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#56 「わたし、へたなんです」

今回の記事は、鹿児島県指宿市の池田湖の畔で生まれ育ち「絵を着る」をコンセプトにしてTシャツを土台に絵を描き始めたsumire_store(スミレストア)のすみれさんのインタビューとなります。

月市に毎回参加してくれている、すみれさんの心地よい感触のまま直接描かれる色彩や文字、形たちには、本来は言葉にする必要がありません。ただほんの少しだけ、彼女の中にある世界に対話で触れることに試みてみました。

インタビューの対話を通じて、すみれさんの魅力の色がもっと深く滲んでいくといいなあと望んでいます。

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◯ 登場人物
月市:コーヨー(コ)
sumire_store:すみれ(す)

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表題「これで、ノーダメージ」

1_苦手なのに、絵を描く理由

ー すみれは、絵をなんで描き始めたの?

す)中学生の頃、先生たちが良いと思うものが作れなくって、美術の成績はすごく悪かったの。

銅板にトントントンって点を打ち付けて、絵を描く授業があってね。私は丸を描いて、チョンチョンって目を描いて、女の子がニコってしてる絵を作って〝すごいかわいいのが出来た!部屋に置いたら絶対いい!〟て、超満足して先生に提出したら「は?何これ」ってなってさ笑。

私はかわいいと思うのに、成績としてはめちゃくちゃ悪い。だから、私は不得意なんだなって思ったんだよね、自分の中で。そもそも綺麗に上手な絵と云うものが得意ではないし。
大人になってから、何かを説明するときに絵を描かないといけなくて(全然描きたくないけど)描いてみたら、周りの人から「アメトークで絵心ない芸人ってあるじゃない?それみたいで、面白い!」「ラインスタンプ作ったら買いますよ!」て、面白がってくれる人が現れてね。自分でも描いていたら〝へたなこと〟が面白くて、自分のためにTシャツをつくり始めたの。

それを「めっちゃ良いね、そのTシャツ」って言われるようになって〝このへたを楽しんでくれる人たちがいるんだ〟からスタートしたの。苦手なことをやっていていんだと思ってからだよね。好きを仕事にしてるわけじゃなくて、苦手なのを楽しんでる感覚だよ。

コ)面白がってくれる人が現れたのは、自分にとって大きいことだよね。すみれの絵には名前がついてるけど、名前から決めるの?

す)ううん。描いてるときも決まってない。
なんだろうな、描きながら決まっていくみたいな。〝このへんで良かろう〟と思ったら、やめる。で、タイトルが決まっていく感じかなー。いろんなパターンがあるかも。

これを描きたいって描き進めても、途中で気分じゃなくなって、塗り潰したりとか。計画性はまるでなし。

コ)自分自身の波のような中で描くからこそ、全部タッチは似てるけど違うものが生まれてるよねー

す)そのときの自分で、絵が変わるよね。

コ)全然違う。笑 シリーズ物はやり続けられているよね。

す)そうそう。キャンパスの絵だけは、考えずに始まってるかな。下地となる色は何にしようかなーっで結果こんな色になった!から、下地を塗って、一晩置いて。翌日、これに合う色は、何かなー?から始まるんだよね。

コ)一晩置くの?!

す)下地のどろっとした感じがいい時は、そのまま描く時あるけどね。

)「料理はできない」ってよく言ってるけど、なんかめちゃくちゃ料理みたいにつくってない?笑

す)そう、私やんないもんね。笑

コ)下拵え先にしておいて、それを味見して〝あーこれは酸味強いから今日はこっち料理に合うかもなー〟って感じに作ってるね!笑

す)私、料理(絵)やってました。笑
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月市での展示の様子

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2_本当のわたしを認める行為

ー 色とベタって塗った立体感や形に反応して、描いてるってことだよね?

