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【小春の着付教室】第59号●着物:腰紐

こんにちは。着付師・着付講師の *小春*です(*^^*)
本日もよろしくお願いいたします。

前回の「裾合わせ」のポイント、いかがでしたでしょうか。
伝えきれなかった部分がありますので、最初に裾合わせの続きの内容をお伝えし、その後に今回の腰紐の掛け方に入ります。

衽線と上前の位置

上前を決める時、どこに合わせれば良いの?と分からなくなってしまうことがあると思います。
ご自分の寸法にピッタリ合っている着物の場合は袵線も脇縫い線も、腰紐より下の背中心もすべて思うところに来てくれます。さすがお誂え!という感じです(*^^*)

ご自分の寸法に合っていない着物、訪問着などの絵羽もののお着物の場合は柄合わせを優先してお誂えすることになりますから、身幅が大きすぎたりします。
体型が変わったり、プレタの着物や譲り受けたお着物も同じように幅が合わずご苦労されることもあります。

身幅の合わない着物は難しいと思ってしまいますが、ポイントを知ってしまえばその方法通りに進めるだけです。難しいことはありません(*^^*)
どのような寸法の着物でも、

衿下が右腰骨に少しだけかかるラインに決めること

です。
上前を合わせ過ぎますと、衽の位置が右に寄りすぎてしまいます。見た目に違和感があるだけでなく、身体への巻き付けが多くなることで歩きにくくなってしまいます。

逆に合わせが足りないと衽の位置が左に寄りすぎてしまい、下前の着物が見えてしまいます。当然、左側の脇縫い線は後ろに位置することになりますので、横からも後ろからも、見た感じが美しくはなくなります。

極端に体型に合わない着物の場合にはどこかにしわ寄せがきますので、ある程度は仕方がないと割り切ることは必要ですが、衽線の位置を優先させることで、前からのバランスは美しく仕上がります。

こうして右腰骨を意識すると、自然と衽線もちょうど良い位置に決まってきます。
衽線は前幅の中心~やや右側にあれば美しいですし、おはしょりの衽線と合わせる際も楽に整えられます。

衿先注意

裾合わせが決まるといよいよ腰紐をかけますね。
腰紐をかける時、上前の衿先に注意しましょう。

上前の褄先は巻き終わり時にほんの少しだけ上げます。
そうしないと上前が下がって見えてしまいますから。それに裾のやわらかな曲線がなくなりますので、ほんの少しだけ上げることは美しく魅せるために必要です。

むか~し昔は褄先を多く上げていましたが、今はそれほど上げませんね。
着上がった時、ご自分では意識していないのに、褄先がう~んとあがってしまっている時ってありませんか?

ご高齢の方のお着付けで、特に留袖は褄先をう~んと上げてお着付けさせて頂くことはあります。「今」や「昔」は関係なく留袖はそういうものであるとの認識のお客様には、現在ではあまり上げない着付けであることをお伝えした上でさせて頂きます。
このように意識をして褄先を上げるのであれば良いのですが、意識していないにも関わらず、不本意ながら褄先が上がってしまう(汗)のは問題ですよね。そうなってしまわない着付けをしましょう。また気付きましたらすぐに直しましょう。

褄先が上がってしまう原因は2つあります。

・上前を合わせた後の整え
・腰紐のかけ方

上前を合わせた後、上前の衿先を綺麗に整えていますでしょうか。

・衿先がグシャグシャになっていませんか?
・衿先は綺麗に広がっていますか?
・衿先の歪みはありませんか?

