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#62 「夜明け前」

満月のように月に一度現わる「月市」と題しまして、一年と二ヶ月続けてきた企画が終わりましたね。

始めかたも終わりかたも同じ位の力で、じじじっーと考える。とはいえ何が起こるか体験したくて且つ継続できるか試したんです。

月市をするやいなや翌月のことを考えて、アーティストの皆さんにお題を渡して自分も考えて、その答えが出揃ったら空間考えてつくってを繰り返し、すっかり勇しくなりました笑。不思議な達成感を味わってます。

「月市」をして分かった事と感じていた事をざざざっと感覚的に纏めていきます。

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EP1 _「催しは街の鼓動のような」

〝催し〟と云う狼煙を上げて、不特定多数の中からやってくる人たちは大なり小なりの血を分かつような何処か似通っている部分の持ち主だと感じる。その規模が多ければ大きい程、街に上昇気流のような高揚が生まれていく。そして終わればごく自然に元の温度に馴染んでいく。そうやって街が心拍する。それでいうと、毎月二日間の心拍は不整脈だったかもね。ちょうどいい街の鼓動にしたいね。

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EP2 _「名は体を表す」

名は社会における〝しるし〟なのだから、分かり易い方がいいんだろうね。芸術鑑賞をハードルが高いと感じられてしまうのを恐れて「市場」とハードルの低そうな名前にしました。だけれど、アート&クラフト展「〇〇」とした方が多くの方に届いたのだろうと少し反省。僕は少しのズレに面白みを感じてしまうから、次は分かり易い名前にしてあげて、みんなに愛されるものにしてあげたい。(みんなが「月市」と呼んでくれていたのも自分の子どもが存在しているようで本当に嬉しいことだった)

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EP3 _「絵を飾る文化」

時折、家に絵を飾る事に抵抗のある方がいらっしゃる。「何処にどう飾ればいいのか分からない」と。日本には床の間があった。定説は未だないらしく起源が正確ではないが神聖な鑑賞空間で、来客に合わせて季節に合わせて掛け軸などが飾られていた。かつては絵を飾る慣習があったのだから、新たな様式で復刻できたら面白そう。

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EP4 _「人を集める魔術」

催しをするという事は、狼煙を上げなくてはならない。つまりは宣伝広告的なことだったり、人や場に〝面白そうなことをやってる〟と云う印象を持ってもらうことで狼煙が上げたら人がやってくる魔術のようなもの。僕はその術を知らないから結局泥臭くハガキを書く。シンプルに猶予(時間)が欲しい。

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EP5 _「芸術を日常に」

朝起きて昼仕事して夜寝るまでの間、誰かの日常にどう芸術が存在してて、本当に必要なのか考えたい。子どもの送り迎えとか慌しい日々の中に一瞬でいいから非日常を渡したいんだけど、なんかむずかしい。身近なものは「音楽」なのかもしれない。もっと身近なのは「食」なのかもしれない。「本」だとちょっとギリギリ。情報過多の時代だからこそ自身で感じて選んでいくと云う行為が重要になってきた。健康の為にもスポーツジムに通うように美術館にいって感性を鍛えたい。〝美しいとは何か?〟が歯の浮く台詞ではなく、普通に渡し合える関係がいい。

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EP6 _「コックとウェイター」

月市では、コックとウェイターと客の三つのバランスをとってきた。(当てはめるとコック=アーティスト、ウェイター=sanaka、客=来場者)世の中の流れで言えば、SNSの発達で直接売買しやすくなってその魅力が在るのですが、各地(長野・宮古島・大分・宮崎など)から作品を送ってもらい、sanakaで間に立ち展示するスタイルでやってきました。お客様への配膳時に花をそっと添えるような気持ちで、代弁者として翻訳者としてアーティストの皆さんに生かされてきました。このバランスは良かったかなと感じてますが、どうでしたか?

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EP7 _「目に見えない交換の文化」

継続する為に売上が必要なのは当然なんだろうけど「月市」が終わるのは経済的理由ではなく、もっと他に在る。「やめないで下さい」とドネーションを頂いた事もあって。関心のある方に届きつつ、無関心の人にタッチする方法を考えたい。でも大衆に向けてではなく、近くにいるのに顔が見えない人と向き合っていきたい。「月市」は、sanakaとしての表現の場所であり、アーティスト一人一人の表現の機会でした。これをきっかけにやったことのない作風に挑戦してみたり、毎月やっていくことでシンプルな成長を遂げたり、「つくる人」のつくる理由になり続けた。それは凄く良かった。あとは「めでる人」の見に来る理由を作らないと交換にならない。

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これらの経験や考え方を纏めて考えると「三ヶ月に一度に六日間の展示、制作と情報を纏めてチラシを作ったりハガキを書く猶予をとり、つくる人と愛でる人との年間行事のような催しで、街が鼓動するように心地良い空気感が生まれて、床の間のような芸術を嗜む文化が日常的になっている。」

それを発信する場所として、レトロフトmuseoはとても良いと感じていて。シンプルに来て欲しいと思う。(↓この動画を見て頂いたら、オーナーと空間の魅力が幾分か伝わるはず。)

オーナーの友美恵さんが大切にされている「NEUTRAL」と明弘さんの教えてくれた「FOR OTHERS」の考え方を一緒に大事にしたい。

その上で企画を考えました。

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来年からは、新たな展示がスタートします。
名前は「NEW TURE(ニューチャー)

新しい(new)と
育む(nurture)
文化(culture)
未来(future)の造語です。

とある方が〝本物は常に新しい〟と言いました。それを聞いてイメージしたのは、海に浮かぶ舟。孤独で不安になったら、誰かがいる島に着岸したくなる。それは同調のような安心感がある。海上で波が強いのに錨(自尊心)を下ろしていたら転覆してしまう。不安定な海上で浮かび、オールでバランスを取りつつ、自分の意志で着岸離岸を選びながら、揺れて生きていくことが本物だと考えています。アーティストは常にその孤独を持ちながら、自身の目指したいゴールに向かっている人たちです。

「NEW TURE(ニューチャー)」は、つくる人と愛でる人を繋ぐ三ヶ月に一度の季刊展示。この取り組みが継続しながら、かかわる人たち(つくる人・感じる人)の慣習となって街の文化となり、芸術と日常が近くなってくだろうと考えています。※ もしかしたら数日後に名前が変わってるかもしれないですが、そのイメージです。分かり易さで考えたのに造語にしちゃった!

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「月市」改め「NEW TURE」を宜しくお願いします。
3月、お会いできるのを楽しみにしています。

良いお年を!

sanaka_佐藤孝洋

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