潜る

お風呂に入ると必ずする事がある。
それは潜る事である。潜って狭いお風呂の中で一回転をする。毎日必ず潜る。潜らないと気が済まない。

私は、小学生になった時、プールに入れなかったら。水が怖かった。顔をつけることさえ出来なかった。先生に抱き抱えられながらはいっても、水面が揺れて顔にかかるだけで怖かった。水着を着ても、プールに入れず見学しているのは恥ずかしかった。

私はお願いにお願いを重ね、プールに通わせてもらう事になった。運動音痴だったおばあちゃんが、自分も恥ずかしい思いをしたから、気持ちがわかる。そこまで言ってんだから通わせてやれよ。と母に言った。おばあちゃんに、よし。と言わせれば話は早かった。週に一度のプール生活が始まった。

私は3歳や4歳の子と混ざって、水に顔をつける練習から始めた。お姉ちゃん、怖くないよ?見てて!と自慢気に顔をつけて見せる小さい子を見て、これは怖いと泣いていられない。と思った。潜れるようになった子が、次のクラスに進級していく中、私は日々、水に顔をつける特訓をした。お風呂に入るたび、勇気をだすんだ、いっせーのーっせ!とかけ声をしながら水に向かうも、3秒ともたなかった。プールの先生も、水色とお友達になれたら気持ちいいのよ!と私を勇気づけ続けてくれた。怖い気持ちを落ち着かせ、上手に息を止める事を覚えると、水が怖くなくなった。

そうなると、潜れるようになるまで早かった。家のお風呂でも潜る練習をした。
水の中に潜っても苦しくない。水中で目を開けて、ジャンケンをする練習に励んだ。
思わずジャンケンぽん。と口で言ってしまうと、水を飲みこんでしまいむせた。
そう、水の中で息をしてはいけないのだ。

私は1年かけて、やっと次のクラスに上がった。その間、沢山の小さな友達を見送った。
腕に浮き輪みたいなのをつけて、25メートル泳ぎきって、合格をもらえた時、先生が涙を流して喜んでくれた。

こうして、次のクラスに上がった私の腕から、浮き輪が外れた。浮き輪が外れても問題なく浮く事が出来た。しかし、泳ごうと手足を動かすと、沈みそうになる。どんなにバタつかせても、前へ進まない。きれいなバタ足や、クロールの腕の練習をした。

こうして私は、潜るのに1年、泳ぐのに2年かけて、25メートルを泳げるようになった。先生に合格を貰い、計3年間通い続けたプールを辞めた。私は3年間のプール生活の中で、友達を1人も作れなかった。プールのレッスンの最後にもらえる自由時間の10分間、みんなは友達と遊んでいたが、私は1人、水の中に潜り回転して遊んだ。水と友達になれて楽しかった。

プールを習い始め、お風呂で潜る練習を始めてから、大人になった今まで、お風呂で潜る事を辞めれないのだから、きっとおばあちゃんになっても潜り続けるだろう。
私は、何をやってもだいたい人より時間がかかる。水と友達になるまでも、時間がかかってしまったけど、私は一生水と友達でいられるのだ。

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