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フシギドライバー【毎週ショートショートnote】

地球の地軸を調整するドライバーが誕生したのは、人間歴のAD2490年だとされている。
『フシギドライバー』というそのシステムの呼称が、開発者の名前や研究機関の所在か、運用年の語呂合わせか、謎に包まれた原理を指しての命名なのかは定かでない。
いずれにせよ公益と平等の理念に基づいて地軸の傾きは修正、公転面に対して垂直に立て直された。

おかげで昼夜の長さは均等になり、半球の南北差も四季の変化に伴う災害も消滅、風はやんで大気の状態は安定した。極地では冬と夏が交互に到来し、氷が融けて海面が上昇、陸地の半分が沈んで水不足と砂漠化は統計上解消された。
動かない雲が空を覆い、酷暑も温暖化問題も解決した。熱エネルギーの伝播は滞り、地球は物理的に平等に冷え込んだ。
ネジの緩んだ地軸は高速自転を続け、地球の一日は飛躍的に短く、相対的に生物の寿命は大幅に延びた。
やがて公転軸を外れた地球は太陽系を脱出、宇宙を無軌道に漂う46億年の棺桶となった。




副題:地獄への道は善意で舗装されている