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テイルズオブアライズをトロコンするまで遊んだので感想文を書いたぞ!!!

 あー……なんていうかさぁ、もうカッコいい女とか強い女は飽きたんだよね。

 はい、ということで今回も感想文を書いてまいります。わりといろいろ書きたいことがあるので例によって項目ごとに箇条書きしていくぞ!!!


・システムとグラフィックについて

 システムはねぇ、さすがテイルズ!!!……とは思わなかったんだよね。私の環境がPS4だからというのももちろんあるんだろうけど、それを差し引いても快適とは言い難いシステム回りだった。

 メニューを開いたりマップを開いたりするのは普通なのね。ゼノブレイド2で感じたストレスを感じることはなかった。でもメニューをストレスなく開けるなんていうのは評価項目に入らないというか、普通じゃね?

 まずなにがイライラしたかって逐一ロードが入るのよ。ちょっとマップを入りなおしたりするだけで10秒くらい普通に待たされるの。えぇ……?って思っちゃった。FF7Rを見習ってほしい。あんなに快適な環境を作れるのはやっぱりスクエニはすげぇよなぁって感心してしまう。

 直前にプレイしていたのがゼノブレイド2なのでマップが切り替わるたびにロードが入るのは本当にうんざりした。ちょっと調べてみたらアライズはこれまでとは異なるグラフィック技術を用いているみたいなことがどっかの記事に書いてあったんだけど、正直に申し上げてベルセリアどころかゼスティリアのころからなにも進歩していないと思ったくらいだ。多少は解像度が上がっているのかもしれないけれど、ほぼ変わってない。にもかかわらずロードが長い。

 いやね、なんかFF7Rとおなじ方向性を目指しているのかもしれないけど(つまりよりリアルに近い表現法を模索している)、残念ながらFF7Rには遠く及ばない。しっかり作り込まれてはいるんだけど作りが甘い。ゼノブレイド2もがっちり作り込まれてたけど、ゼノブレイド2はマップ移動でストレスがない。ぜんぶ繋がっているので移動するのにロードで悩まされることはなかった。でもアライズはダメ。宿屋で泊まって次のマップに移動してから「あ、買いもの忘れた」と思って戻ろうとするとそれだけで時間を持っていかれる。これだけでげんなりである。

 グラフィックにこだわっているとはいってもキャラの造形に大きな違いはなく、フィールドやダンジョンなどの背景に強いこだわりがあったかもしれないけど、はっきりいって前作までのほうが見やすかった。水彩画調にしたとか言ってたけどそんなことする必要ねぇよ。プレイアビリティをもうちょっと考慮してくれ。普通に見づらいよ。

 あとね、スキットシステム。テイルズと言えばスキット、と言われるほどテイルズにはなじみの深いシステムなんだけど、これまでとは違ってアニメ調のキャラクターによって織りなされる笑いあり笑いあり笑いありのスキットじゃないの。3Dキャラクター(つまり普通のキャラ)が漫画のコマ割りみたいな枠の中で動いでしゃべるの。これ普通に元に戻したほうがいいよなぁって思った。

 たぶんアニメからの脱却みたいな方向性が打ち出されてるんだろうけど、ファンのニーズにまったく沿ってない。このスキットシステムにするくらいならそれこそ普通に小さいイベントシーンを作ればよかったのに。すべてが中途半端である。

 とにかくシステムは雑。なにをするにしても待たされる。頻繁にオートセーブが入るのだけど、オートセーブ中はコマンド入力を受け付けない雑仕様。改善が望まれる。


・フィールドについて

 狭い。この一言に尽きる。

 直前にプレイしていたゼノブレイド2はそれはもう広大だった。ゲームとはかくありたいものであると思ったほど楽しめた。

 アライズのフィールドは狭い。世界が狭すぎる。調布市より狭いと思ったくらいである(調布市民の皆さん、他意はありません)(調布市は東京の中では割と広いほうである)。ベルセリアやゼスティリアのフィールドは広くて探索し甲斐もあったし、モンスターも各所に点在していたので避けて通ることも戦うこともできたけど、アライズは狭い通路をモンスターが通せんぼする形で配置されているので、どうやっても戦わなければならない(頑張れば回避できる)。おまけにフィールドが狭いので頻繁にマップが切り替わる。マップが切り替わるとロードが入る。悪循環である。ベルセリアみたいにマップを広くつなげて切り替わりを減らしたほうが全然いい。

