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歩くということ 2021.4.8後編/吉原宿~沼津宿

田子の浦港を超え、JR吉原駅を超えるとショートカットしちゃった東海道に合流する。駿河湾と並行して一本道の旧道がひたすらまっすぐ続く。両脇には新旧様々な住宅が立ち並び、ひとの暮らしを感じることができる。今朝から殺風景な道ばかり歩いてきたし、お腹も空いたし、足は痛いし、ほっと一息いれたいなぁと思っていたら、右手に英国風の国旗を掲げているパン屋さんを見つけた!しかも、お店の前にベンチがあって隣には南国風のヤシの木まであるなんて!英国風の国旗だけど、BAKERY HOLO-HOLOというお店の名前といい、ハワイ風の演出(笑)ここに座ってパン食べてって~ って呼ばれてるみたい。このパン屋さん、ほんとに救いの神様でした。東海道を歩きながら大好きなパンをお腹いっぱい食べられるなんて、幸せ~。


さあ、今日の歩きはこっから勝負だ。この旧東海道をしばらくまっすぐ歩き、JR片浜駅を超えた辺りから、海岸線沿いに松の木が連なる姿が見えてきた。東海道から海岸へ抜ける小道を通ると、松が生い茂る原生林が目の前に現れた。千本松原だ。約10km続くこの千本松原を抜ければ、今日の目的地沼津に辿り着く。この時点で既に2時。やばい!パン屋さんでくつろぎ過ぎた!午前中は左足がつって、こんどは、右足が。筋肉痛にも、足がつるのにも慣れてきた。身体ってすごいなあ。午前中あれほど痛かった足も、痛みが一巡りして循環したら痛みが和らいできた。千本松原をひたすら歩く。松原を歩くことがこれほど気持ち良いものだとは思わなかった。

一本たりとも同じ形の松はない。海の潮風、強風に耐え抜いて地中から真っ直ぐに伸び、傾き、それでも真っ直ぐに伸びようとし、傾き、を何十年も続けている姿は、ひたすら逞しい。一本一本の松がすぐそこに生きている。千本どころではない、おそらく何万本、何十万本の松の命がこの場所にある。松の木の根に寄りかかり空を見上げる。どこまでも心地が良い。

こんなにもたくさんの松を誰が植えたんだろうって気になって調べてみた。ネットってすごいですね。何でも調べられて!

もともとは塩害を防ぐためにこの地域の農民が植えたものであったらしい。ところが1580年に武田勝頼率いる武田勢が駿河に攻め入ったときに合戦の邪魔になるとすべての松を切り倒してしまったそうだ。その結果、作物が育たず大飢饉となり、それに心を痛めた山城延暦寺の乗運上人の弟、長円が、民を救うために願いを唱えながら松を植え続け、5年の歳月をかけて今の千本松原の由来となった。とある。長円さんすごいですね!また、長円は増誉上人となり、農民たちが彼をたたえて開いた庵が沼津市出口町にある乗運寺だそう。このお寺には千本松原を愛した若山牧水も眠っているとのことだ。乗運寺にぜひ行ってみたい。

 

いつの時代も、破壊と再生が繰り返されている。この地球でひとが繰り返す破壊がなくなることを願いたいが、それがある限り、長円さんが証明したように再生の力が勝ることを信じたい。

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沼津の海、千本浜にでると目の前に雄大な駿河湾が広がる。コンクリートの堤防に寝転がり、空を見上げると微かに虹がかかり、雲が勢いよく流れてあっという間に空の風景が変わる。

海の潮風が気持ち良すぎてしばらく眠りこけてしまったようだ。気が付くと、太陽が沈みかけ、あたりがうす暗い。もう5時、こりゃ大変!今日の宿を探さなきゃ!

寝たらダメだって~!またまた動かなくなった重い足を引きずりながら、沼津駅方面に向かった。ここでも一里塚に助けられ、携帯電話のネットに助けられ、今日も宿までなんとか辿り着くことができた。感謝!

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