2021年の三省堂神保町本店閉店にあたって思い出したこと(2021年9月)

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2007年、横浜で開催されたワールドコン(第65回世界SF大会。8月30日〜9月3日にパシフィコ横浜で、日本で初めて開催。公式サイトの記録では有料参加者数3332名)の前後だったかに、連続トークイベントの企画を相談され、お世話になりました。浅倉久志さんが登壇した数少ない書店イベントもここでした。木村重樹さん(ディック研究家。元ペヨトル工房。村崎百郎さんの同僚でした)や円城塔さんと2階でお茶をした思い出も。

それよりなにより、1981年の開店から数年は、1階エスカレーターを上がった先の2階すぐのコーナーにSFの同人誌が入荷されていたのが思い出深いです。『ダイバージェンス』(東北大SF研)とか『コスモス』(お茶大SF研)とか。ぼくはたいてい持っていた有名ファンジンばかりで、そこで購入したことはなかったのですが。

あ、こういう「SFファンジンが書店で扱ってもらってた時代」みたいな話だけでもトークは可能かなあ。ゲストは青心社代表の青木治道さんで。

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思い出話その2。

その昔、初めて東京を訪れた1978年の夏(NHK杯全国高校放送コンテストのアナウンス部門全国大会出場のため)、先輩たちと一緒に、夜に神田を歩いていたら、あれはあとあと思うとシャッターの閉まった三省堂書店の前の道だったでしょうか、でもその頃はまだ建ってなかったのか。なんにせよ、そこに『小説現代』が落ちていたのでした。

徳島ぐらいでもマンガ雑誌や週刊誌はよく道端に無造作に捨てられていたものでしたが、「すごいなあ東京は。小説誌まで拾えるんだなあ」と思って(とくに東京土産のつもりでもなかったんだけど)徳島まで持ち帰ったのでした。

その号には「乱歩賞、歴代最年少」の山田純代さんの受賞発表が載っていて、その人がいわずもがな、『ぼくらの時代』の栗本薫さんで、その後購入した単行本版は、高校生だったぼくに強烈な印象を刻んだものでした。

なお、それから現在まで、東京の路上といえど小説誌を拾うという体験はこのときかぎりで、東京もそこまですごくはなかったのだと知ることになるのです。
(小浜徹也)

(初出:2021年9月2日、Facebook)

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