 横に狭いのに縦にも狭い。ゼノブレイド2を見習えとは言わないけれど、攻めて前作や前々作くくらいは頑張るべきではなかっただろうか? 縦に広いとわかりづらいかもしれないけど、そこを上手に作るのが老舗の腕の見せ所なんじゃないの?と思ってしまった。縦に狭いのはまぁ許せるよ。マップの問題もあるしね。横に狭いのはあまりに不自然。表現手法にリアルさを求めて作ったのはわかるけど、日本みたいな狭い家屋があまりに不自然。ダナの狭い家屋とレナの作る巨大な建造物の対比を描きたかったのかもしれないけれど、レナの建物も別に大して巨大じゃないからね。

 キャラをリアルに近づけて作っているにもかかわらず、フィールドの広さ、各建造物のサイズ感などがリアルからかけ離れている。ドラクエ3くらいな感覚。国から国を移動するのに自宅からコンビニに行くくらいの距離しかない。レナの作る先進技術による巨大な建築の端から端までを1分以内で横断できるとか普通にあり得ないでしょ。そういう世界を作るんならキャラも別にリアルに寄せる必要なんてないんだよね。バランスが悪いなぁってずっと思ってた。

 あとね、カメラワーク。ゼスティリアでいろいろ言われたのを改善したかったんだろうけど、カメラを寄せたり引いたりできないのは見づらかったね。こういう細かいところをもうちょっと詰めてほしかったなぁ。


・バトルについて

 バトルは楽しかったよ。

 私はベルセリアとゼスティリアで予習済みなのですんなり入れるかと思ってたけど、いざ蓋を開けてみたら通常攻撃が普通に使えるバトルに戻っちゃってるのね。ただし方向キーとボタンの組み合わせで術技を連携していくみたいな旧来のシステムはなく、ベルセリアとおなじくボタンで技を切り替えていくバトルシステムだった。

 しかしどういうわけか各ボタンにひとつ(中盤以降はふたつ)しか技が割り当てられない。必然的にコンボの幅も狭まるし、そもそもテイルズ特有の膨大な術技がコンパクトにされてしまっている。

 ベルセリアでは〇ボタンを4回でひとつの連携を作ることができ、4つのコンボを駆使して戦っていくみたいなすごく戦いやすいシステムに昇華させたのに、今作は〇ボタンを4回押してもおなじ技が4回出るだけ。えぇ……?って思っちゃった。

 ベルセリアやゼスティリアは弱点連携といういかに弱点を突いてそれを繋いでいくかみたいなシステムだったけど、アライズは弱点とか大して重要じゃないの。ゴリ押し。ただ普通にゴリ押しすると一瞬で殺されてしまうので、敵に合わせた崩し技で弱体化させるのが重要……みたいな説明があったんだけど、感想としては「そんなん別に要らなくね?」だった。

 ずっと難易度ハードでプレイしてたけど、ブーストアタックという各キャラクター固有の崩し技を駆使していくのが王道プレイスタイルなんだろうなと思った。でもさ、これって逆に敵の種類が6種類に限局されるってことでもあるんだよね。敵の種類が異様に少なかった。全部で150種類くらいしかいないんだよね。少なっ!って思った。

 バトルの表現は割とこだわってて、これは痛快だったと思うよ。ブーストストライクとか決めるの楽しかったし、小難しい操作は要らないけどいろいろおぼえたり工夫したりしないと勝てない敵も多くて楽しかった。ヴェスペリアのフェイタルストライクが豪華になって復活してみたいな感じだね。

