グランドエスケープ(トークンエコノミー⑩〜絵画マーケット)
ブロックチェーンは人と人を繋げる技術
(抜粋)
なぜ、法定通貨の経済圏では人の持つ価値や趣向を活かしきれないのだろうか。
インターネットの登場で、人と人の距離は縮まった。物理的な距離を超えて繋がれるようになったが、その狭いスペースにはたくさんのステークホルダーが存在する。それに加え、法定通貨のような広い経済圏ではそれぞれのステークホルダーのベクトルも多様だ。
例えば現在の経済圏において、絵を描くことだけを生業に暮らしていける人は、そう多くはない。
確かに、個人でECサイトを立ち上げ自分の絵を世界中に向けて販売することは可能だが、大きな経済圏には絵の価値を熟知している人もいればまったく絵に興味がない人も、玉石混交である。
個人の描いた絵の価値を決めるのは、その絵を描いた本人ではないのだ。
大きな法定通貨の経済圏に存在するさまざまな価値観の中で、絶妙にバランスを取りながら価格や報酬は決まる。
純粋に絵が欲しい人がその価格を決めることは稀で、絵とは関係のない要因に影響されながら付いた価値が、絵の描き手の報酬となる。本当に求めている人が直接価値を決めるわけではないので、そこで適正な報酬の設定がなされているかは判断が難しい。
さらに、法定通貨の経済圏では絵の取引に直接的に関わる人しかステークホルダーになり得ない。そこには、ただ絵が好きで絵を評価するだけの人が報酬をもらう仕組みは存在しない。
しかし、絵画マーケットのトークンエコノミーを形成できれば、絵を描いた人だけではなく、絵を評価するだけの人も報酬を得ることが可能だ。絵の取引に直接関わる人だけでなく、「絵」というベクトルを持つ人びとがステークホルダーになり得るのがトークンエコノミーの世界なのだ。
トークンエコノミーでは同じベクトルを持った人と人が繋がりあう。
そこに共通の価値観や目的があるからこそ、真の意味での需要と供給が存在する。
価値を分かっている人が報酬を支払うからこそ正統な報酬が支払われるし、両者の間には中間コストも存在しない。
ビットコインを始めとする仮想通貨の取引でもわかる通り、ブロックチェーンは中央管理者や第三者を介さないに取引を可能にした。
つまり、ブロックチェーンとは、人と人を直接繋ぎ合う技術だと言い換えられるだろう。
参照 やさしい経済 川本栄介著