な事が書かれています。
・全能感→自分は特別だ→特別だから俺は許される
・全能感を得続ける為に非常識な行動に出てしまう
・自信と慢心の境界は曖昧で危険でもある

こちらのブログでは以下の事が書かれています。
・全能感を維持する為に失敗リスクの伴う行動を取らなくなる
・結果として何もできない人になってしまうリスクがある


このあたりはダニング=クルーガー効果とも関連が深いような気もします。ダニング=クルーガー効果というのは「低スキルの人ほど自己を過大評価する傾向にある」という認知バイアスです。つまり自分自身ではスキルを持たない方が態度が大きくなったり、専門家ぶったりする傾向があるというものです。
例えばTwitterやブログでもそうですね、僕のブログでも初期の記事ではVTUBER業界についてまだ深く知らないものの、何となく専門家ぶった様な書き方をしている等はあります。Twitter上で専門家の発言にクソリプを頻繁に飛ばしている人というのも、あれもダニング=クルーガー効果の一例ですね。
全能感もバランスを取ればポジティブ思考という事になりますし、ダニング=クルーガー効果も自覚と努力思考があれば研鑽に繋がります。
ただ、ダニング=クルーガー効果などに見られるように悪影響の方が目立つケースが多い様に感じます。

広く浅い知識ほど相性の良いAIとこれらは親和性が高い様に見えます。

そして全能感が
「私は特別な存在だ」
「私は許される」
「私は本来こんな環境に居るべきではない」
「私が受けるべき扱いはもっと違うものだ」
「こんな世の中が間違っている」
という様な思考に行きついてしまう可能性を孕んでいるのであれば、AIが精神に及ぼすリスクは同様のものかもしれません。
これらの思考の行きつく先の中には絶望や破壊衝動というものが含まれます。

こちらはChatGPTに行った「破壊は許されますか?」という質問への答えです。

今後こうしたものへのAIの回答は変わってくる可能性は高いですが、今のところはこうしたものが返ってきます。
・自己防衛のための破壊はOK
・公共の利益の為の破壊はOK
・正当防衛の破壊はOK
こうしたものをメンタルが追い詰められたり偏った状態に陥った人が見た場合にどういった行動に出るかというのは怖くもあります。



Midjourneyでこういった超ハイクオリティなイメージを魔法の様に生成する事を知った後に、「よし!自分でもこういう絵を描ける様に頑張るぞ」と思う人は殆ど居ない様に思います。
この生成物は非常に簡単なプロセスで作られたものですが、そのベースとなっているのは人類のこれまでの芸術家やクリエイターの叡智の結晶です。生成されるものは普通の人の努力が到達するレベルを当然の様に超えてきます。
これらを縦横無尽に扱ったその後に、自分の手で絵を描いてみて、その驚愕のクオリティ差と、自分が上達する速度には絶望する可能性が高いでしょう。
絵、イメージは非常にわかりやすいジャンルです。

そういう意味では子供とAIというのは相性が良いのか悪いのか、未知の部分も大きいですね。


■貧困層の教育ベースが跳ね上がり、国家間の優位性が大きく揺らぐかも

冒頭のビルゲイツのブログにAIが変える可能性の高いものに教育がありました。確かに発展途上国や内紛などの問題がある国では子供の教育に抱える課題というのは大きく存在します。
これは教育をインフラとして考えた際に、教える人、場所、教材、時間など様々な要素が教育には必要になります。ですがAIは教育におけるこれらの問題を大きく払拭してくれる可能性があります。
これは2軸あって①従来の教育を与える ②教育が必要な大部分をAIが補う という2軸です。或いは①②の両方です。
こうなるとこれまで生産性の低かった国が短期間で超成長を実現するというのも可能性として十分にあると思います。そうすると流石にアメリカやイギリスといった大国を超えるという事は難しいとしても、アンダーからミドルクラスに位置する国家間の優劣というのは簡単にひっくり返る可能性があります。
また同種のケースとしてテロ組織や武装組織などもAIを活用する事で現状のパワーバランスが変わる事は多く出るかもしれません。

世界レベルでの管轄、統制が必要なのはこうした想像をするとその必要性が自ずと飲み込めてきます。

ここから1年後、3年後、5年後と時間が進むと世界の至るところで現在とは全く違った光景を見る様になりそうです。


今回の記事では直近で起こりそうな個人とAIの関わり方についての所感を書いてみました。

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