夜の包容力

「月が綺麗ですね」の返答が「今なら手が届くかもしれませんよ」なら良いとか、そもそも「月が綺麗ですね」の返答は存在しないとか、ロマンチックなエピソードもあれば、「月ではうさぎが餅つきをしている」とか、輝夜姫みたいなメルヘンな話もあって、そもそも某国は月に上陸してないなんて言う都市伝説的な話もある。月。最近ではとあるバンドが好きな人達を総称して「夜好性」なんて呼ぶらしい。

私は日本人はみんな月が好きだと思っている。ふらっと外に散歩する。冬の方が夜空は綺麗に見える。タバコに火をつける男。中華まんを半分に分ける恋人達。総じて少しの寂しさと、恋しさを月に持ち寄って空を見上げているんじゃないかなんて思うと少し嬉しかったりする。

同居人が来てからしばらく夜ふらっと外に出ることが無かった。今、久々に月を見ながらこれを書いている訳だが心地が良い。しばらく忙しかった、いや、忙しくしていた気がする。それは何かに追われているからなのか何なのか分からないが。

私の恋人は夜明けが好きらしい。私は夕方から夜更けが好きだ。こうして1人寂しさを抱えている時間を許してくれる夜を私は愛している。そしてこういう時間こそ書き物の筆が乗る。気がする。

寂しさは紛らわすものではなく1人静かに味わうものでは無いかなんて考えているが、それは私が日々心が満たされているからではないか。いや、寂しさを紛らわすなんて、失礼ではないか。このたった1人の時間を唯一許してくれるこの夜に。悲哀を心地よいと思える自分に。

この先何年経っても私が死ぬまで、夜はいつまでも夜であって欲しい。昼はいつまでも昼であって欲しい。そうして私は2本目のハイライトに火をつける。

繰り返すが私は夜を愛している。そんな話がしたかったのだ。

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