彼女のためなら俺はモルモットでいい
このブログは『ウマ娘プリティーダービー』に登場する”アグネスタキオン”のストーリーの感想となっております。
そのためアグネスタキオンのストーリーのネタバレが書かれます。
ネタバレを好まない方はご注意ください。
はじめに
アグネスタキオンを分かりやすく表面的に言うならば『天才科学者タイプ』だ。元々のスペック自体が高く、”速さの果て”を目指すために様々な薬を作っている。
しかしドーピングをするためというわけではなく、あくまで「自分の脚で”速さの果て”に到達する」ための過程で必要なだけだ。
そんな彼女は授業の類をさぼり気味だ。その間に何をしているのかと言えば研究・研究・研究だ。すべては”速さの果て”に至るため。
レースにおいて成果は上げている。しかし授業どころかそのレースにおいてさえ彼女はサボり気味だった。故に、学園内において彼女の立場は退学寸前だった。
「”速さの果て”のため、研究をやめなければならないのなら退学もやむをえまい」
そんな彼女へ最後に一度だけ走ってほしいと一人のウマ娘が言う。それを受けて彼女は走った。自分の目指す可能性の果てへ。
彼女の姿にトレーナーはアグネスタキオンというウマ娘の見据える眩く輝かしい、それでいて儚い光を見た。
トレーナーは思った。その可能性の果てを自分も見てみたいと。俺はタキオンの儚い光に疑問を抱きながらも”速さの果て”を見てみたいと思ったんだ。
彼女は研究と実験を繰り返し、出来た薬は「モルモット」と呼ぶトレーナーに飲ませて髪を水色にしたり全身を発光させたりしてよく笑っている。
育成の上ではVR機器を利用したりもして自由奔放、化学どころではなく自分の肉体改造のためには文字通り何でもやる。
もちろん被験体となるのはモルモット(トレーナー)だが、悪気はないらしいから危ないことにはならないだろう多分。
しかしアグネスタキオンへ1つのレースが終わるごとに「次」の話をしようとするとイマイチ乗り気ではない。
たびたび口にしている「プラン」についてもまるで説明するそぶりもない。
話してほしいとは思うけれど、そこはお決まりの「今はまだ語るときではない」というやつで躱される。天才科学者というマイペースの象徴のような気質の彼女なら仕方のないことだろうと思った。
彼女が研究に没頭するのは
幾多のレースを終えてアグネスタキオンはモルモット(トレーナー)に話があるという。
「私の脚は爆弾を抱えている。だから君と一緒に最後まで走り切ることは難しかった」
俺は実際の馬について詳しくないのでかなり雑な説明をすると、実際のアグネスタキオンも三冠王達成が期待された日本ダービーの直前に屈腱炎というものになってしまった。
このウマ娘ではたびたび彼女は三冠王を目指すというモルモット(トレーナー)の言葉に対して消極的な態度であった。
それは史実におけるアグネスタキオンに基づいて、日本ダービーが限界点だったからだ。
彼女自身の見立てでは日本ダービーまで保たないと思っていた。だからといって彼女が何もしていなかったわけではない。
彼女には二つのプランがあった。
・プランA 自分の脚で”速さの果て”に至るプラン
・プランB 他の可能性がある娘に託す
自分の脚にこだわるなら肉体改造の研究は不可欠だった。これは1人のモルモット(トレーナー)の推測だが、それこそ授業もレースもサボって研究をし続けなければ一縷の望みさえも潰えてしまうほどに。
『儚い光』と書いたのを覚えているだろうか。その儚さというのはつまり、彼女の脚の不安定さによるところだったのだ。
それでもプランAには陰りがあった。それならばむしろ他の娘に託した方が可能性が高いと思った。
だから彼女はトレーニングを真面目にこなすようになった。
あのレースですべてを出し切ってしまおう、そしてプランBに切り替えようと考えていた。
だけどモルモット(トレーナー)は愚直に信じていた。アグネスタキオンならやれると、”速さの果て”に至ることが出来ると疑わなかった。
アグネスタキオンと同じくらい、あるいはそれ以上に狂ったその眼のおかげで彼女はプランAにレールを戻した。
そんな思いを抱えて合宿を終え、自分の脚がこれからのレースにも耐えうると確信した彼女はモルモット(トレーナー)とともに走り続けると決めたのだ。
彼女は限界を超えた。歴史も自分の予想も飛び越えて、アグネスタキオンは自分の脚で限界点を超えたんだ。
アグネスタキオンは自分が狂っていると自覚しているだろうし、モルモット(トレーナー)さえも狂わせているとわかっているかもしれない。
だが、アグネスタキオンが思っている以上に彼女はモルモット(トレーナー)によって狂わされていたんだ。
ともあれ、アグネスタキオンはモルモット(トレーナー)とともにアグネスタキオン自身の脚で”速さの果て”を目指すことが決まった。
もっと速くなるために
