見出し画像

いんよう!第3回「小説を書いてはみたものの」

2018年9月4日公開 34分

柞刈湯葉さんの『未来職安』を読んだ感想を話している中で、「いん」ことヤンデル先生がSF小説の執筆に挑戦したことが分かったので、その顛末について話しています。

いんよう!概要欄

<言及された固有名詞>
漫画家…小林よしのり
作家…村上龍/柞刈湯葉/森博嗣/西尾維新
漫画…おぼっちゃまくん/ゴーマニズム宣言/フラジャイル
本…限りなく透明に近いブルー/コインロッカー・ベイビーズ/未来職安/すべてがfになる/クビキリサイクル

書きたい書けない書けたかも~文章を書くって難しい~

目次
1. 「小説を書けなかった」道程~そのダメージ
2. 漫画原作はどうだ
3. じゃあノンフィクション型なのかな からの、江戸っ子的闇あるいはテレ
4. 文章を書くこと
5. 書きてーな、いや書けねーな



 

1. 「小説を書けなかった」道程~そのダメージ

・一つの物語を形にするうえで、いくつアイデアがあればいいのかがまったくわからない。展開の肉付けをしようとしてもふくらまない。文字数が増えていかない。(0分43秒~2分30分)
・アイデアノート的なものもつけてみた。しかしアイデアを要約してしまう。(2分45秒)

よう:それなに、ツイッターやってる弊害なの?(笑)
いん:ふふっ。逆かもしれなくて、そういう人間だからツイッターが残ったのかもしれないです。

・小林よしのりいわく「アイデアを引き延ばすことができないから一話にめっちゃ入れる」。「ああまさにそれ」(3分30秒~4分10秒)
・三題噺みたいなのならいけるかも、と思ったから、モチーフを3つくらい作ったが、今度はそれがサイエンスに準じたフィクションにならなかった。SFではない形式にするとスラップスティックになってしまう。大学時代に小説を書いていたが、その時も破綻していく物語しか書けなかった。(4分33秒~8分30秒)

よう:ああー。いっちーのギャグと同じだ
いん:ふふっ。はははははっ。失敬な(笑)
よう:絶対ナンセンスなギャグしかやんないじゃん。んで、着地しないじゃん。絶対に、意地でも着地しねえぞって思ってやってない?
いん:着地する物語はちゃんと仕上げたいわけですよ。だからオチがつくような完璧な話はツイートできないんですよ。もったいない。逆に言うとツイッターごときにオチまでつける恥ずかしさみたいのがぼくの中であるんです。
よう:うん、でしょ。だから恥ずかしいからやんないんでしょ。
いん:ふふふふ。ざっくりまとめんのやめてください(笑)
よう:おれ、そのベタなギャグも、破綻したやつも一切思いつかないからさ。どっちにしろ量産できるのすごいなと思って見てはいるんだけど。これずっとバカにして言ってるわけじゃないからね。そこはわかって聞いてほしいんだけど。でもあまり着地させてる感じはしないけどね。
いん:ぼくそこまで考えてないので、いざ着地させなきゃと思うと着地できない。
よう:たまに着地しようとすると足グネるみたいなこと?
いん:(笑)体育ヘタな子みたいに。そうそうそう。
よう:(笑)すげえ空中で回転してるのに、着地グネるみたいなこと?
いん:グニッとね。

・村上龍の「限りなく透明に近いブルー」とか「コインロッカー・ベイビーズ」などの「一切着地していない物語」もあるけれど、そうは書きたくないと思うともう書けない。(8分30分~9分2秒)
・短編を6つ書いて、その短編をつなぐストーリーとしての長編を書こうとした。しかし4つ書いたところでダメだと思ってごめんなさいをした。それぞれのクオリティも高くないし、長編になればクオリティが上がる気もしなかった。(9分2秒~10分5秒)
・「未来職安」は短編の積み重ねだけど、背景に鬼のように設定された設定があるから長編として練ることができる。先を世界を考えきった人がその世界で生み出す短編であれば、あっという間に統一された世界を作れる。小ネタだけ集めてもだめだった。(11分50秒~12分45秒)
・医療系SFを書きたかった。ハード系SFを書こうと思うと、医療系以外書けない。知識がないから、想像力に科学的考証を足せる気がしない。(21分7秒~21分46秒)
・森博嗣や西尾維新などは別格だけれど、ああいうすごいのが書けるのはサイエンティストかオタク。自分は一応科学の側にいる人間だからそっちかなー、と思って書いたら書けなかった時のダメージはでかい。「ここまでかー」となる。(21分47秒~24分49秒)





2. 漫画原作はどうだ

・「フラジャイル」が出てきたとき、これはかなわんと思った。あれは自分のいる世界だけど、いちエピソードたりとも自分の脳から出てこない自信がある。一個たりとも出ない。知ってる話題はいくつかあるけどそれを練ってキャラをかませてドラマにするのは一生できない。(13分6秒~14分50秒)