このように衿先をキチンと広げ、床と平行して後ろの方へ合わせられていますと、褄先は上がりませんし、おはしょりを整えやすくなります。

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その処理を怠ると、大変!
衿先が腰紐の上に!ということが起こります。
そうすると褄先が上がってしまうのです。

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上の写真は衿先が抜けかかっている状態です。
下の写真はかろうじて衿先は抜けなかったものの、褄先に影響はしています。

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腰紐をかける時、右手は右脇(ウエスト~腰骨)に手をかけます。
小学生の頃の整列時「前へ倣え(まえへならえ)」の一番前の子のように。

この時、上前の衿先を綺麗に広げ押さえると、一枚目の写真のように衿先を歪ませることなく綺麗に腰紐を掛けることが出来ます。そして褄先が上がってしまうことを防げます。

褄先が上がり過ぎていると気付きましたら、先ほどの衿先を確認してみましょう。上がってしまっている衿先を上手に腰紐の位置に下げればちゃんと直りますが、上がってしまっているのは褄先だけでありません。
全体に裾線も上がってしまっているのですから、衿先だけでなく、衽幅くらいは少しずつ丁寧に下げましょう。鏡を見ながらバランスよく調整してくださいね。

腰紐の掛け方

腰紐は着物の着付けの要のお紐となります。とても重要ですのでしっかりと掛けます。
モスリンなどのお紐の場合は着物の着付けの中でいちばんきつくかけるお紐となりますが、着付け便利小物のウエストゴムベルトの場合は、伸縮加減を充分に考慮し快適な長さにする必要があります。

腰紐の中心に注意!

腰紐の中心を手にできるよう準備しておかないと困ることがあります。

・紐の中心を探すのにモタモタ(汗)したり
・前に戻したとき紐の長さが左右で違いグズグズ(汗)したり

そうならないように、腰紐の中心を必ず手にできるように準備しておきましょう(*^^*)

裾合わせをして腰紐を掛けるまでの時間が勝負です。
モタモタ、グズグズしていますと、腰紐を掛ける前に裾線が下がってしまい、やり直しとなってしまいます。
準備は大切です。スムーズに紐掛けできると美しい着付けにグーンと近付きます。

脇で一回止めましょう

腰紐をかける際、一気に後ろまで行き交差させ、すぐに前に戻し結びたくなりますね。ここで慌てると崩れに繋がります。特に染の着物は滑りやすいため急ぎたくなる気持ちとても分かりますが、落ち着いてお紐掛けしましょう。

脇で一回止めることはとても大切なのです。それは、脇で止めた時に、ちょっと手を加えたいからです。

1.後ろ身頃分を少しつまんでタックを取り
2.そのタックを後ろ側に倒します

こうすることで、後ろ(腰部分)に出来るシワを少なくすることができます。補整をしてもウエスト部分は腰回りに比べ細いため、きゅうきゅうに紐を掛けるとシワが出てしまいます。
脇でタックを取ることでこのシワを少なくさせることができ、腰回りを美しくします。このポイント、ぜひ活かしてくださいね(*^^*)

後ろを高めに!

腰紐をかける時、少しだけ後ろを高めにします。
そうすることでおはしょりのバランスがとれます。

よく、後ろだけおはしょりが長くて処理に困るという方がいらっしゃいますね。腰紐の位置を上にするだけで、この問題は、解決します。

繰越しに合わせた衣紋を抜くことが出来ていましたら、おはしょりが後ろだけタップリということは無いのですが、必要以上に衣紋を抜いた場合は着物生地が後ろへ流れますので、当然後ろのおはしょりの方が通常以上に長くなってしまいます。

少しだけ後ろは高くお紐を掛けることでおはしょりの長さを調整することが出来ますが、このことでお紐を綺麗に掛けられないようであれば、高く掛ける必要はありません。胸紐を掛けた後におはしょりの長さを短くすることが出来ますので(*^^*)

身丈のちょうど良い場合、短めの着物の場合は、高く掛ける必要はありません。
染の着物は垂れやすいため後ろが長く感じる場合もありますし、加齢にともない身丈が長く感じるようになってきた方は、後ろを少し高めに掛けることで後ろのおはしょりを上げる手間が無くなり楽にお召しになれます(*^^*)

右脇も少し高めに!