 テイルズは敵の動きを見てそれに合わせて行動する、みたいなバトルが多いよね。闇雲に殴るだけじゃ勝てない。テイルズといえば術攻撃が強力なことで有名だけど、今作も御多分に洩れず術攻撃が強力だった。ただ、前作までのような桁違いの強さというか便利さはなかった。

 操作キャラとして初期設定のアルフェンは普通に弱いのね。すぐ死ぬし。テイルズのアクションをプレイするうえでの基本をおぼえましょうみたいなキャラだった。で、戦ってるとシオンが「マグナレイ!!!」とか言いながらビーム光線を打ってくるのつえーなと思ってシオンを使い始めたのが中盤くらい。シオン普通に強いのね。遠くからちくちく攻撃し続けてたまに術を使ったりするだけで勝てるのは楽しかったんだけど、致命的に火力が足りてないなぁと思ってリンウェルを使い始めたのが終盤になってから。

 リンウェルはガチで強い。6連系以降の上位術は例によって「以下省略!!!」で放てるので強い術を連発できる(AGが切れたらステップ回避を連発すれば回復するし、なぜか連携も途切れない)。ただ、術が発動してから命中するまでにタイムラグが大きいので大技がなかなか当たらない。いろいろ試行錯誤して「タイダルウェーブ」「メテオストーム」「ディバインストリーク(有料DLC)」を敵に合わせて使い分けていくのがいいなという結論に辿り着いた。特に有料DLCのディバインストリークは発動から着弾までが早く、威力も申し分ないと使い勝手が非常にいい。

 リンウェルは空中戦がとにかく強くて、空から氷牢と天槌を打ってるだけでぽこぽこ敵が死んでくので非常に爽快だった。おまけに空にいると敵の攻撃がほとんど当たらないので敵がリンウェル目掛けて突っ込んできても回避したりする必要がない。壊れキャラである。慢心してると瞬殺されるんだけど、敵の動きを見ながらボタンを連打してるだけで勝てるのでとても強い。天槌はちょっと動きを気にしないと当たらないので慣れとコツが必要だけど、全体的に火力も高くて使いやすかった。

 プレイアブルキャラの総評もやっておこう!!!

・アルフェン
 雑魚。本作の主人公。弱い。すぐ死ぬ。HPを消費して高火力攻撃が可能なキャラだけど、前線で戦ってるとすぐに殺されるのでHP消費技とか使えない。難易度の高いキャラ。

・シオン
 強い。遠くから「マグナレイ!!!」ってやってるだけでおk。正確にはおkじゃない。火力がなさ過ぎてジリ貧になる。術を織り交ぜて戦えばある程度は火力も出せるけど、術を混ぜると途端にヘイトが飛んでくるので迂闊に使えないし着弾も遅いのでちょっと使いづらい。CPUに任せておけば自動で回復してくれるので必須キャラ。

・リンウェル
 上述の通り。本作の最強キャラ。

・ロウ
 雑魚。すぐ死ぬ。接近しないと攻撃が当たらないので近接戦しかできない。囲まれると死ぬ。使い道はない。ブーストアタックもほぼ無意味。

・キサラ
 強い。近接キャラだけどほかのキャラと違って回避ではなくガードができる。ガードしてちくちく殴っていれば敵は死ぬ。操作キャラとして使わないとガードしてくれないけど、防御力が高いのでアルフェンより長持ちする。

・テュオハリム
 弱い。動きが遅い。トリッキー。シオン以外で回復術を持つキャラなので、CPUに回復してもらうのが無難。シオンとテュオハリムはこのゲームでほぼ固定で編成に入る(入れないとすぐ死ぬ)。

 こんな感じである。パーティーはリンウェル(操作キャラ)、シオン、キサラ、ティオハリムが安定。キサラをアルフェンに変えても戦えるけどアルフェンはすぐに死ぬので戦線の立て直しを強いられてツラい。キサラはギリギリ耐えてくれることが多いのでキサラを入れてリンウェルで遠くから殴るのがもっとも戦いやすい。