3. じゃあノンフィクション型なのかな からの、江戸っ子的闇あるいはテレ

・専門誌にエッセイ的な連載はあるけど、文章の完成度じゃなくて僕の持ってるフォロワー数が客を呼んでくる。病理の話が入っていれば価値を込めようと思うけど、好き勝手に書いてよければいいほど迷走する。(15分38秒~17分16秒)
・「小説すばる」で自分のことや書評を書いたことはある。書評は楽しかった。「この人ムカつくくらいいいこと書く」と自分のフラストレーションを書けばウケる。(17分34秒~18分20秒)

よう:9万人くらいフォロワーいるわけでしょ?
いん:そうですね。早く10万人が見たい。
よう:それだけいるってことは、発言している内容に価値があるってことだと思うんだよね。だけど自分のことじゃなくて他人のことを書いてるときのほうが楽しいんだね
いん:そう。絶対にそう。
よう:確実にいっちーの中の闇だよねそれね。
いん:ふふふふふ
よう:学生のころから小説書いて、でも自分のことは見ないでくれって言いたいわけでしょ
いん:そう。そう。そうそうそう。

18分28秒~19分18秒

よう:なんだろうね、そのテレ
いん:テレ?闇?
よう:んー、まあ同じだよね
いん:同じ⁈ (笑)
よう:なんか照れててやれないわけでしょ。やりたいけど照れてやらないわけでしょ。そこのねじれ構造みたいのってなんかある種の闇だよね。江戸っ子かってことじゃん
いん:んー、江戸っ子じゃないなあ (笑)

20分2秒~20分25秒

・人を良い良いと言ってると、自分のよくないものを出したときにどうや、とは言えない。同じレベルで比べると自分は大したことないから。(20分30秒~20分48秒)





4. 文章を書くこと

26分4秒~27分58秒

・ものを書くことの難しさをしみじみ考える
・完全に文章だけで生きてる人は減っている。文章で収入を得ていても、ほかで影響力のある人が多いのでは(よう)
・だから柞刈湯葉が素性を明かさずに書いてるSFがウケるとムカつく(いん)
・小説は唯一一発逆転ができる分野なのかもしれない(よう)





5. 書きてーな、いや書けねーな

28分~最後

よう:書きたい欲求はあるんだね。
いん:ありましたよ。書けたらよかったなあくらい。それだけに書いてる人をすごいねって紹介する方にまわってますけど。やっぱフラジャイルが出たときの打ちのめされた気持ちは今でも忘れないです。
よう:けっこうさ、いっちーあれだよね、こう、よく打ちのめされてるよね。そういうことで。
いん:(笑)ビール開けちゃお (ぷしゅ) 打ちのめされませんか?そういうとき。
よう:いやまあ年々なくなってるけどね。書きたいっていう理想が自分の中であるからでしょう?
いん:書くつもりも能力もないけど、これ書けたのかもしれないってなるとき、いろいろ逃した感が強すぎて一番打ちのめされますね。なんでこの世界でこんだけ暮らしてて原作一つできねえんだ、能力がねえんだ、みたいな
よう:自分の能力に期待してるよね。
いん:また自分の能力が届かなかったよ、みたいな気持ちでもありますね。
よう:んー、そうね。勝手に挫折するパターンだよね、いっちーのね。昔から見てるけど。(笑)
いん:(笑)たしかに勝手に挫折するパターンはすごく多いですよね。うん。何十回となく勝手に挫折をしてきたなあ。
よう:んで、一人悶えてるんだけど、まわりはよくわかんないっていうね。
いん:そうそう。で、あなただけ爆笑しててね
よう:ああ、また悶えてんなーみたいな(笑)
いん:(笑)十年一昔ですよね
よう:だってフラジャイル出てさ、悶えてる病理医なんてさ、ごく一部だよ多分
いん:いないんじゃないですか?
よう:ねえ。可能性としてはフラットでも、原作が書けなかったからと言ってさ、悶える病理医はごくごく一部だよね。
いん:あれはやりたかったなあ自分で。まったくかなわない。まいった。生涯にわたって僕があれをやる機会があったかというとないんですけど、でもやられたのを見ると、おれはここまでお膳立てされてもできないほどつまんねえのか、っていうのはありますね。
よう:ああ、たしかに手に届くところにいるもんね。
いん:そうですよ。ほかの人に比べたら何倍も得だったはずなのに。自分でこういうこと考えましたっていうのは、一番言いやすい立場ですよね。でもあれを読むと「これは書けねえ。書けねえ」と思うんです。
よう:なるほどね。じゃあ今週はそろそろいいすかね。
いん:(笑)ただぼくがひたすらへこんで終わりましたけど、じゃあ、また来週


以下感想です。
・ここから5年弱でフォロワー5万人も増えたんだ。すごいな。それはSFではなくて医療情報という形で、先生のなかに頃合いで煮えていたものを出してくれたからなんじゃないかと勝手に思います。
・ビール飲みながら話すことを公にした記念回(?)。
・よう先輩の、人を引き出すうまさが発揮されている。本当にインタビュー上手だと思う。
・すごく苦戦した回でした。話の転がり方を追いかけるのがわたしには難しかった。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?