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たねの輪 小麦収穫祭
2021年11月7日の小麦の種まきから211日目。収穫の日がやってきた。あの小さな小さな種が発芽し、里山の厳しい寒さ、そして嵐のような風や雨を乗り越えて、黄金色に燦々と輝くその姿は、何とも言えないほど、逞しく美しい。天に向かう麦穂はどこまでもまっすぐだ。この土地に注ぐ光、雨、風、が一粒の種を育み、豊かな実りとなる。命を育むこの地に感謝の気持ちをこめて収穫させていただきました。
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小麦の穂からこぼれる実は、収穫を待ちに待っていたかのように茶褐色に色づいている。小麦の実は、成熟してくると緑から褐色に移り変わり、早すぎても、遅すぎても良くなく、収穫のタイミングがとっても難しい。太陽の陽ざし、気温、雨によって、そのタイミングは日々変わっていく。陽射しが増した先週一週間で、一気に褐色になったこの実が収穫を待ちわびていたことを物語っている。
各地から集ってくれた、たねの輪メンバー5人で、鎌を片手に収穫を始めた。穂を片手に掴み、鎌を入れる。サクッサクッと心地よい音を立てながらせっせと刈り取る。片手でまとまるくらいの束を二つ作り、バッテン印になるように畑におく。そして、二つの束を一緒に麻ひもで縛る。実ったすべての小麦をこうする。小麦の収穫を初めて体験し、その作業の大変さに驚いた。この作業をすべてひとの手を使って収穫していたらどれだけの時間と労力がかかることか。小麦の実を脱穀する前の乾燥のため棚に吊り下げられるようにこの形にする必要があるのだ。最近あまり見なくなったが、お米の収穫後に田んぼで稲穂を吊り下げていた光景を子供の頃に良く見たことを思い出す。
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刈り取りを始めてしばらくすると、バインダーなる収穫マシンが登場。穂を次から次に刈り取ってくれるだけでなく、なんと、同時に穂を束ねてくれるのだ。一定の量の穂を刈り取ると、穂の束をガシャン、ガシャンと音がして紐で縛り、マシンからポイッ!ポイッ!と束ねられた穂が次から次に横たわっていく。収穫の苦労が生み出したひとの知恵の賜物はすごい!このマシンがいつから登場したのかは分からないが、ひとの歴史のほとんどの期間はずっとこの手作業で、この命の糧を収穫してきたのだと思うと先人たちの辛抱強さには本当に頭がさがる思いだ。
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それでも、マシンは完璧ではなく、刈り取れなかった穂や、束ねられない穂を手作業で、一本一本まとめ束ねていく。マシンとひとの手の絶妙なバランスがとても心地よく収穫が進んでいく。マシンだけでは味気なく、ひとの手だけではかなり大変だ。畑に横たわる麦穂は、まるでこの時を待っていたかのようにあちらこちらでしばしの休息をとっているかのようだった。
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その横たわる穂を一束づつ集める。このところの陽射しでずいぶん乾燥しているのだろう、軽々と肩に担ぎ上げたその藁の香りが、作業で疲れた身体を癒してくれる。穂をせっせと集めると、軽トラが藁であっという間にいっぱいになった。この藁のベットに横たわったらどれほど気持ちが良いだろう。
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収穫した麦穂をビニールハウスに運び、一束ずつ3段の竹棚にせっせと次から次へと跨がせる。その作業中、あっそれは鳥が作った巣だよ。まったくそれに気が付かなかった自分に教えてくれたのは、僕の畑の師匠だ。なんと、麦穂に巣をこしらえているところを可哀そうに刈り取られてしまったのだ。両手にのるほどの小さな巣は、ふかふかのベッドのように柔らかい。よく見ると枯草をぐるぐる巻きにして何重にも重ね合わせてある。その緻密さには驚かされる。生き物の本能は、生きること、命を繋ぐということに自然と向かうからこそ、これほどの芸術品が生まれるのだろうと思う。鳥さんにしてみれば、虫さんがいっぱいいる畑に巣をこしらえようとしたのだろう。ほんとに申し訳なかったが、こんどは安心して住める場所に巣をこしらえて欲しいな。
丸2日かけて収穫したすべての麦穂を竹棚にかけ終えると、種まきから共にこの時を待っていた、たねの輪メンバーみんなの顔から、何とも心地が良い笑顔が溢れた。
これから待っている未知の世界に思いを馳せ、メンバーと夢を語り合う。夢はちいさくても、でっかくても、なくたって、どっちでもいい。ただそんな時間を集まるみんなと共有できることが、自分にとって貴重でとってもありがたい。
さて、数週間後には脱穀という大仕事が待っている。
無事にその日を迎えられますように。
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