 終盤以降、いかにリンウェルを生存させて殴り続けられるかみたいなゲームになってたけど、いろいろイジれるアクセサリーで「狙われやすさダウン・大」をつけても容赦なく狙われるんだよね。ボス敵とか執拗に操作キャラを狙ってくるからめっちゃいやらしい。キサラに「狙われやすさアップ・大」をつけても真っ先にリンウェルを狙ってくるのめっちゃ嫌だった。たぶん与ダメージでヘイトを買う、あるいは術攻撃をする敵を優先するみたいな思考になってるんだろうなぁって思いながらやってたよ。

 作戦の項目はもうちょっと細かくいじれるようにしてほしかったなぁ。前作までは各キャラごとに設定できたからいろいろいじれたけど、今作は操作キャラ以外の大まかな方針を細かく決める(矛盾しているようだがこれ以外に表しようがない)、みたいな感じだったからほとんど触らなかった。

 総じてバトルは楽しめた。前作までのいいところを敢えて外す必要はなかったのになぁと思いつつ、今作もこれはこれで楽しめた。バトル後の掛け合いがなくなったのは本当に残念だよなぁ。

 余談だがキツかったのがお金。ガルドね。バトルの項目からはズレるかもしれないけど、今作の消費アイテム超高いのね。DLCで序盤ブーストしたので序盤は困らなかったけど、中盤以降めっちゃお金に困った。まずシオンが殺されるとどうしてもアイテムを使わなければならなくなる。CPUが勝手にアイテムを使いまくる。作戦を変えてアイテムを使わない設定にすると普通に死ぬ。よって回復アイテムをたくさん買い込む必要が出てくるんだけど、ゲーム内でお金を稼げる方法が非常に限定的で、敵を倒してもお金は増えない。終盤まで素材を売って防具を売ってと、とにかく金回りが厳しいゲームだった。


・シナリオとキャラについて

 シナリオとキャラの感想を一言でまとめると下記のとおりである。

 ポリ /(^o^)\ コレ \(^o^)/

 ポリコレである。政治的ただしさである。完全に毒されている。逆にポリコレに準拠しないと焼かれてしまうのでそうせざるを得なかった、という感じがひしひしと伝わってくる。

 この項目が一番ながくなるし、ひとによっては不快に思われることもあるだろう。ポリコレ好き、世界平和大好きな諸兄はぜひとも回れ右をしてほしい。ファック平等喧嘩上等という方のみ読み進めていただきたい。なお、ネタバレ全開である。












 キャラの総評を見てもわかるように(プレイしてないとわからないだろうが、プレイしてないのにネタバレを読むような酔狂な方はいないだろうと思うのでこのまま進める)基本的に女キャラが強いゲームである。男キャラで使えるのはティオハリムだけ。完全に女性をエンパワメントする文脈でこのゲームの感想を回収できてしまう。

 女が強いゲームなんていくらでもあるけど、テイルズのキャラは違うのね。「男受けする強い女」じゃなくて、「女受けする強い女」なんだよね。ゼスティリアあたりからこの傾向は強くなってたし、ヴェスペリアも女向けのゲームだったけど(エクシリアとかグレイセスは全然おぼえていない)、ここまで婦女子向けのキャラ設定にする必要があったかと考えると、ターゲット層を女性にしているというよりは、ポリコレ準拠と考えたほうがしっくりくる。それは物語にも顕著に表れている。

 まず、男キャラが少女漫画に出てくるような、というよりは乙女ゲーに出てくるようなキャラしかいない。アルフェン然り、ロウもそう、テュオハリムにいたってはお貴族様である。徹底的に「女に不快感を抱かせない」「性欲を感じさせない」「弱さを見せない(弱さと女に感じさせない)」男キャラしか登場しない。

