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#60 旧藤武邸の「月市」

_ 現時点

2022.9.10-11、鹿児島県民教育文化研究所(旧藤武邸)で、月市の特別版として展示をさせて頂きます。(月市の詳細は、こちらへ。)

鹿児島にお住まいの方はご存知かもしれませんが、
県外の方も読んでいらっしゃるので、簡単に説明を。



1939年、鹿児島県鹿児島市の上町地区(上級武士たちが住んでいたエリア)にある木造建築として登録有形文化財に指定されている建築「旧藤武邸」。戦火を免れて83年経った今も悠然と佇んでいます。

(追記:有形文化財指定じゃなく、有形文化財登録でした。)

現在の貨幣価値で3億円以上と云う評価以上に、随所に遊びの利いた技巧や装飾に当時の宮大工たちの熱量を窺い知ることができます。素人の語彙力では描写することは難しくも感じ取ることはできますし、建築の専門家たちが「もう二度と作ることができない」と口を揃えているような建造物です。

先日、その旧藤武邸の取り壊しが決定しました。

財団側は「建築を残す方法を6年間探したが見つからず、苦渋の決断をした。引き返すことは難しい」として、市民側は反対の声が上げて嘆願書を集めたり、行政機関と対話を重ねたりと働きかけていますが、見学は9月末まで11月以降〈取り壊し〉と云う、現時点。

旧藤武邸では分からない人もいるかと思います。元々は藤武さんの御宅が時を経て、料亭であったり、学生寮であったりと形態を変えて、現在は教育文化研究所として保護財団が管理してきた背景があります。

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_ 立ち位置

僕の立ち位置を明確にしておきますね。
この状況において、立場を4つに大きく分かつことができるとしたら
⑴ 財団/行政/地域の方々  ⑵ 建築専門家
⑶ この場所を大切思う人たち ⑷ その他

で云うと僕自身は、⑷番の人です。
限りなく⑶に近い、⑷です。

よく思うのは、もし文化的な世界遺産が残る街並み(ポルト、エディンバラ、プラハとか)を見に行ったとして、こちらの希望とすれば非日常に溺れようとしてたら、全てがユニクロやスタバ、コンビニになっちゃって近代化してたら残念に感じてしまう。それでもその土地で暮らす人たちが豊かであることが重要なのだから望む近代化であれば良い。ただし気付かない間に消えてしまうのはやっぱり嫌だし、財団の方々や上町地区の方々の意見を尊重したい気持ちを大切にしながら、前向きな未来を選択していきたい。

政治も同様。形ばかりの民主主義では何も変えられない。たとえ部外者だとしても作家としてできることを考えて、〝何か〟を働きかけたい。

今回、レトロフトの永井さん夫妻や切り絵作家の黒丸さんを通じて、旧藤武邸のことを知りました。現地へ赴き、上町地区の方とお話をして展示する機会を頂きました。このような機会を頂き本当に感謝致します。ありがとうございます。


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_ 2つの態度

次に、僕の態度を確認にしておきますね。
僕は解体賛成や反対を問う立場にはありませんし、先導者ではありません。一方的な意見を押し付けるものではありません。

月市としては中立な態度で、純粋に見て感じて欲しいのです。

ただ個人としての態度は、意見が無いわけではありませんから、同じ気持ちであれば、嘆願書をお願い致します。

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_ 他人事

どうしても他人事に感じてしまうかもしれません。

でも、このような事例は今回に限ったことではなく、あなたの暮らしている街で同じようなことが発生している筈です。

理由は、簡単。
大体の課題が気が付かない間に瀬戸際までやってきてて、課題を抱えてきた人は消耗してしまっている。

もしかすると本当は財団の方々も苦しかったかもしれません。例えば、庭を放置する訳にもいかないので綺麗してたとしても無関心の人が多ければ見てもらえない。だと云うのに維持し続けないといけないとしたら、大変なことは容易に想像できますから。

取り壊して、誰が損をして誰が得をしてるかは分かりません。仮に多くの人たちが当然のように利用していたら、新たな県教育会館の新設は今より困難になっていたかと妄想します。

他人事に感じてしまうかもしれない〈その他〉の人も〈参加意識〉だけでいいので、〈この場所に想いを馳せる〉そのスイッチを入れていくことが重要と考えているんです。

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_ 9つの視点

その他の一員として「月市」と云う鹿児島市名山町のギャラリー「レトロフトmuseo」にて毎月行っている展示の特別版として、旧藤武邸にて展示を致します。

特別版の展示で、着目する視点は9つ存在します。

1)貴重な建物を見ることができる
2)地域や歴史を知ることができる
3)この事象にあなたがどう考えるか
4)身近な出来事として受け取ることができるか
5)どうして、社会の流れから外れてしまうのか
6)同じ事柄が発生したときの対応を知る
7)作品を鑑賞できる
8)作家を知ることができる
9)古いと新しいが同時に存在する展示である

本来「月市」は、作家さんを知ってもらい、作品を鑑賞して交換方法や価値について考える場所ですから特別版になっています。

あなたにとってどれか1つでも見に行くきっかけになればいいと、その役目を全うしたいと思います。

(本音をいえば〝これを機に知ってもらおうと思っている〟と感じられて誤解されるのは嫌です。ですので、sanakaは物販はしません。他の方の作品が売れたとしても全て作家の売上になる仕組みになっています。建物を見に行く理由を作りたい気持ちと共に未来について考えてくれる人と触れ合いたい気持ちです。)

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_ 背中

もし仮に存続が決まったとしても次なる課題は山積みです。全部壊して新しくすると云う発想でも、課題は山積みのままです。

そんな時にクリエイティブな発想が必要で柔軟に寛容に進めていくべきなのだろうから渦中に近づきながらよくよく先輩たちの背中を観察させてもらいたいと思います。

そして、次の世代に受け継いでいきたいです。
ものを有するか、概念だけなのか。
それは、まだ分かりません。
ただ見に来て下さい。

sanaka/佐藤孝洋

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◎ 月市_特別版「藤武邸」

日程>2022.9.10-11

時間>10日(土)11ー16時
   11日(日)10-16時

場所>鹿児島県民教育文化研究所(旧藤武邸)
〒892-0804 鹿児島県鹿児島市春日町4番60号

来場方法>
駐車場が少ない為、なるべく交通機関をご利用下さい。身体的にご心配がある方は、お手数おかけしますがお問い合わせ下さい。多いとはいえませんが、近くにコインパーキングが御座います。近隣の方々にご迷惑にならないようにお気遣いのほどお願い致します。お困りの際はご一報下さい。一緒に考えましょう。

問い合わせ>
Instagram:https://www.instagram.com/tsuki1ichi

電話番号(佐藤):080−6902−6935
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