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歩くということ 2021.4.20 品川宿~日本橋宿
この日の朝、目覚めたら、あっ俺もこの地球の一部分だって、自然と全身がそう感じて、そうしたら、なぜだか子供のように大泣きしてしまった。大の大人がとっても恥ずかしいが。
この旅のあいだ、歩くペースで目に入ってきたすべてのものが美しく見えた。ひとも、生き物も、自然も、ひとがつくったものも、それぞれに存在しているだけで充分に美しい。そのことに気が付かされたことが、きっと嬉しかったのだ。
身体も足もボロボロだけど、あと残り15キロ弱でゴールだと思うとほんとに嬉しい!
ゴールすればもう歩かなくていい、タクシーに乗れる幸せ(笑)を妄想しつつ大森海岸駅のビジネスホテルで最終日の記念撮影をしてさあ出発!
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大森を歩きはじめてすぐに目に入ってきたのが、鈴ケ森刑場跡。看板に書かれていたことを読んだら背筋がぞっとするようなことばかりで、朝から気分が相当凹んだ。220年くらいの間にこの場所で、処刑されたひとたちが、10万人とも20万人とも。江戸の入口で、通行人がもっとも多い旧東海道沿いのこの場所に刑場をつくったのも、ひとびとへの見せしめ、警告のためだったらしい。それにしても、年間1,000人近いひとたちがこの場所で。その現場を目の前にすると、またしても涙が溢れてやまないのだった。
罪のないひとたちが、理由もなく殺されてしまうのは、今の世界でも同じ。ひとはいつまでこんなことを続けるのだろう。ひとをそうさせてしまうものは何なのだろうか。憎しみ、恐れ、欲、権力、誇り、名誉、何かを信じ突き進まなければならなくなってしまうひとの性、ほんとうに恐ろしい。
みんな、ほんとうは存在しているだけで充分なはずなのに。
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戦争のない安寧な世の中に暮らしてきたものが言えることではないかもしれないが、どんなひとでも自分を取りもどすすべがあれば、こんなことが続く世界が終わってくれるのではないかと、そう願うばかりだ。
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旅日記のつもりが、ちょっとそれてしまった。大森から品川宿までの旧東海道は、都会を感じさせない、ひとの暮らしが今もそのまま残っている。歴史ある神社や寺院がこんなにもたくさんあるのかと驚く。そのまま残っている古民家を改装して営んでいる蕎麦屋、雑貨店。江戸時代からあるような下駄屋には“たばこ”の文字が。こんな光景が品川に残っているなんて知らなかったから、ほんとに嬉しくなった。
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この商店街を抜けると、風景が突然都会になる。JRや新幹線が何車線も連なる線路に架かる跨線橋を歩くと、右側にいつも目にしている品川駅が見えてきた!静岡から新幹線に乗ったら、たった50分で着いてしまう品川まで、いったい何日かかったのだろう。のらりくらりと、11日もかかってしまった(笑)さあ、日本橋まであと6キロだ!
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ここからは、国道15号線をひたすら北上すれば日本橋。歩いているのは苦しいけど、とっても楽しい。足の痛みと、楽しさと、ゴールしたい気持ちと、もっと歩いていたい気持ちと、いろんな気持ちを楽しみながら歩いた。
銀座三越が見えたときには、もう嬉しくって、嬉しくって、満面の笑顔でスタスタ歩いた。
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4月20日火曜日14時40分、日本橋に到着した。日本橋の中央に佇む麒麟像を見上げると、雲ひとつない青空がとっても眩しい。日本橋の袂に座り込み、旅の記憶と共に陽が沈むまでゆっくり過ごした時間はとても幸せだった。
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歩くということは、新たな自分をみつけること
歩くということは、過去の自分を取り戻すこと
歩くということは、今の自分を生きること
そう言葉にすることができたことはこれからの人生の大きな糧となった。
最後に、いまさらだが、静岡から東京まで歩きたいという自分の我儘を聞いてくれ、あれこれ心配もし、快く送り出してくれた妻に感謝したい。
お読みくださったみなさま、長々とひとり言のような拙い旅日記にお付き合いくださり、ほんとうにありがとうございました。
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