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イライラする挨拶代わり【毎週ショートショートnote】

椅子の背もたれへ逆向きに寄っ掛かって担当作家が棒飴を齧る。
赤白の縞々で先がステッキみたいに曲がったメルヘンなやつ。ガリガリガリガリ絶対歯に悪そうだ。
こいつは煮詰まると食に走る。脳味噌が食うんだと言って消費カロリーの何倍摂取しながらがりがりに痩せてる。飴なんぞガリガリしてないでカリカリ書け締切前だぞ。キレるだけエネルギーの無駄なので無言の抵抗で缶ビールを一気、テーブルの横幅が空き缶で埋まる。
「肝臓壊すよ」
「お前の腎臓が先だ」
挨拶代わりに叩いてられるうちはまだいい。もう天辺だぞ何で俺まで付き合って徹夜しなきゃならない。

ガリガリが止んでガサガサが始まる。今度はチョコか末期だな。俺は甘い物が嫌いなので臭いだけでイラつく、飴のイチゴバニラと融合して吐きそうだ。
なのにこいつが食ってると、なぜか全部美味そうに見える。原因は考えるまでもないんだが。


――どうせ進まないなら。
甘ったるい色の唇に、イライラが半分ムラムラになってる。


副題:寝ずの記