春は解放の季節

退職しました。

4月に新卒として入社した会社を、3月いっぱいで退職しました。
いや〜ほんと、しんどかった!

退職の理由なんて人それぞれ様々あると思うけど、大きくポジティブなもの(未来への希望がいっぱい)とネガティブなもの(今の環境が無理すぎて無理)があると思います。
私の場合、後者が圧倒的に大きかった。

新卒で非美大卒でデザイナーになること

最近はSNS上でも「未経験から独学でデザイナーに!」みたいな人たくさん見ますが、みんなほんとにすごいな〜と心底思う。就活しながら、私を含め文系の多くは「営業職」という選択肢しかないことに疑問と不安を感じていました。こんなに話すのが下手で、人見知りで、「結果を出す」ことに執着心がない人は絶対営業しない方がいいじゃん、と思いながら、そして「10年後はどうなっていますか?」の質問に、んなもん知るわけねーだろ逆に教えろよと思いながら、なんとなくやっていて。

ふと、デザインを仕事にできたら、多分私の苦手な「話すこと」や「細かい事務作業」を避けられるんじゃないか?と思い、ノリでデザイナー向けの就活サイトに登録してみました。

最終的に、デザイン会社のディレクター(という名の営業)か、ECで小売をしている会社の社内デザイナーか、という2択が残りました。
・ディレクター→デザイナーより、デザイナー→ディレクターの方が行きやすそう
・紙も空間もWEBもやらせてくれるらしい
・小さくて若い会社って面白そう
という理由で、社内デザイナーに。

正社員・アルバイト含め、全部で20人にも満たない小さな会社で、1人の同期と、1人のボスと3人チームで仕事をしていました。
同期は高校から美術系、私はただの趣味。技術力は雲泥の差。
ただ、彼女は紙出身なので、私はボスから「きみはコードもわかるデザイナーになれ」と右も左もHTMLもCSSも分からない時期から、コーディングをすることに。
「力をつけるには、なにはともあれ量をこなすことと、仕事でやること」と身をもって体感…

人ができることができない

ただ、やはり「デザイン」となると同期の方が手も早いしクオリティも高いので、それはだんだんと彼女の担当に。
私は同期の作ったデザインのコーディングもしくはECサイトの修正変更などの細かい事務作業。
それが、あまりにも自分が不得意な作業であるかに気付いたんです。

何回確認しても後からミスが発見されたり、作業をしている途中で新しいタスクを振られた途端なにも分からなくなり段取りがぐちゃぐちゃになったり、作業はできたのにアップするデータを間違えたり…自分でもなぜなのか分からず、そのたびに怒られ、でも自分の中ではできているつもりなので「気をつけます」としか言えず。
自分なりに紙に書くことを徹底したり、確認を複数回したりしても効果は見られませんでした。

普段から、3か所お店にいくと3ヶ所ともに忘れ物をしてきたり、コンサートを観に東京に行ったのにチケットを忘れたり、明らかに間に合わないのが分からず、出かける直前に洗濯機を回し始めたり、「あ〜うっかりうっかり!」と思うことは(かなり)あったのですが、これが仕事になるとこうなるのね、と自分では理解し始めていました。
ググると、某精神障害の特徴にすっかり当てはまっていて、なるほどなと。
と同時に、治せるなら治したい、とも思い近所の精神科へ。(その予約もうっかりすっぽかし、大遅刻で登場するという徹底ぶり)

これまでの生い立ちや環境、症状の出方などを聞かれ、「ストレスが多いときに出やすいのかも」「もしきちんと病名を出すなら3時間1万円のテストを受ける必要がある」とのことで、そこまでして病名が欲しいわけではなかったので受けないことにしました。
(でも、今は薬を飲んで「普通の人」の生活ができている人がたくさんいることを知り、少し興味をもっています。)

私はこの性質によるミスや事故を「どうにかしたい」と思う一方「しょうがない」と諦めていて、でも会社はそんなことは知らないし消去法的に私がやるしかないので、渋々やっていました。
不得意なことをやるのは本当に辛い。同じ作業を同期がやると要領よく、ミスなくできるのに私にはできない。なのに自分がデザインができないからやらされる。これは本当に大きなストレスでした。
甘えてるように聞こえるかもしれないけど、「絶対私より得意で好きな人おるやろ!なんで私がやってんねん!」としか思えなかったです本当に。会社って、チームってそういうとこじゃないの!?