 そして女キャラは女が好きそうな「強い女」なのだ。女が好きそうな強い女ってどういうことだってばよ……とこれを読んで思うひとはここにはすでにいないはずなのでこのまま進めるが、簡潔に述べると「排他的」「性的要素が少ない」「男に媚びない」といった特徴を持った性格のキツい女キャラが「女受けする強い女」である。男が想像する強さと女が想像する強さはまったく異なる。これを理解できないひともここで回れ右をしてほしい。

 いいかね? ゼスティリア、ベルセリア、アライズと、みっつの作品にわたって共通する項目をひとつ述べよう。「巨乳キャラがいない」である。これは「巨乳キャラがいなくて残念だなぁ」と私が思っているという意味ではない(断じて違うぞ!!!!)(そう思ってないという意味でもない)。

 シオンなんかは典型で、「排他的」「性的要素が少ない」「男に媚びない」のすべてを兼ね備えている。普通に感じの悪い性格キツめの女である。美人なので許せるというだけ。リンウェルも強い女で、排他的で露出も少ない。男に媚びる要素だけは少ないものの持っている。キサラも強い女で、男を喜ばせる要素の少ないキャラだ。多分に母親的な要素を持っているが、「ママ」というより「おかん」である。男に媚びるというのは字面通りの意味ではなく、男性ユーザーを喜ばせそうな要素が少ないという意味だ。

 キャラもそうだがお話自体もそうで、徹底的に「性にまつわるあれこれ」を排除したうえで成立しているのがアライズの物語だ。

 アライズのお話は「既得権益者であるレナがダナを不当に虐げる差別社会」の話なんだよね。お話の構造が古い。使い古されたお題目にもかかわらず不自然な点が散見するところも穴だらけである。

 まずなにが不自然かってレナとダナの混血がいない(描写されない)ことである。ダナ人とレナ人に構造的な差異があって性交が不可能だとか、外見に違いがありすぎて性愛の対象にならない、とかならまだわかる(ヘルガイムキルくらい違えば話は別である)。しかしダナとレナの間には外見の違いがないと明記されているし、サブクエストではダナ人とレナ人が恋に落ちて結婚までしている。にもかかわらず混血が存在しない。

 混血が存在するとどうなるかというととっても簡単なお話で、(ダナの)女が(レナの)男に搾取されているお話が生まれてしまうのだ。ポリコレ的には非常に都合の悪い挿話を混入しなければならなくなる。レナ人の数は圧倒的に少ないので、ダナの女に子どもを産ませて人口動態を底上げするみたいな政策は300年もあれば必ず到達するであろう結論なのに、不自然なまでにそういった逸話がない。ポリコレに準拠するとポリコレ倫理コードに抵触する逸話の一切はキャンセルされてしまうので、こういった不自然で不可思議な世界が出来上がってしまうのだ。

 冒頭でこれでもかっていうくらい虐げられているダナの姿を見せつけられるのに、ダナの女がレナの男の慰み者にならないはずがないでしょう。なのにそういった逸話はすべてないことになっている。あまりに不自然である。CEROの倫理コードに抵触するとかそれ以前の問題だ。

 そもそもね、このお話けっこう難しい構造なんだよね。レナ人の起源にまで遡って真相が語られているくだりなんかもそうなんだけど、普通に小難しいお話なんだよ。子ども向けのお話ではないんだよね。お話をちゃんと理解しようと思ったらある程度の分別が必要になる。お話自体は子どもを突き放しているのにお話の結末が子ども向け、というなんとも珍妙な物語になっている。

 不自然な点はまだまだあるあるぞ。根本的な物語の中枢を担うキャラクターであるシオンだが、彼女が生まれてきたことそれ自体が謎である。

 シオンは《荊》という、触れる者に激しい痛みを与える特殊な能力を持っている。その能力の起源は300年前に遡り、《王》の対となる《巫女》だったネウィリが自身を犠牲にすることでその身に宿した星霊力の意思の断片であることが物語の終盤で明かされるわけだけど、その能力は子孫に継承されていくとされている。

