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歩くということ 2021.4.6 後編/興津宿~由比宿

宗像神社を通りすぎると、すぐに見えてきた、見えてきた、かの有名な伏見たいやき!

以前訪れたときには旧街道沿いにあった昔ながらの木造のちいさなお店だったけれど、火事に見舞われてしまったと聞いていた。あたらしいお店に生まれ変わっていた。ところがこの日はお休みで残念!子供の頃、泳げたいやきくん何回歌ったことか!


まいにち まいにち ぼくらは てっぱんの

うえでやかれて いやになっちゃうよ

あるあさ ぼくは みせのおじさんと

けんかして うみに にげこんだのさ

はじめて およいだ うみのそこ

とっても きもちが いいもんだ

おなかの アンコがおもいけど

うみは ひろいぜ こころがはずむ


およげたいやきくん、子供のときはまるでたいやきに生まれ変わったような気持ちで歌ってたなぁ。最後の最後に、

「おじさん、つばをのみこんで ぼくをうまそうに たべたのさ」

って、ね、子供心にとっても怖くてね。なんで食べられちゃうんだろ?なんて不思議に思いながら、自分がたいやきほほばりながら、母さんに、たいやき食べていいの?なんて。


改めてこの歌詞歌ったら、結末が悲しすぎるよね。たいやき=ぼくら。おじさん=日本社会。だよねきっと。社会とけんかして、自由な海ににげこんで一瞬心が弾んでも、結局また、社会につかまって、最後にのみこまれちゃう。日本社会の生きづらさを歌った唄としか思えない。そんな社会に食われるもんかっ!作詞者はそう願ったに違いない。この勝手な解釈はあくまでも自分の想像だけれど、ひろいうみで自由におよぎ続けて生きたいよね。いや、そう生きると願えば、そう生きられる気がするな。


伏見のたいやきを過ぎると、目の前に見えてくるのが、ひろ~い駿河湾なんだな~。つくり話しみたいだけど、ほんとにたいやきくんが逃げた海がすぐそこにあるよ(笑)

あ~海だ~ひろ!いんなぁ~海は!脚がしんどくてしかめっ面になった顔一面に春の潮風を浴びながらまた、前を向いて一歩一歩歩いた。興津を超えると、「さった峠」という東海道の三大難所がある。ほんとはこっちを行かなきゃ東海道を歩いたことにならない。こっちに行くか、バイパス行っちゃうか。あ~むりむり、悩むことなく、バイパス選択!(笑)

見る景色ががらりと変わり、トラックがびゅんびゅん走るバイパスをひたすら歩いていたら、とたんにパンパンになった脚が前に進まない。一歩足をだすのに、おりゃ!

こりゃ~いかん。いかんよ。バイパス沿いに座り込み、空をみあげると、空一面にうろこ雲。行くべきさった峠の姿を目の前に、その峠のてっぺんに、こんもりと丸い形の巨木が見える。その巨木の上を、さぁ~と走るうろこ雲のなんと美しいこと。その美しさにみとれていたらうっかり、もう夕暮れ時だ。

宿まであと2km。歩きはじめてから気が付いた。休みすぎて身体が冷えて、脚が石みたいになってる。ほんとに、ド素人だから、気が付いたときには遅い。少しばかり脚が痛くても10分以上休んじゃだめなことくらい知っとけ!自分が嫌になった。由比駅まであと2kmの看板が見えて、なんとかなるかと思いきや、ここからの2kmが、とてつもなく辛かった。まさに、石を動かして前に進む感じ。由比駅までの、旧街道はもう薄暗く、誰もいない。

最後は、ウシガエルのように、足をひきずりながら、由比宿にたどり着いた。

見晴旅館の玄関を入ると、おかみさんが優しい声で迎えてくれた。あ~よかった。一気に身体の力が抜けて、安心感に包まれた。ところが、部屋にいくまでの階段が登れない。ほんとに足が上がらない。しばし休息し、ようやくなんとか階段を上がり、部屋に辿り着いた。もう、何も考えられず、とにかく眠りたかった。風呂に入り、布団に入った。これで何とかなる。と思った。

ところが、眠れない、それどころか、身体が興奮しているのか身体が妙に熱い。身体がかっかと燃えるように熱くなってきた。体温計ったら、39度オーバー。

なんてこった!これじゃ、初日で、ギブアップかよ!もう、情けなくて涙がでそうだった。

威勢よく家を出たのに、初日から熱出したなんて、かっこ悪くてそんなこと嫁に言えるか!

あたまの中がぐるんぐるんしながら、身体中の痛さと苦しさに、布団の中で丸くなり、あとは神様に委ねるしかない。と思った。

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