そうやってみんなが私に注意したり指摘したりするうちに、私の責任ではないことまで私のことみたいに言われることも出てきて、最初は言われっぱなしだったけどだんだんと「ここまでは私の責任で私が悪かった、でもこれは部署全体/会社全体の責任だから私だけに言わないで」とまで言えるようになったのは、悲しいかな成長した点ではあります。
それでも「じゃあそれはあなたが部署に言ってどうにかして」とか言われて、どうせみんな手一杯だから協力してもらえる訳もなく私が片付ける、ということは1度や2度ではありませんでした。そして急に主張するようになった私への態度が素っ気なくなるという、中学生ぶり…

その「できます」をやるのは誰?

よく仕事をもらうときは多少ハッタリをかました方がいい、成長につながる、とか言いますが、弊社社長は大ハッタリかましでした。
前職のつながりで個人的にコンサル業をやっており、その中でサイト制作が必要となるとすぐに「できます!」と言って持ってくるんです。
それやるの、私らだから。
「案件持ってくる前に相談して」「これ以上増やさないで」とボスが主張しているのに忘れているのかまた持ってくる。
そのくせ「うちは制作会社ちゃうし、なるつもりもない」みたいなことを言うんですよね。
本業のECに力入れた方がよくない?と思いながら、勝手に持ってこられた知らない会社の知らないサイトを作る日々。

途中でクライアントとのやりとりの担当をスムーズに私に変えられていることも何度かあり、「1年目から大きな裁量を任されて自己成長!」みたいなアレは「何もわからんやつが裁量任されたって管理しきれずに終了する」という結果に終わると分かりました。
しかも社長が持ってくる案件、まともな会社がひとつもなくて、普通のコミュニケーションが難しいとこばかりで超ストレス…

またあるときは、社内で新サイトを作るにあたり社長が「俺が全部テキスト書くわ!」と宣言し、全員「いやいや絶対終わらへんからみんなで分担しよや」って言っているのに結局最後まで手を離さず、間に合わず、全員で夜通し書くハメに。(歓迎会のあとみんなでオフィスに戻って終電までテキスト書いてるとき、世界一虚しかった)
彼の「できます」はもはや誰も信用していないのに、そんなことは棚に上げて人のタスクの納期にはうるさく突っ込むし、ほんとやってらんないんですよね。
多分会社で働くモチベーションって「社会にこんな影響を与えたい」「自分が成長したい」とかの他に「この人のために頑張りたい」ってのもあると思うんですが、社長しかりクライアントしかりそう思える人がなかなかおらず、難しいな〜と思いました。
尊敬できない人の元で働くのは難しい。

「時間がないって言う人おるけど、絶対そんなことないやろ、時間は作り出すものや」と言っていた本人が、資格試験に落ちて勉強する時間がなかったと言い訳したり、期日を1ヶ月以上も延期したりというのはなかなかの体を張ったコメディです。

また、これは業種的な問題なのですが、土日に急に「1日限定のクーポンでるからバナー作って出しといて」とかあるんですが、もちろん休日手当もないのに仕事しなきゃいけないのが嫌だな〜というのも一つ。

黒よりの黒

企業の環境や風土を色で表すことがありますが、それでいうならば弊社は「黒よりの黒」。
入社前に説明を受けたときは、基本的に法定どおりにやっているようなことを言っていたので安心しきっていたし、昨今Twitter等で「残業はマネジメント不足」「残業代払わない会社は違法」「○時になったら締め出される」などという声を多く聞くようになっていたのもあり、まさか目の前の会社が長時間労働を悪としない、残業代を払わない会社だと気づきもしませんでした。

「うちはほとんど飲み会はない」の裏には、「仕事is終わらない」が隠れており、「タイムカードがない」の裏には「労働時間は管理しない」が見えてきました。みんな(特にデザイナーチームは)定時で帰れることなんてこの年で片手で数えられるほど。
みんな20時まではいるし、とりわけ業務に時間がかかる私は、終電退社こそないものの21時22時もザラ。
帰ろうとしたときに「そういえばメルマガ打っといてや」と言われ、急遽本文とバナー3本作って、めちゃくちゃにやり直しさせられて1時間、とか。

労働時間が管理されていないので残業代などあるはずもなく、私たち新卒が社長面談の時に問いただしても「初任給の20万にみなし残業代を含んでいる」などとのたまう始末。聞いてねぇし、それ知ってたら入ってないし…
そうじゃなくても、こんだけみんなで残業して、それでも手一杯な状況って健康的って言えるんですかね?と聞いても、自分は前職で死ぬほど働いていたバナシと、バリバリ働いたやつとそこそこのやつは三十になったときに差がつくバナシばっかり。
そんな話してなくて、それ違法やでって感じなんですが…
1日8時間に対して20万という認識で契約したのであって、そこからはみ出た分への対価は払われていません。
またPCは自前なので、いくらでも持ち帰り残業や休日残業もできるんですよね。