 つまり初代《荊》持ちであるネウィリの子孫がシオンなのだけど、シオンを見ていればわかるように、《荊》持ちにほかの人間が触れることはできない。直截な言い方をすれば、ネウィリはセックスできないのだ。はて? セックスのできない女がどうやって子を成したのだろうか?という疑問にユーザーが辿り着かないはずがないとは思わなかったのだろうか? 子どもは愛の結晶で、コウノトリが運んでくるというお花畑脳向けの物語ならわかるが、そんな話じゃねぇだろう。

 技術の粋を極めたレナが体外受精をしたんだ!!!って考えるひともいるかもしれないが、それを300年間ずーっと繰り返したの? ネウィリとその一族に精子を提供したのはだれ? ネウィリの一族はそれができるほど高貴な一族だったの? 王族とかならわかるけどシオンの生まれについては物語ではなにも語られていない。

 そもそも《巫女》は一度《王》の制御に失敗したことで、その機能をべつの機械に代替させているってくだりがあったから、《巫女》の一族が権勢をふるうこともなければ大事に扱われることもなかったはずなんだよね。つまり《巫女》の一族が存続できる理由がなく、ゆえにシオンの生まれについては詳らかにすることを徹底的に忌避されている。物語に整合的でない不都合な部分を語らないことで誤魔化している。

 普通に考えて触れるだけで激痛が走るような人間を生かしておく理由がないんだよね。セックスなんて無理でしょ。ちんこがもげちゃうよ。この物語の致命的な失敗は、アルフェンを300年前の世界から引っ張ってきたことだ。引っ張ってこなければならなかったのはネウィリのほうで、アルフェンである必要はなかった。

 とまぁこのように、性にまつわる逸話を排除するとかくも不自然で不可思議な世界になってしまうのだ。混血がいないこともだけど、シオンがネウィリの子孫だったことが明らかになるくだりは普通に「はァ?」って思ったからね。ポリコレを迎合するほど物語は矛盾を孕み破綻していくという非常にわかりやすい好例である。

 ほかにもまだまだあるぞ。ジルファとヴォルラーンの存在がそれである。ジルファは非常に頼りになる兄貴分的な存在というか親分的な立ち位置で、物事を冷静に判断できる分析眼の持ち主だが、彼は物語の序盤が終わるころに死んでしまう。そんな簡単に殺すなよと思ったものだが、クリアしたからこそわかる。アライズの物語上、ジルファに生存されては困ったから殺すしかなかったのだ。

 ジルファは「レナを打倒することを目標にしてはならない」「レナに打撃を与え、交渉のテーブルに引きずり出す必要がある」と、非常に現実的な考えを明示している。ジルファにとって、レナは倒すべき悪ではなく共存の道を選択させるべき相手だった。ダナがレナをやっつけて共存を強制するのではなく、レナから共存の選択肢を引きずり出すことを目標としていた嫌いがある。現実的に考えるのであれば、ジルファの考え方はしごく真っ当なもので、殲滅戦を避けるための唯一の方法だったとすら思う。実際はレナの後ろに人外の化け物が潜んでいましたみたいなブッ飛んだ方向に話が旋回していくのでジルファのこの考えは誤りだったことになるのだが、そうだとしてもジルファが利害の調整役として働くことで、どちらかがどちらかを滅ぼすという極端な結末には至らなかっただろうと思われる。

 このような現実を見据えた建設的かつ地に足のついた考えの持ち主はポリコレには不要である。ポリコレには倒すべき悪がいなければならないからだ。

 ジルファとアルフェンは、共存の道を選ぶという意味では似通っているが、致命的に異なる点がある。アルフェンはレナをやっつけることで「共存の正しさ」をおべんちゃらを並べて押し付ける形をとっているが、ジルファはレナを倒しきってはならないと考えていた。つまり5つある占領地のうちみっつ(くらいだと思う)を解放することでレナと対等の交渉権を得て、そこから落としどころを探るという方途を取ろうとしていたのがジルファだ。「支配と抑圧は悪だ!!!」と鼻息を荒くしてレナの領将をブッ殺していくアルフェンとは相いれない存在だ。

