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1冊だけの「裂帳」

半年がかりで制作した1冊の裂帳(きれちょう)を先日、納品させて頂きました。気に入って頂き、まずはほっとしました。

ご依頼主は染織作家の乾 育子さん。天然染料を用いた染織着物作品を作られています。以前、京都での個展の際に裂帳を作らせて頂きました。

けれど、今回ご依頼頂いたのはご自身の制作された裂ではなく、乾さんが修業時代に師事された先生から頂いた端切れをまとめたいとのお話でした。裂は人より長く生きるから、と。

乾さんが師事された先生は、志村ふくみ氏(重要無形文化財「紬織」保持者[人間国宝])。
随筆家としても有名な方です。
裂は指先ほどの小さなものから、ノート大、もう少し大きなものもあり、紙箱に大切におさめられていました。少し大きいものは筒に巻かれていました。

「デザインはお任せします」と。裂を切ることもご自由に、との事でしたが。。とてもハサミを入れることはできません!

私が自分に課したルールは、「切らない、糊で貼らない、お預かりした裂は全て一つの箱に収める」。

ゆっくり進めてください、のお言葉にありがたく試行錯誤を繰り返し、土佐の版画用紙を二つ折りの台紙(折丁)にして裂を糸で内側に留め付け、楮紙を被せて窓を開けるデザインにしました。台紙は裂に合わせてA4変形が21折、42cmの細長いものが9折、計30折になりました。裂は80枚位と思います。それより大きなもの、複数ある裂は同じ紙で紙筒を作って巻き、全て箱に収めました。箱はシンプルな被せ箱です。

いわゆる草木染め、と呼ばれる染色は、私も乾さんと出会うまではなんとなくひなびた色合いのイメージでした。ところが綿などの植物性でなく、絹(動物性)を染めると、本当に宝石のように鮮やかに光輝く色が生まれるのです!初めて見た時は本当にびっくりしました。今回お預かりした裂を拝見して、あらためて自然の色と人の手の技に感動しつつ作業しました。

貴重な制作の機会を頂き、ありがとうございました。

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