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ある日のHND-KMQ
2022年夏のある日
わたしはいつもの窓側K席に着いていた。
隣の通路側H席には男性。60歳前後だろうか。
ドアが閉まるまでまだ時間があり、ぼんやり窓の外を眺めていた。
すると、隣席男性の前席の女性が立ち上がり、わたしに向かってこう言った。
「私達夫婦なんです。席を替わってあげてもいいですよ」
わが耳を疑った。なにを言っているのだ、このBBA中年女性は。
こちらから頼んでもいないのに、替わってあげてもいいですよとは何事だ。
だいたい、たった45分間、夫と離れて座ることが耐えられないってなんなのだ、それは愛なのか。
わたしは無言で中年女性をじっと見た。
口を開くのは危険だ。世にも美しい言葉が飛び出そうだ。
わたしは気が短いんだ。
すると、隣席の中年男性が小声でその妻に言った。
「窓側が好きで取ってるんだから、やめなさい」
いや、注意すべきはそこじゃないぞ。
いきなり「替わってあげてもいいですよ」って言ったことがいちばんの問題なんだぞ。
似た者夫婦か。
わたしはあきれた顔で目をくるりと回した。
最後まで言葉を発することはなかった。この人たちと言葉を交わす必要などあろうか。
礼儀正しいBBAになろうと心に誓った。
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