より速くなるためには外部要因から得られる影響にも関心があった。それはつまり”感情”だ。
研究・研究・研究の彼女が他人の感情というものに関心を抱くのはストーリー中のモルモット(トレーナー)はもちろん、プレイヤーの俺も驚いた。
それこそストーリー中のファン感謝祭などでファンサービスをするようになった時は本当にたまげた。
レースに勝ってファンからの声援を受けて心情的にも良い研究成果を得られたとも言うあたり、彼女のブレなさは流石だ。
そうやって彼女は走り続けた。プランBのことが頭をよぎったこともあったろう。
けれどファンの声援もモルモット(トレーナー)の応援も自分の研究も全て乗せて
アグネスタキオンは”速さの果て”に手をかける。
エンディング
URAを優勝してからのある日、彼女は当たり前のようにモルモット(トレーナー)のもとへやってきてデートと称して外へ連れ出す。
水族館に行ったりショッピングモールへ行ったり、そのくせ何をするでもなく次へ次へとどこかへ連れていく。
夕方になり、行動の意味が理解できないままのモルモット(トレーナー)へアグネスタキオンは問いかける。
「ここに至って何か思うところはないか?ドキドキしたとかときめきがあったとか」
これもまたやはり彼女の実験だったらしい。本当に彼女はブレない。今回はなぜこんな実験をしたのか、彼女は答える。
「繰り返し言っていたように『熱狂』や『情熱』といった感情のパワーに興味があったからね」
「あらゆるものが走りに干渉している。しかしあくまでも干渉効果であって決定打ではない。そう思っていたんだ」
「レースを走り切ると熱狂的な祝福が待っていた。彼らの声は私を確かに鼓舞し、追い風のような存在だった」
「だから彼らに心から礼を言いたかった。彼らを見上げ、そこで、ふと気付いたんだ」
「今、結果を出せたこと。いや、そもそもクラシックの先に、自分の脚でたどり着けたこと。それらすべて、『感情』の後押しがあってのものだったんじゃないか」
「こう思えば、こうして故障しない道を選んだのも、君の『感情』がそうさせたんだ」
「『感情』なんて、科学から最も離れたものだと思っていたが」
「意外や意外、表裏一体!侮れないものだね」
「さらに先を目指すのなら、この『感情』とやらを解明・分析しない手はない!」(以上、『ウマ娘プリティーダービー』アグネスタキオンのストーリーより引用)
ウマ娘の肉体に魅入られた彼女は自分の脚の脆さも克服し、レースを駆け上がり、そうしてとうとう幼いころからの夢さえも叶えてみせた。
ブレない確固たる自分を持つ、実験大好きな彼女はただひたすらにまじめな努力家だ。そんな彼女に対して、これ以上ないほど適切な評価をモルモット(トレーナー)は伝える。
”君は思ったより 泥臭いんだな”
それは言うに事欠いてそれは半分悪口だぞと彼女は笑いながら言う。
だが自分の脚で努力をして運命に抗い続け、ついには覆した彼女ならばこそ適切な言葉だろう。
「君が私のトレーナーでよかった ありがとう」
この言葉で、彼女の表情で、こんなにも報われたと強く思うとは想像だにしていなかった。
このゲームをしていて唯一の不満点があるとしたら、この時の彼女の困ったような笑顔をウインドウなど消してスクショができないことだ。
ともあれ、彼女に言うべき言葉はたった一つだ。
”君が担当ウマ娘でよかった”
「ああ、君は本当に優秀な良いモルモットだ!」
そういう彼女の手には心拍計とボイスレコーダーがしっかりと握られている。
そしてそれからも、アグネスタキオンとモルモット(トレーナー)の二人が可能性の果てを求める日々は続いていく。
まとめ
率直に言ってマジでやばかった。
このヤバさについてはアグネスタキオンの魅力はもちろん、シナリオの伏線の敷き方と回収の仕方が非常に上手い。
モルモット(トレーナー)が彼女に見た”儚さ”の意味を理解した瞬間の納得の深さがすごかった。
そして彼女が一貫して実験と研究を繰り返していたのは、彼女が自由気ままな実験大好きであるというわけではなく
自分の脆さと真剣に向き合って運命に抗い続ける泥臭いウマ娘であることを表現していた。
この信念の強さにはモルモット(トレーナー)となるしかなかった。繰り返しになるが、本当に彼女が担当ウマ娘でよかった。
メタ的な話だが、彼女のステータスはスピード・根性が上がりやすい。賢さではないのだ。
彼女の根性が上がりやすいのは、速さへの執着が頭脳ではなくその気概によるところが大きいからだろう。
さて、ここまで読んでアグネスタキオンに関心を持った方はぜひとも自分の目でシナリオを読み進めてほしい。
私の文章では本編の熱量の半分だって伝えきられていない。
すでにモルモット(トレーナー)となっている人はTwitterなどの共有でコメントを合わせて投稿してもらえればありがたい。
駄文失礼した。
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