求人を出すときも、(同じ目にあって欲しくないので)残業その他の規定は明記するべきと言っても誤魔化される。一応確認ですが、裁量労働制ではありません。

アルバイトの方々の残業代はきっちり出ているし、ハローワークに相談しているところもよく見ていたのでなおさら、私たちの人権が守られていない感じがして疑問でした。
家賃手当も入れて手取りで17万ちょっと。これで健康で文化的な最低限度の生活をしながら貯金は私には無理。

そして年末、私の叔母が亡くなったので総務の人に「慶弔休暇とかあれば使いたいのですが」と言うと(制度を知らないのもヤバイ)「あると思うからそれで帰っていいで」と言われました。
それが私の最終日(であったはずの日)に「あれ確認したら、うちの規則では2親等までやったからあと1.5日ぶん出勤せなあかんで」と。
3ヶ月も経った今言われたことと、その規則私見られへんやんと、なんの謝罪もないことと全て頭にきて、「就業規則は労働基準法で周知義務があるので、全員に公開しなければいけないし、公開していてもアクセスの仕方を共有すべきだと思うのですが」と言うと「そうですね。そうします。」とだけ。
もし見れてたら確認不足だった私の責任にもできるのにね。

弊社の明文化されたルールの少なさは、いくら若い会社といえど恐ろしいほどで、それに1年かかってやっと気が付きました。

そんなヤバヤバ会社に就職したこと、見抜けなかったこと、毎日残業で平日に約束なんてできないこと、全てが恥ずかしくて、誰にも言えなかった。
聞かれても「ぼちぼちかな」と当たり障りない言葉だけ返して、愚痴という愚痴も同期としか言っていなかった。
法律的にヤバヤバな部分はあるけど自分の仕事のできなさへの罪悪感もあったので。

夜遅く一人で帰りながら、全てを終わらせたいな〜と思って赤信号で一歩足が出そうになったり、朝玄関で座り込んで立てなくなったり、急に涙が出たり、ふっと押されると落っこちてしまいそうなギリギリのメンタルの時期もありました。
線路に飛び込む人って、死にたいとは思ってなくて、全部終わらせたいという気持ちなのかな、だとしたら「死んだら全部終わりだよ!」というセリフはむしろ背中を押してしまうのかな、などと考えたことも。

それでも私がストレスや過労でぶっ倒れてもきっとこの中の誰一人として責任を取ろうとはしないし、改善しようとも思わないんだろうなと思うとバカらしくなってきて、ここに居続けることをやめようと思ったわけです。

私より酷い環境の人も日本にはきっとたくさんいるのが現実ですが、私がきついんだからきつい。ただそれだけ。人には人のキャパがあります。

そして、同期とボスも近いうちにやめるとずっと言っているのですが、これは早く名乗り出ないとずっと残る羽目になると思ったので1番乗りで手をあげさせて頂きましたありがとうございます。言ったもん勝ち。

選べる側の人間になる

なんだかんだ言っても、私が「デザイナー」として働いていいよと言ってくれたのはこの会社しかなかったのが事実で、その結果苦手なことをやり続けたのも私のデザインが未熟だから。
残業が多いと言っても「制作会社の人はもっと遅くまで仕事して、帰ってからも勉強してる」などと返されるのも私の力不足。
毎日遅くまで仕事して、クタクタになって帰宅して、ご飯も食べるか食べないかでパタッと布団に倒れる日々で、時間外でスキルアップをするのは私には難しかったです。
そんな気力も体力もなかった。
確かにコーディングのように仕事で使うのがスキルアップには近道だったけど、「デザイン」の仕事はもらえなかったので上達スピードは遅かった。

自分の原因、会社の原因、いろいろありますが、私が会社や仕事を「選べる人」になるためにはちゃんと技術を身につけなければいけないと気が付きました。
そしたら苦手なことは得意な人に任せられるようになるかもしれない、もっとストレスのない労働環境で働けるかもしれない、と。

また、小売業の中で働くことで、セールのために作っては終わり、イベントのために作っては廃棄され、の繰り返しで、虚しくなってきたというのも事実。
もっと寿命の長いものづくりをしたいなという気持ちや、根本的なデザインの考え方に触れたいなという興味からデンマーク留学を決めるに至ります。

