【医師国家試験】勝手に予想問題

問題: 次のうち、深部静脈血栓症(DVT)のリスク要因として最も関連が低いものはどれか。以下の選択肢から最も適切なものを選びなさい。

a. 心房細動
b. 重症妊娠悪阻
c. 全身性エリテマトーデス
d. 悪性腫瘍
e. 全身麻酔






解説:

既に過去問にもある問題ですが、最近の医療現場では特に入院患者への深部静脈血栓症、転倒、栄養評価は必須となっており、基礎知識として深部静脈血栓症は重要です。

深部静脈血栓症(DVT)は、主に下肢の深部静脈内に血栓が形成される病状です。DVTの発生は、血流の低下、血液の凝固傾向の増加、血管壁の損傷という三つの主要因(Virchowの3徴)に基づいています。特定の基礎疾患や状況はDVTのリスクを増加させることが知られています。

a. 心房細動: 心房細動は主に動脈塞栓のリスクを増加させます。心房内での血液の停滞は動脈系における血栓形成の原因となり得ますが、静脈血栓症(DVT)のリスクを直接的に増加させるとは考えられていません。

b. 重症妊娠悪阻: 妊娠中は血液の凝固傾向が高まり、特に重症妊娠悪阻はこの傾向を強化します。これにより、DVTのリスクが高まります。

c. 全身性エリテマトーデス(SLE): SLEは自己免疫疾患であり、血液凝固の異常や血管壁の炎症を引き起こすことがあります。これらの変化はDVTのリスクを高める可能性があります。

d. 悪性腫瘍: 癌患者は、癌自体やその治療によって血液の凝固傾向が増加することがあります。このため、悪性腫瘍はDVTの重要なリスク要因となります。

e. 全身麻酔: 全身麻酔は一時的に患者の動きを制限し、手術中の血流の低下に寄与することがありますが、これ自体がDVTのリスク要因とは考えにくいです。全身麻酔の影響は主に手術中や回復期に限定され、DVTのリスクはそれらの期間やその他の要因により影響を受けます。

その他のリスク因子としては

  • 妊娠:

妊娠中は、女性の体が出産に備えるため、血液の凝固傾向が高まります。これは出産時の大量出血を防ぐための自然な生理的変化です。
また、拡大する子宮が下大静脈を圧迫することで、下肢への血液の流れが減少し、DVTのリスクが増加します。
妊娠中のホルモン変化も血栓形成のリスクを高める要因となり得ます。

  • 大量出血:

大量出血が発生すると、体は血液の喪失に対応するために凝固システムを活性化させます。
この過程で血液凝固因子が増加し、血液がより凝固しやすくなるため、血栓のリスクが高まります。
血液量の減少はまた、血流の低下を招く可能性があり、これも血栓形成のリスクを増加させます。

  • 肥満:

肥満は血栓形成のリスクを増加させる重要な要因です。
肥満は血液中の凝固因子のレベルを増加させることが知られており、血液の粘度を高めることがあります。
また、肥満は身体活動の低下につながることが多く、これが血流の低下を引き起こし、特に下肢での血栓形成リスクを高めます。

  • 炎症性腸疾患(IBD):
    炎症性腸疾患、特にクローン病や潰瘍性大腸炎などは、全身の炎症反応を引き起こします。
    炎症は体の凝固システムを活性化させるため、IBD患者は血栓形成のリスクが高まります。
    さらに、IBDはしばしば栄養不良や貧血を引き起こすことがあり、これらも血栓のリスク要因となり得ます。

解答:a. 心房細動
この問題は、医学部の学生がDVTとそのリスク要因となり得る基礎疾患や状況の関連を理解し、それらがどのように血栓形成に寄与するかを認識する能力を評価するために設計されています。
心房細動は主に動脈塞栓のリスクを増加させるものであり、静脈血栓症(DVT)のリスクとの直接的な関連は低いため、この問題の正解となります。

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