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歩くということ 2021.4.13 小田原宿~大磯宿

静岡を出発してから8日目の朝、朝から小雨が降っていた。雨だから今日は休んじゃおうかな~なんて思ったりしたが、歩かないとやることもないしな。と、小雨のなか、歩きはじめた。

小田原を出てしばらくすると、酒匂川を渡る手前に、一本松がありその下に新田義貞の首塚がある。後醍醐天皇の勅命によって官軍の総大将に命じられた新田義貞は鎌倉幕府を滅亡に導いた。この酒匂宿周辺は、壇ノ浦の戦いで平家に勝利した源義経が、源頼朝に面会するために、平宗盛を引き連れてこの酒匂宿で、面会の許可を待った場所として知られている。

平家を滅ぼした義経が熱望した頼朝への面会は、叶えられることなく、その一生を終えたという。まさに、鎌倉幕府の誕生と終焉が凝縮されたような地だ。

その酒匂川を目の前にすると、その風景はこれまで歩いてきた土地の風景と、一線を画す。違う土地に足を踏み入れたという感覚がある。義経にとって、この酒匂川越しに見る鎌倉までのたったの20kmがどれほど遠かったか、その無念と悲しみの大きさは想像することすらできない。

酒匂川を超えると、国道一号線沿いに逞しい一本松が今なお、ところどころにある。歩き疲れた身体には、その松の根元に座り込み、寄りかかって休憩するのが一番贅沢な時間だ。

このころになると休憩の仕方も慣れてきたものだ。松の幹肌がなんとも気持ちが良い。その肌をじっくり眺めたことなどなかったけれど、よくよく見ると、亀の甲羅のような模様ひとつひとつの表情がぜんぶそれぞれ違っていてそれがなんとも言えない味わいがある。肌ざわりはごつごつしているけれど、いつまでも触っていたくなるほど心地よく愛おしい。


国府津駅を通りすぎ二宮あたりまできたところに、不動明王の石仏があり、“従是大山道” の文字が刻まれている。大山道とは、調べてみると、江戸から相模国大山の山頂にある大山寺に登拝する参詣者が通った道のこと。とある。なるほど、ここから大山まで登頂するルートがありその入口に不道明王の石仏があるのだ。富士山の山岳信仰と同じように、ここ大山にも山岳信仰があり、農民や庶民にとってなくてはならない信仰の道だったのだ。


二宮を過ぎると急に雨足が強くなり始めた。まだ昼過ぎだったけれどこの雨の中を歩き続けるのは、ちときついな。宿を探して、今日は早めに上がるとするか。これぞ、天の恵み!

雨を格好の言い訳に、この日は久しぶりにゆっくり休むことにした。


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