目の前のタスクに追われてどんどんミクロになっていた視界を、ドーンと一気に開けさせたい。手を動かすことが好きな自分と向き合いたい。自分の幸せをじっくり考えたい。それが実現できることを期待しています。

「仕事」の物差しをつくる

就活してるときって、バイト以外で働いたことがないわけなんですが、私は本当にどう働きたいかが分かっていませんでした。
定時退社で夜はゆっくりでもいいし、バリバリやってもいいし、褒め合うカルチャーでもいいし、厳しくされるのもいい、なんでもいい、むしろなにもわからない、という状態だったのですが、1年働いてみておそらく「仕事は時間内に収まる量をきっちり納めて、仕事外でのインプットやチャレンジを多く持ちたい」「褒める文化がある環境がいい」のかな、と思っています。
それは働いてみないと分からなかったことなので、自分の比較の物差しをつくるための時間だったと考えることもできます。
私、会社のYouTube担当で(紹介している商品の力とはいえ)10万再生の動画とかも出してるのに、誰一人褒めてくれないし、社長は自分の手柄みたいに話すし、基本的に人のできることよりできないことを口にする文化は本当に誰も幸せにしないなと思いました。
悔しいので私はみんなに小さくても褒め言葉をかけていこうと意識していましたが。

もし新しく仕事を始めたら、積極的に褒めて話を聞いてポジティブなコミュニケーションが取れる環境を選びたいしそうしていきたいですね。
また、会社のメンバーがいくら面白いバックグラウンドを持ってたって、いくら人生を楽しんでる人がいたって、トップが仕事もプライベートも楽しんでる人じゃないと会社自体にその文化が根付くことはなさそう、というのも気付き。
昼夜・休日問わず働いている自分が好きなタイプの社長なので、根本的に私とは真逆の価値観だったんですよね。それを人に強制はせずとも、小さい会社なのでどうしてもそっち寄りな風潮になってしまう。

苦し紛れの褒め言葉

弊社のヤバイところばっかり書きましたが、やはり若い会社のいい意味でのゆるさもあって、そこには救われていたと思います。
例えば服装・髪型が自由なこと。サンダルでもジーパンでもオン眉ぱっつん赤リップでも誰も何も言いません。来客が来てもサンダルでお茶出し。これが「オフィスカジュアル」だったら私は3日でやめていたかもしれない。一生私服でしか働きたくないです。
落ち着きのない私が、靴を脱いだり履いたり足を組んだり正座したり崩したりそわそわしても誰も気にしないのも救われました。

書類文化のなさも、大企業や古い企業からすると大きな違いかもしれません。
上司にハンコをもらう、という行為なんて1度もしたことがありませんし、有給は口頭で伝えてGoogleカレンダーで共有、メッセージやデータはchatworkでやり取り。(チャットぐらいは普通にあるか)退社後、休日は絶対にchatworkを見ないスタンスを貫いていました。みんな返してるけど、義務じゃないのにな。社長は昼夜問わず送ってくるので、通知もオフ。

仕事につながる試験や教材があれば、社長に一言言えば会社のアマゾンアカウントで購入できます。セミナーのお金も出してくれる。
私はそのリソースを最大限利用して去りたかったのですが、なにぶん土日は静かに休むことに徹していたので…

それから、なぜかデザイナーにはディスプレイ2枚+マイPCで3枚ディスプレイの環境がありました。PCは自分のを使わないといけないのと残業代が出ないので、そのくらいの恩恵があってもいいとは思いますが。

余談ですが、弊社の商材は革製品でして、日本のカッコいい職人やクラフトブランドを知れたのはよかったです。わたしも趣味で財布とか小物を作っているので、実際にいろんな商品を触ったり撮影したりするのは学びになりました。

ただ、弊社ブランドのミッションや、アパレルでもヴィーガンが増えている今革を扱うということが、世の中の流れを思うと全力で推すには疑問を感じるところもあって、全力で推せないもののために制作をするのは気が乗らないな...というのもありました。

まあでも私も私なりに自分の人権を守りながら、会社に対して主張しながら、業務は最後までスムーズにできるようにならなかったけど、ポンコツなりに耐え忍びました。
次はもっと私が活かされるような、仕事楽しい!って思えるような場所に出会えるといいな。
そうなるように頑張って成長します。

私にはTwitterのカッコイイ大人たちを見ているので、頑張ってれば「人もよくて」「条件もよくて」「楽しい仕事」ができると知っています。
そして、そのカッコイイ大人に私もなっていくぞ。

2019年夏からの留学資金として、応援をお願い致します〜〜がんばるので〜〜〜