日本ダイエット【毎週ショートショートnote】
武士は食わねど高楊枝。そんな日本人の見栄意識を象徴するダイエットが注目を集めている。
食事を楽しむ代わりに、高楊枝すなわち高級食器や食卓小物でプチ贅沢を楽しむものだ。
空の食器を並べる事で食後に似た疑似満足を味わい、箱庭感覚でセッティング、SNSに投稿する。食欲が食器の購買意欲や収集熱、承認欲求に振り替えられるため、拒食型でありながらストレスが少なく、成功率も高いという。
和の粋を極めた伝統工芸のテーブルメイクが特に人気で、美濃・瀬戸・有田の三大陶磁器に始まり、螺鈿や切子、金蒔絵といった豪奢な品から、南部鉄器や関鍛冶、曲げわっぱなど素朴な機能美を追求した物まで幅広い。廉価な海外品に押されていた消費が戻り、職人志望が増えて業界も活気づいた。
顧客流出に慌てた従来のダイエット業界は、『使わない食器を揃えるなんて虚飾ダイエットだ』『据え膳食わぬは恥』などと、重箱の隅を楊枝でほじくるネガティブキャンペーンを展開している。
副題:食器の美