見出し画像

タイムスリップコップ【毎週ショートショートnote】

『タイムスリップはじめました。 1コップ✕✕✕円(時価)』
繁華街の裏通り、ぼったくりくさいバーの表に、うさんくさいチラシが貼ってある。
「シャチョーさんサービスするよ~」
ピンクのハッピの客引きが時代遅れなセリフと共に差し出したのは、そこらのコンビニで買った様なカップ酒だった。
「ワンコップ/時関ときぜき?」
「ワンコップ1時間ね。タイムサービス」

洒落しゃれか誤植か微妙だが、明らかなパクり商品。飲んだら警察にパクられるやつじゃないだろうか。

「毎度あり~!」
あまりの怪しさにうっかり買ってしまった。
さっさと証拠隠滅するに限る。ひと息にあおった途端、頭にズキッと衝撃が――


――1時間後。
路上で目覚めると、手には空のワンコップ。
何の事はない、一気飲みで酔っ払っただけだった。
時間を無駄にしたな。腹いせに蹴っ飛ばしたところで聞き覚えのある声。
「毎度あり~!」
そして蹴ったコップの延長線上には、見覚えのある後頭部が――。



副題:タイムスリップはじめました。