す)そうだよ!そうそう!これに見えてきたから、じゃこれにしようかなーって感じ。やっぱやめたで塗り潰した形が、これに見えてきたからあれ描いたって感覚かなあ。

コ)〝どうみえてくるか〟が重要で、すみれの状態次第ってことは、例えばすみれ自身が動物に詳しくなったら、みえてくる動物も増えるってことだとしたら、すみれが成長したら絵も成長するってことだよね!

す)そうかも。。自分の中にはいろんな面があって、自分に何人もいる感覚があるから、気付いたら絵が仕上がってるってみたいこともあって〝こんな絵が出来上がったんだ〟って、ちがうところから自分を見てる時もあるし、分析していくと面白いよ。結果自分が好きなんだろうなあって思うよ!

コ)もしかしたら、自分が好きになりたいのかも。

す)自分てなんだろうって思う時もあったけど、結果自分が一番好きなんじゃんって思うよね!

コ)当然自分を好きでいて欲しいって思うから、学生の頃に先生や大人に否定されるって相当絶望じゃん?

す)そうだよねー。今とやってるへたなことは変わらないからね。作品ができて、大満足!でも、成績悪いみたいな!笑

コ)「自分の満足感と社会の求められているものが違う」ってことだよなあ

す)そうやって生きてきましたよ笑。ずっと。自分のよきものと社会が求めてるものが違うからしんどいし、わたしダメだーって思っちゃう。

コ)そうだよね。それを肯定する活動でもあるよね。絵を描くってことは。

す)絵を見て、何かを感じてくれる人がいて、sumire_storeを見てくれる人がいるから、自分が保たれているんだなと思う。
「なんなのこれ」って否定する人もいるけれど、誰にも制限されずに自分のやりたいことをやってるから、この場だよね。

コ)それが、すみれの為でもあるし、社会に求められてないと感じる人のためにもなるから、是非続けて欲しいですね。

す)ありがとうございます!

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表題「NEW BORN 寸前」

3_色に命が宿るとき

す)自分としては、自分を守るために「わたし、へたなんです!」って言いたいんだよね!期待されてさ、「デザインの学校出たんですか?」とか「美術系だったんですか?」って聞かれることがよくあるんだけど、全然違うしなんなら苦手なんですけど「苦手なんです」って云ったらみんなどう思うかな?とか得意だからやるべきなのか?って思う

コ)みんな、得意だからやってるって思っちゃうよね。すみれは反対で「(肯定的な意味として)へたで、おもしろいからやってる」んだもんね!

す)色のことを想うのは元々好きだから、色合いに物体が着き始めたって感覚なんかなあ。

コ)なるほど、わかるかも。笑

宇宙というか、底が見えないくらい深い海でさ。目でみえないくらいの微生物がさ、ミジンコみたいな形に成る瞬間みたいな!なんか、命得た!命は得たもののエネルギーを何処かで吸収して生きてるけど、全く分かってない!やっと生き物になった!みたいな絵だもんね、すみれのやってること。笑

す)そうそう!それです!誕生したばかりだからね、この感覚。深海もしくは宇宙です。掴めないものが好きなんだろうね。

コ)ひとつひとつ説明求められたら、すみれもほんとは困るよね。 

す)私は全て愛で済ませたいんだよね。これは、私の愛です、と。

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表題「自由だよ」

実は、このインタビューは本人に内緒で行いました。(掲載の許可は取ってあります。悪しからず。)僕は〝これは大事な話だな〟と感じるとボイスメモを起動するんですが、いい対話が残せて良かった。何より、すみれさんの真ん中のところに触れることができて良かった。

すみれさんの絵に在る〝心を解してくれる力〟は、「社会」と云う枠には収まろうとするときに離れようとする磁力みたいなものであって、プリミティブ(原始的)な力が宿ってるんだなあと感じました。

誰もが感じるであろう、赤ちゃんが誕生したときの柔らかくて、脆くて、儚くて、尊くて。その感覚をずっと持ち続けたまま、色に生み出して、形を生み出して、命を生み出す、すみれさんの話をお聞きすることができました。

ありがとうござました。

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◯ sumire_store / Instagram

◯ sumire_stores


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