 ジルファはアルフェンにとって兄貴分であり親分的な存在なので、アルフェンとジルファが舌戦をすればジルファが勝ってしまう。そうすると物語を作者が意図する方向に進めることができない。ゆえにジルファには早々に退場してもらうしかなかった。ジルファはアライズの物語上、火付け役としてのみ存在を許されたキャラだったのだ。

 もしジルファが生きたままテュオハリムと出会っていたら、物語は違った様相を呈したいただろう。ジルファはテュオハリムの手を取ることを選び、そこから話し合いの場を設けるよう画策したと思われる。「壁を壊す!!!」とか言って他国に乗り込んで領将をなぎ倒していく展開にはならなかったはずだ。正確にはアウメドラもヴォルラーンも壊滅的な性格の持ち主なので、議論にならなかった可能性も大いにあるが、少なくとも物語はメナンシアで一旦の落着をみせただろうことは想像に難くない。そのような現実的な着地点を生み出してはならなかったのでジルファを殺すしかなかったのだ。

 ヴォルラーンもまた重要な役どころだ。ヴォルラーンは「倒すべき悪」でなければならなかった。わかりやすい悪者であり、しかし強力な敵でなければならないヴォルラーンは、非常に多くの示唆に富む名言を残している。ネタバレ全開で語っているのでスクショも載せてしまうが、エンディングの最後のシーン、ヴォルラーンは下図のように語っている。

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 その通りだと思ったよ。アルフェンの語る理想は絵空事なんだよ。アルフェンとシオンの辿る未来は、間違いなく裏切りと失望に満ちた汚辱の道になるだろうなと思ったものだ。アルフェンの語る理想はまさしく強者の論理なんだよね。強者でなければ語ることを許されないきれいごとなんだよ。共存もそう。赦すこともそう。強い者、つまり余裕のある側にしか許されない上から目線の考え方なんだよね。それにアルフェンは気づいていない。これがポリコレの限界である。その結果がラストシーンの元気玉だ。あんな意味不明な結末でユーザーが納得すると本当に思ったのだろうか? 馬鹿にするのもいい加減にしてほしい。

 アライズをクリアして確信したのだけど、どうもテイルズのお話は敵側でかつイケメンの語る論理こそ作者の言いたいことなんだよ、きっと。ヴェスペリアのデューク、ゼスティリアのヘルダルフ、ベルセリアのアルトリウス、アライズのヴォルラーン。敵側のイケメンの言は行き過ぎた結論ではあるものの、現実的で腑に落ちる見解ばかりを示している。それを正義の力で無理やり正しそうな結末に導いているのが主人公サイドなのだ。むしろ現実的な考えを突き抜けさせることで悪へと転化して、それを正義の力でブッ倒すのがテイルズのお話だ。やり方が姑息。

 とにもかくにも、テイルズオブアライズの物語は面白くなかった。激萎えである。ポリコレに準拠する、リアルに寄せる、という制作陣の意気込みは伝わってきたが、これで売れると思っているのなら出直してきたまえ。


・最後に

 ストーリーやシステムはゴミだったけど、バトルはそこそこ楽しめたしスキットもまぁまぁ楽しめたのでよしとしよう。リアルに寄せるという方向性はテイルズの味を損なう方針なので、早急に方向転換してほしい。ポリコレマンとかフェミに媚びるんじゃねぇよ。真っ向から立ち向かえよ。エンターテイナーだろ、おまえら。無難なところで満足してんじゃねーぞ。

 総じて全体的にボリューム不足だったね。フィールドもボリューム不足だし、トロコンも1周目であっさり達成できるくらいボリューム不足。時間がなかったのかしら。

 さて、次にプレイするのは「黎の軌跡」の予定だ。軌跡シリーズは空の軌跡からプレイしてるので楽しみではあるが、閃の軌跡シリーズを終えたいまとなっては不安しかない。ポリコレまんせーの物語にならないことを願うばかりだ。

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