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毒吐く南瓜【毎週ショートショートnote】
「えぇ全く辛抱ならぬ!」
変わり果てた町の有様に、邪狗は憤慨した。
西国は蘭丹より来りし南瓜の洋魔である。
神無の月末に日ノ本を襲撃、『虜捕り』の魔術で民草を操り、貢物を巻き上げるはずが、流行り病の虎狼那とやらで数年寝越した間に、風向きが違ってしまったのだ。
魔物どころか魔除けの扱い。喰えば病を遠ざけ運が付くと、民草どもは邪狗の眷属を捕らえ、捌いて料理に使う始末である。
その実は己が二月ばかりも寝坊し、冬至の最中に顔を出したゆえだが、そうとは知らぬ邪狗は怒り、洋魔の大先達たる妖狐玉藻の化身と云う、那須の殺生石に加勢を請うた。
「茄子の御前よ、力を貸し給え!」
生憎と西国の洋魔は漢字が苦手であった。
かくして殺生石の力を受けた邪狗と眷属の南瓜らは、霜毒を吐く茄子に変じ、喰う者の身体を著しく冷やす様になった。
民草は『秋茄子は嫁に食わすな』の諺を改めて肝に銘じたのである。
副題:令和萬聖節霊異記