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乾燥ブンブン部【毎週ショートショートnote】

コガネムシが本当に金持ちかは分からないが、リアルに倉は建ちそうだ。
現在私の前には、専用乾燥機でぶんぶん回した後、部品分解された黄金虫のミイラが新聞紙の上で組み立てを待っている。

法隆寺所蔵の玉虫厨子は、過去に幾度か修繕や複製が行われてきた。我が町でも町おこしのイベントに企画されたが、まず表面を飾るタマムシを集めるのが難しい。
都市開発や気候変動で激減した本家タマムシだけではまかなえず、コガネムシやカナブンなど光る甲虫の羽を全国から募った中に、この黄金虫が紛れ込んでいた。

黄金虫と言えば、ポーの小説に登場する財宝の道しるべ。日本ではブンブンことコガネムシの別名だが、原文の黄金虫は創作で、ドクロに似た斑点模様となっている。
羽にペンキで描いたドクロを送り主の遊び心と解釈し、目立たない部分に使わせてもらった。


後日、経緯をコラムに載せた町内新聞が異例の発行部数を記録、全国紙にも取り上げられ観光客が激増、経済効果は兆に達した。



副題:掌編拾遺物語~黄金虫ぶんぶんの羽にて厨子造る事