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男子宝石【毎週ショートショートnote】

発見から100年の節目を迎えた2027年、スミソニアン博物館で水晶髑髏の記念展示が催された。
別名をヘッジススカルと言う、水晶で作られた頭蓋骨だ。古代遺跡から発掘されたオーパーツとして世の話題をさらったが、その後の鑑定により後世に作られた偽物と断定、オカルティズムの表舞台から姿を消した。

展示最終日、閉館間際の特別室に一人の少女が佇んでいた。
アンナと名乗る少女は、ガラスケースに収められた髑髏を見つめて動こうとしなかった。
髑髏の発見者とされるアンナ=ヘッジは既に故人で、ヘッジ家は彼女の没後、髑髏をスミソニアンに寄贈していた。本物であろうはずがない。

「閉館のお時間です、お客様」
たまりかねた係員が声を掛けた時、髑髏はアンナの手にあった。
その現象の全てを説明する事は、恐らく誰にも不可能だろう。髑髏から発する虹光の中で彼らは微笑み合い、接吻を交わした。

――光が消えた後、少女の姿は影もなく、砕けた水晶は骨灰の様に煤んでいた。



副題:水晶密葬