若林恵さんの著書「さよなら未来――エディターズ・クロニクル 2010-2017」を読み終わってないのに我慢しきれずに途中経過を書く。
若林恵さんの著書を先日から少しづつ読み進めている。
過去に彼が書いた記事の総集編的な本だがその説明ではこの本の価値は全然伝わらない。
むしろ一冊の本をモノにしようなどという野心を持たずに書かれたテクストたちが、若林恵という揺るぎない美意識の軸で書き続けられてきたが故に、一冊の本になることになんの違和感もなく、むしろ作為なくそれが成立しているがために一冊の本にすることを目指して書かれたものよりリアリテイがあり、刺激的で、なぜか優しい。
一方編集者として選び、冒頭のディスクリプションを書く編集者としての若林さんからは強烈な意志と500ページの本を成立させるに足りる野心も感じる。
この本を読みながら思い出したのは、僕にとって最良の友人は、新しいことをいろいろ教えてくれつつも、その視点や美意識にそうだよな、そうだよなと共感しながら読めるテクストたちだったなということ。この本を読みながら感じたのは僕の中の凝り固まった孤独感や疎外感がじんわり解ける感覚だった。
時に、いやむしろ大抵の場合に、自分にフィットするテクストは書いた本人以上によき友人となる。最初から気を使わず、いつでも好きな時に呼び出せ、ど頭から本質的なやりとりができるのだ。若林さんとは対談させてもらったが、この本を読みながら本の中の彼との対話以上の対話が成り立つとは到底思えない。
それくらいこの本に収められたテクストは僕を励まし、力づけてくれた。
一度だけお会いした彼はぶっきらぼうで、シャイなものごしの佇まいの中に、美しく、楽観的な魂を内包した素敵な人だったが、残念ながら僕にとってのこの本以上の友人にはなれないだろう。自分にフィットする本っていうのはそのくらいの存在なんだってことを改めて思い出した。
本書は音楽、政治、環境、テクノロジーなど誠に多岐にわたったテーマが扱われたテクストの集合体だが、世界は身も蓋もなく見ればクソったれだが、それでも解像度を上げていけばその中にだって真実味のある希望を見いだせることを教えてくれているという意味で一貫している。
まだ半分以上未読の部分が残っている幸せをかみしめつつ、我慢しきれずに書評を書いてしまった。
若林さん、僕はあなたの大ファンになってしまいました。
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