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いんよう!第4回「日常系と萌えの話」

2018年9月11日公開 27分

ガラパゴス的に突き詰められてきた「日常系」と「萌え」についての、個人の感想です。前回までは、我々ふたりの話す内容はともかく、未来職安の話をしているという一点で意味がありましたが、今回はどうでもいいことを、わたし(よう)が空回りしながら喋っています。

いんよう!概要欄

<言及された固有名詞>
キャラクター…峰不二子/ゆいちゃん/ういちゃん/カルシファー/荒れ地の魔女
歌手…宇多田ヒカル
アニメ…けいおん!
映画…ハウルの動く城

目次
1. 本題は突然に
2. 萌えとはなにか。なんだと思う?
3. 欠点と欠落。萌えキャラじゃないとダメ
4. うさ耳は萌えか?あざとさか?
5. 萌えとストーリー性を切り離すことは可能か
6. ヤ先生、メイドカフェへ行く~萌えに納得する
7. 作為、ダメゼッタイ
8. ヤ先生のリアクション芸がおもしろいぞ

いっちーvs.萌え スタートです

 



1. 本題は突然に

スタート~1分38秒

よう:あのねえ、すげえ大事なこと言い忘れてたんだけど。話していいかな。
いん:(笑) 始まりました。どうぞ。よろしくお願いします。

「日々の小さな出来事、一瞬一瞬に価値がある」のが二次元における「日常系」の大事なところという話を前にした。その時にヤ先生から「かわいい女の子がやってるんだから非日常ではないか」と聞かれた気がする。それに対して「ファンタジーだから」と答えたけれど、もう一つ大事な要素があって、それは「萌え」である(よう)。




2. 萌えとはなにか。なんだと思う?

1分45秒~5分20秒

問いかけられたヤ先生、動揺してイヤホンを落とす。そののち「萌えはかわいいこと」と答える。ここからよう先輩のたたみかけるような力説。

女性がブサイクな犬を見て「カワイイ」と言ったり、ヘンなキャラを見て「カワイイ」と言う。「あれが萌えなんじゃねえか」。「完璧」に萌えはない。不完全なものを、不完全であるがゆえに愛する気持ちが萌えである。(よう)

歌も演技もトークも完璧なのはアイドルではなく、一流のなにか別のもの。だから宇多田ヒカルはミュージシャンとしてアイドルだったことはない。トークでの突然のタメ口感などの萌え要素はあるけれど、ミュージシャンとしては完成されているから萌えはない。(よう)

元気バカ、ツンデレ、ヤンデレなどのジャンルや属性は、世の中のまっとうな常識から照らし合わせると欠点である。「だからいいんだろおおおっ」と力強く言うのが萌えである。(よう)




3. 欠点と欠落。萌えキャラじゃないとダメ

5分20秒~11分4秒

不完全なキャラクターたちが普段生きてる姿がかわいいし、価値がある。人生自体、存在自体に価値があるってことを通して自分も生きてていいかなって思える。欠点があるがゆえに萌えられるということは、同時に自分を許す行為でもある(よう)。

だから今の日常系は萌えキャラじゃないとダメ。キャラクターを全肯定して、その欠点があるからこそいいんじゃないかという意味でも全肯定していて、それを通して癒される。自分も欠点があるけどがんばって生きてこうぜ、みたいな(よう)。

さらに「以前は誰かが座っていた席」などのそこにあるべきものがない、と言う切ない気持ちも萌えにつながっている。「欠点」だけでなく「欠落」。人格から欠落しているものを愛する。自分にはもうなくなってしまった中高生時代、というのも萌えの一環。今の日常系には、そういうものが複合技として一緒になっている(よう)。

欠点があることを肯定するっていうのが大事。「だめだなーー。だめなとこかわいいなーー」っていう。だめだからそこ直すようにがんばろうぜって言われたらつらい。元気バカな子には朝起きれないっていうプレイをしてほしい。けいおん!のゆいちゃんは、かならず妹のういちゃんに起こされる。妹に起こされるってだめさ加減がいい(よう)。




4. うさ耳は萌えか?あざとさか?

11分4秒~13分20秒

本当に天然でやってたら萌え。明らかに似合わないものをTPOをわきまえずに付けるのは欠点だから。でも作為的にやってるのはわかるから、それはネタとしての面白さ。欠点を自己プロデュースしてわざとやっているのはあざといだけ(よう)。

アニメのキャラに欠点をのっけてくるのは作り手だから、あざといのは作り手であってキャラではない。キャラは天然だから(よう)。




5. 萌えとストーリー性を切り離すことは可能か。

13分20秒~14分46秒

すぐれたストーリーテラーはキャラに萌えの要素を入れるか(いん)

キャラクターを立体的に描こうとすれば萌えられるのでは。だれもが欠点的なものをもっているから(よう)

思ったより深いなー。萌えは広い感覚ですね。(いん)

広い。定義するのは難しい。その人が萌えるって言ったら、それはその人の中で萌えである(よう)