これは、ウエストゴムベルトの時に、特にお勧めの方法です。
腰紐をかけ終えた後に、ちょっとだ手を加えます。腰紐はウエストに二重にかかっていますでしょう。どちらか一本だけ、左側だけを上の方へずらします。こうすることで、おはしょりの下線が綺麗になります。

モスリン等の腰紐でも、少しだけ位置を高くすることで、後の処理が楽になりますが、このことでお紐のゆるみや崩れなど気になるようであれば、高く掛ける必要はありません。胸紐を掛けた後におはしょりの長さを短くすることが出来ますので(*^^*)

1.ウエストゴムベルトを掛けます

ウエストゴムベルト1

2.通常、上前のおはしょりは左側が下がります

ウエストゴムベルト2

3.左側の1本のみ紐幅分上げます

ウエストゴムベルト3

4.左側のゴムを上げるとおはしょりは真っ直ぐになります

ウエストゴムベルト4

5.来上り写真です

ウエストゴムベルト5

ウエストゴムベルト6

おはしょりには手を加えず着付けた仕上がり写真です。腰紐の左側のみ少し手を加えることで楽に綺麗に着付けられます。
10年以上前の写真で恐縮ですが(汗)、違いが伝わりましたら嬉しく思います(*^^*)

腰紐をかけたら

何とか腰紐をかけ終えるとホッとしますね。ひと息つきましょう(*^^*)
腰紐は重要ですもの。着物の要の紐となりますから緊張しますね。
慎重に、丁寧に、崩れることのないよう充分に注意しながら掛けられましたでしょうか?

ホッとひと息ついたら、すぐにおはしょりを下げたくなると思いますが、その前に確認しておくことがあります。

今掛けた腰紐をチェックします。
腰紐をしっかり結ぶと、シワができます。このシワを綺麗に整えておくことを忘れずに行います。

ここのシワを綺麗に整えておくと、お尻の部分だけポコッと出てしまうことを防ぐことができます。

1.背中心の縫い線が曲がっていたら真っ直ぐに整え
2.シワを両脇へ寄せタックを取る
3.または背中心から脇までシワを散らす
4.たるみ分は腰紐よりも上に少しずつ引き上げる
5.腰回りのもたつきが無いことを確認

ここは少し時間をかけてでも丁寧に(*^^*)

右脇のシワは衿の内側へ入れ込んでしまいます。
上前で隠してしまえば、とっても綺麗でしょう(*^^*)

補整の確認

上記の処理をしている時に、あまりにもシワができてしまったいる場合は2つのことが考えられます。

ひとつ目
裾合わせをした際、腰回りがゆったりしすぎている。
裾合わせが決まったら、左右の衿先を持ち、腰まわりのゆったりした分を引くことでスッキリします。
※左側は、身八ッ口から手を入れます。

この作業をしすぎる(引き過ぎる)と後ろ姿でヒップや下着のラインが分かってしまいますから程々に引きましょうね。
立ったり座ったりする時のゆとり分を忘れないよう加減してご自分がちょうど良いと感じる状態に決めましょうね(*^^*)

ふたつ目
補整が足りません。
もう少しウエストまたは腰への補整を足してみましょう。

腰やウエストに補整の段差が出来てしまっている場合は補整のしすぎです。

おわりに

腰紐の掛け方を綺麗にできるようになりますと、着物を着ることがとても楽しくなります(^^)
綺麗にできた裾合わせを、腰紐をかける時に崩してしまわないよう、充分に注意しながら進めてくださいませね。
手を加え過ぎても足りなくても、綺麗には整えられません。

バランスが大切なのですね。
難しいとは思いますが、これは感覚で覚えるしかありません。
何度も何度も練習をし、その感覚をぜひご自分のものにされてくださいね。

着付けは手順を覚えるだけですから簡単なのですが、美しく着付けるにはポイントが盛り沢山です。しかも、見えない部分の整えがとても重要なのです。手を抜いてしまうと、着付け上がりの姿でその手を抜いた部分が分かってしまいます(汗)
見えない部分の整えが大切であることを心に留めてお着付けして頂ければ、必ず着姿の違いにお気付き頂けます(*^^*)

それでは、また明日に続きます♪
最後までお読みくださり、ありがとうございました。

■次回予告

*着付ポイント:おはしょり(1)

※この内容は、私が販売する着付け・帯結びテキストご購入者様向けに2009年より配信していた内容を一部修正および加筆編集し一般公開として掲載しております。

● 小春日和*小春流着付*着付師さん応援ブログ


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