サラダバス【毎週ショートショートnote】

８：３１AMのスクランブルに横断待ちのゆで卵が並んでいる。
レタス色に重なった雲を透かして完熟トマトがゆっくり昇る。放射する光は滴りそうなシグナルレッドだから、今日のキュリー値はいつもより低いのかも知れない。
ベーコンとハムで迷い、停留所のメニューを探る。シーザー、イタリアン、和風オニオン――気分が良いからちょっと奮発しようか。海岸行きのボタンをフォークで押すと、粒コショウの利いたパストラミが発券機から吐き出されてくる。

粉チーズで化粧したクルトン・ビルを縫って、二階建てのスカイバスがスクランブルへ滑り込む。オールグリーンの信号機。交差するロメインとフリル。白線で横断された半熟の黄身。待ち時間にこんがり焼けたパストラミを片手に二階席へ。盛り付けられた乗客の仲間入りをして、ルーフから降り注ぐドレッシングを浴びる。
隠し味は煽情的なストライプベリー・トラフィックジャム。
出発進行、さあ召し上がれ。

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副題：Salad Bus４２８