6. ヤ先生、メイドカフェへ行く~萌えに納得する

14分54秒~23分15秒

8年くらい前に、寿司屋の大将と一緒にメイドカフェに行って、「萌え萌えきゅんきゅん」をやった。その時これは萌えではないと思ったが、今の話を聞いていると「萌え萌えきゅんきゅん」をやられている状況はとてつもない欠落だったかもしれない(いん)。

萌えを定義する必要はないかもしれないけど、職業として定義したくなる。もっとも広く一般化して定義すると「欠落を愛する心の動き」になるが、「シチュエーションに萌える」ということもある。メイドさんたちが天然かつ本気でやってくれている、と信じることにしている人もいるだろうし、逆にあざとく仕事としてやっていて、裏で「今日の客気持ち悪い」「今日の客うざい」と言っているギャップも含めて想像して萌えている人もいると思う。そのとらえ方は人によるから「その人が萌えられればそれが萌え」である(よう)。

ん:萌え、深いですね。そして日常系を語るうえでは絶対必要だという気がしてきましたよ。
よう:そうだよ
いん:だって日常って欠落まみれですからね
よう:そうだね、まあ人間自体が欠落まみれだからね

「萌え」は成功物語が信じられた高度成長期には必要なかった。個人の日常にも価値があるという意識が高まってきたあとにバブルがはじけ、個々の人生の価値は世の中ではなくて自分が決める、となって「大きな物語」から小さいものを好きになるという流れがあった。2000年代というのはそういうのが一番はやっていたのかなと思う。社会学的思想的に研究もされているが、学術的な面ではなくて生きてきた実感としてある(よう)。

よう:漫画をよんでいても、心がときめくキャラクターの属性が変わったりしない?
いん:変わりますね。変わりますよ。変わる変わる。こないだ「ハウルの動く城」見てたんですけど、魔力を失った荒れ地の魔女がすっかりおばあちゃんになって、カルシファーを見て「あらかわいい」と言うところでぼく泣きましたからね。
よう:(笑)だいぶ、だいぶだねえ。
いん:ん?んふふふ(笑)「だいぶだねえ」。なかなか長い人生の中で言われる機会ないですけど。だいぶですだいぶだいぶ。あれは立派な萌えでしたよ。僕が一番欠落していたかもしれない。
よう:そこにそういう気持ちを感じるんだね
いん:なんかぐっときてしまった。ほら、そろそろあれですよ。次回に。んふふふ。
よう:え?
いん:ちょうど20分くらい。たったし…(笑)また自分の欠落を話してしまったな




7. 作為、ダメゼッタイ

23分20秒~最後

一人称語りをする主人公には萌えにくい。定点カメラが一番萌えられる。作為がないから。キャラも映ってることを意識していないから素が出る。だからだらしない格好でお菓子食べたりしていると「だらしねえなあコイツ」でダイレクトに萌えである。作為に対する抵抗は強い。作為があったら全部欠落じゃなくなる。天然が前提(よう)。

よう:だってツンデレキャラクターはツンデレをやろうと思ってるわけじゃなくて、そういう風にしか他人と接せられないからいいわけじゃん
いん:そうでしょうね。ぼくそんなにツンデレキャラクターがいいと思ったことないんだけど
よう:ま、いっちー自体がツンデレだからね。
いん:なんですか?(笑)
よう:はい、じゃ今週はここまでです。
いん:(笑) つらい。剛腕。
よう:はい、どうもありがとうございましたー




8. ヤ先生のリアクション芸がおもしろいぞ

・ちょっと待った、んーなるほど、んーへええほおお、なるほどんんんんん?んんんんんんん、ちょっと待ってどういうことだ?うん。(2分44秒~51秒)
・ほう!ほっほう。ふーーーーーん(4分58秒~5分3秒)
・ほう!ほおおん。ほおおおおおおん(24分6秒~12秒)
・ん?ちょっと、高度で、言ってる意味がよくわかんないすけどなんですかそれは(24分25秒)
・その高度なテクニックは、ぼくは同じヒューマンとは思えないんすけどなんですかそれは(24分36秒)
・ん?うん。常識?じょ、常識?定点カメラ萌えが常識?(24分43秒)





以下感想***************************

・第0回も第1回も直接ヤ先生がじかに「かわいいキャラがいるなら非日常では」発言をしたのは確認できなかったけれど、よう先輩は「あの時代には戻れない」「そもそもそんな時代はなかった」というやりとりなどに引っかかっていたのだろうな、と推測。そして萌えについてこんなに考察を深めるよう先輩は、誰かと話しながら考えたのか、それともひとりで黙々と考えたのだろうか。おもしろすごい。

・萌え、という言葉が出たときに最初は鼻でふふふっと笑っていたヤ先生が、だんだん意図を理解していくときに挟んでいく質問や感想が話を大きく転がす。話を聞きながら高速で回転する先生の頭が垣間見えるやりとりがたまらん。


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