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古いサンダル、履いてはいなかったけれど

令和6年8月12日(月)祝日 快晴 最高気温35.5℃

PM14:00 すみだトリフォニーホール
演奏が始まる前の、息を潜める瞬間。
漠として包まれる音塊の中で、じっと立ちすくむ感覚。
オーケストラの醍醐味は、非日常の緊張感の中で音をビャンビャンに浴びることだと思う。
淡路島に佐渡裕さんが来た時、施設の子らを連れて聴きに行ったのが、最後だったかな。
子どもらがほぼ全員寝てしまい、関係者に見られないようヒヤヒヤしたのを思い出す。
あの時は「招待してもらったのに」と目くじらを立てたけど、子どもからすると良い迷惑ですね。

今回の新日本フィルハーモニー交響楽団による「hello!シネマミュージック」は、子どもが楽しめる工夫がたくさん。
ジブリ音楽とナレーションの融合、演奏者の超至近距離に設置された「オケかぶり席」の設置。
中でも、秀逸だと感じたのは、オケのみなさんが普段着のまま演奏していたこと。
どこにでもいそうなおじさんおばさんが、楽器を鳴らすと急に何らかの「二スト」に変身!
私のような職人フェチでなくとも「なんかすごいぞ」と、心ときめかす子もいたのでは。

…。

おっさんが「hello!シネマミュージック!」って、やっぱり、ちょっと図々しいだろ。
年配者が、いつまでも初心者面で入り口をうろうろしてたら、若者が中に入れんじゃないか。
私は、まだ自分のこと若者だと思ってんだよな。(これが一番ヤバい)
手軽にモノホンに触れようとする卑しさも、芸術に創造性より郷愁ばっか刺激されちゃってんのも、よく考えたら、恥ずかしいことだらけ。
よう考えて、行動しよし。



令和6年8月14日(水) 悲しいほどお天気 最高気温34.7℃

出張の合間、死んだ顔で中野駅のホームに佇んでいたら、電車の中からMさんが。
「仕事?」「仕事です」という短いやり取り。
どうしてなの。
古いサンダル、履いてはいなかったけれど。



令和6年8月16日(金) 台風7号のため荒天 最高気温29.1℃

「家族と縁を切りたい」
記憶を呼び起こすと、じわり死の気配が漂ってくるという。
自分も悪かったのかもしれない、自分が悪かったのかもしれない。
途方のない責苦に、トラウマという言葉を当てはめようとするけど、私には実際の苦しみがまるで分かっていない。
一瞬で思考や感情の回路が遮断される、その装置が内側にあることの恐ろしさ。

「今なら崩れても支えられるから」
本気でそう思って治療につなげられないか苦心してきたけど、これも自分の傲慢のような気がしてきた。
この子なら、きっと自分が向き合おうとする時に、支えてくれる人たちが周りにいるはず。
今の私には出来ることがあるとすれば、それを信じることくらい。
なんか本当に、何も出来ないな。

こんな台風の夜の、非常識極まりない来訪を喜んでくれた。
何も出来ないけど、この子にとって「なんか自分のこと考えてる大人の1人」では居続けよう。(もっとすべきことあんだろ)



令和6年8月17日(土)  曇り後晴れ 最高気温35.9℃

PM19:55 WHITE CINE QUINTO(渋谷PARCO内)
約20年ぶりに「下妻物語」を鑑賞。
当時は笑えるバイオレンスファンタジームービーとしか捉えてなかったけど、この骨太な造りは何だ!?
原作、ロケーション、配役、演出、全てがこの奇跡の仕上がりに向けて、掛け合わされ、統合されていく感じ。映画まるごとでっけぇ思想なんだよな。
深キョンって土屋アンナを「アンナ」って呼んでるんだね…へ…へへ……最高じゃん……

NHKドキュメンタリー「史上初の挑戦 特別支 援学校の野球部」の放送。
特別支 援学校の野球部が、単独のチームとして、初めて甲子園の予選大会に出場。
そこに至るまでの本人たちや周りで支える人たちの心模様が、インタビューを交えながら記録されていた。
ちょっとドキドキしながら視聴。
盛り上がりを作るための演出を施されてはいたけど、あの子が真っ直ぐに頑張る姿や、職員さんが心から応援する姿に脚色はなかったと思う。
施設に戻りたいなとちょっと思ったけど、今の立場だから出来ること、もう少し追求する。

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