退職するから、旅に出た ~ 1日目 その2

・前回までのお話

書きたいことを好きなように書き連ねていたら、当初の思惑より長くなってしまったので、記事を分割しました。
前回は鳥取空港を後にして、出雲大社を目指すところまででしたね。

・出雲大社につく前に。

鳥取空港から先は過去に2回自走した経験があるから、迷わずに突き進む。
山陰道の無料区間を駆使し、どうしても市街地に降りねばならない箇所だけ混雑に巻き込まれながら突き進む。
いつの間にか雲一つない晴天と、緑に光る宍道湖が右手に現れたなら、目的地はすぐそこだ。
だけどその前に、お風呂に入りたい。お昼ご飯も食べたい。
なんせ鳥取空港から約4時間、いっさいの休憩をとっていないのだ。
そういえば、以前にも旅に出たときは、この近くに日帰り温泉があった。
思い出したときに現れたのは、道の駅湯の川。案内看板にはちゃんと温泉マークも出ている。
ならば先に腹ごしらえである。
フードコートで、シンプルな蕎麦としじみご飯のセット(880円)をいただく。
抜群に美味いということはないけれど、走り通しで疲れた体にはこの出汁がやさしく染みわたる。セルフサービスで漬物も食べられるのだが、これがまたちょうどいい塩味で、蕎麦とご飯が進む。
サクッと完食したら、椅子に根が生えないうちに風呂を探す……のだけれど、どうにも見当たらない。おかしい。裏手にも田んぼと線路があるだけだ。落ち着くために喫煙所で煙草に火をつけ、一呼吸。
google検索すると、道の駅にあるのは足湯だけだという。むぅ。
しかしここで慌てても仕方あるまい。近辺に日帰り温泉があるのは分かっているのだ。
道の駅情報コーナーに戻ってチラシを見ると、どうやら5分のところに四季荘というのがあるらしい。とりあえずそこを目指すことにする。
たどり着いてみれば、どこか懐かしさのある建屋にそこそこ埋まってる駐車スペース。どうやら地元の方々の銭湯代わりにもなっているらしい。
県外の人はタオルと袋が頂けるらしいので、ありがたく使わせていただく。

入ってみれば、本当に懐かしさのある銭湯を思い出す。
壁際に8人分くらいの洗い場が並んでいて、大浴槽が一つ。一応露天風呂もあるけれど、そこも広い大浴槽がひとつ。
芋洗い状態にはならないだろうけれど、たくさんのお湯を楽しみたい人には不向きかもしれない。
運がよかったのか、内湯も含めほぼ独りで使えたので、ゆっくり1時間ほど温まらせていただきました。
上がったころには地元の方々が続々と入ってきたので、僕が来たタイミングもよかったらしい。

切り上げたら、いつものルートで出雲大社へと向かう。
国道9号線を西進し、出雲市のイオンモールで右折、どん突きを左折したらもう駐車場だ。
平日の夕方とはいえ、観光客がそれなりに残る中、初めて一番奥まで入った。お賽銭は、財布に手を入れて最初につかんだ100円玉。

--どうか、うまくやれますように。

願うは簡単だけれど、叶えるのは自分だから。だから、願うというよりは誓うのかもしれない。
運転席に戻って、ふとそんなことが頭を過る。
なんか、アンニュイ。
空を眺めたくなって、シートを倒す。ああ、逢魔が時だなぁ。

・自販機レストラン

気が付いた時には、太陽は完全に沈んで、宵闇が始まろうとしていた。
寝ていたのか気絶していたのかはわからないけれど、これで少しは目が冴えたかもしれない。
ガソリンを満タンにして、飲み物とラムネ菓子を追加する。
また山陰道無料区間を駆使して、今度は下関を目指す。目標は、明日の朝までに関門海峡を越えること。
そして晩御飯だけれど、やはり自販機レストラン生存率全国1位(個人の体感)の島根に来たからには、絶対に自販機レストランへは確実に立ち寄りところ。
かと言って今までに寄ったことのある所ではつまらないので、どこか知らないところで立ち寄りたいものだ。それなら、ひたすら走ってから目についたところに飛び込んでみよう。

そうして辿りついたのは、益田市の真っ暗な国道9号線沿いに特徴的な麺類自販機の赤い光が突如現れる「自販機コーナーオアシス」。
目の前に駐車スペースもあるので、そのまま車を寄せると、麺類の自販機が「うどん・ラーメン」と「うどん・そば」の二種あることに気が付いた。
どちらにしようか迷ったが、せっかくだからと両方食べてみることにした。
食レポは……当時の記憶が曖昧なので割愛させてもらうが、ラーメンの塩味が心地よかったこと、うどんの方は柚子が前面に出ていて、運転で疲れた体にはききそうだなぁと思ったことだけは、はっきり記憶している。

・そして九州へ

食べ終わって一息入れたら、行動再開。
バイパスや山陰道が繋がっていない益田の市街地だって、平日の深夜帯に入ってしまえばスイスイ進めてしまう。そこを抜けたら、あとは山口県まで山間部を貫くだけである。
県境に近づくにつれ、街灯もまばらな路傍に立つ外気温計の表示する気温がぐんぐん下がっていく。山口県に入り、ついにメーターに「Risk of ice.」の表示が出た。どうやら3℃以下になったらしい。その後、日付も変わってしまったことだしと、道の駅で仮眠をとったのだが、あまりの寒さに3時間も経たずに目が覚めてしまった。しかも雨が降りはじめており、お手洗いに行く気力もなくなる。雪に変わっていないだけましだと思い、シートヒータを最強にする。
天気予報を信じ、冬用コートの一切を自宅に置いてきたことを後悔した瞬間だった。
それでも山口市街地に近づくにつれて天候は回復し、国道2号線に入る頃にはすっかり止んでしまった。
防府に入って深夜は開いていないスタンドも多いからと念のために給油をしたが、それ以外は止まることもなく、順調に関門トンネルまで辿り着く。
午前5時。150円を支払い、海の中で福岡県に入る。
T社のハイブリッド車よりもティーノハイブリッドに遭遇しそうな某地区の通勤ラッシュに混ざりながら国道10号線を南下する。
工場を過ぎてしまえば、しばらくは快適に走れるバイパスで走り抜ける。
午前7時、流石に疲れと眠気が出てきた。福岡最後の道の駅かもしれない、「道の駅豊前おこしかけ」を見つけて滑り込む。
朝日が昇る中、ようやく寝袋に潜って落ち着けるのだった。

つづく。

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