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タイムスリップコップ【毎週ショートショートnote】

――ガラハッドは聖杯に何を願ったか?
研究家の間で長らくタブーにされてきた疑問だという。

サー・ガラハッドはアーサー王の円卓の騎士にして、聖杯伝説の中心人物の一人である。
数多の困難と仲間の犠牲を越え、ガラハッドが聖杯を手にし、正しい願いを捧げて探索の旅は終わりを迎えるが、果たしてガラハッドは聖杯に何を願ったのか。

聖杯探索の目的がブリタニアのぺラム王の快癒と国の平安だから、むろんそう願ったと解釈する事はできる。
だがその後、ガラハッドの死と共に聖杯は消え、円卓の騎士は分裂し争い、探索を命じたアーサー王は、身内の不義や裏切りに斃れる。

アーサー王の円卓のうち、十三番目のユダの席を与えられたガラハッド。
誰より偉大にして高潔と評された彼は、相次ぐ醜聞や無謀な探索が生んだ損失、そしてそれを命じた王に、本当に最後まで忠実であったろうか?


もし、この終焉が彼の願いの結果ならば。
今も答えは出ぬまま、幻の杯は時を超えて語り継がれている。



副題:伝説の功罪