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サッカー日本代表伊藤純也の書類送検で思い出すあの書類送検

サッカー日本代表伊藤純也が不起訴が見込まれる書類送検

 週刊新潮において報道されたサッカー日本代表伊藤純也の準強制性交致傷被疑「事件」(あえて「事件」と鍵かっこをつけています。)について、大阪府警察本部は大阪地方検察庁に書類送検しました。大阪地方検察庁が不起訴処分するという見通しについても併せて報道されました。
 なお、今回の記事の画像は世田谷警察署の画像をお借りしました。

 サッカー・フランス1部リーグのスタッド・ランス所属の伊東純也選手(31)が女性2人にわいせつな行為をしたなどとして告訴された問題で、大阪府警は2日、伊東選手を準強制性交致傷容疑で大阪地検に書類送検した。捜査関係者への取材で分かった。同地検は不起訴とする公算が大きい。
 府警は同日、女性2人も虚偽告訴容疑で書類送検した。
 女性2人は1月、伊東選手が2人を酔わせ、抵抗できない状態にした上で無理やり性的な暴行を加えたとする告訴状を提出。これに対し、伊東選手側は、女性の訴えに反する証拠があり、無理やり行為に及んだ事実はないとして、2人の訴えは虚偽だと告訴した。
 伊東選手の送検容疑は2023年6月、大阪市内のホテルで女性2人に性的暴行をした疑い。女性2人の送検容疑は、告訴内容に客観的事実と異なる内容が含まれていた疑い。
 伊東選手は22年のW杯カタール大会に日本代表として全4試合に出場。「デイリー新潮」が女性らとの性的トラブルを報じた後、今年2月に日本代表から離脱した。
 書類送検を受け、伊東選手の代理人弁護士は2日午後、東京都内で記者会見し、同選手が「早く捜査が終結し、代表復帰したい」とコメントしたことを明かした。

時事ドットコムニュース「サッカー伊東選手を書類送検 不起訴の公算ー大阪府警」

 刑事事件の公訴を提起する権限は検察官個人に与えられており、他の者や組織が刑事事件の公訴を提起することはできません。したがって、事件を受理した都道府県の警察本部は必ず事件を検察庁に送致します。被疑者を拘束したまま事件を送致することを身柄送検、事件の捜査資料等を送致することを書類送検といいます。つまり、送検は事件について被疑事実が固まったなどという事実とは関係なく行われるもので、特に書類送検についてはその多くが不起訴となるものが多いと聞きます。
 そして、書類送検というと私はある事件を思い出します。

李信恵さんを脅迫したしまふくろうさんの事件

 反差別界隈の中で書類送検された事件として思い浮かべるのは李信恵さんを脅迫したしまふくろうさんの事件です。
 行動界隈がなす差別的な活動に対して様々なアクションがなされ、その中で様々な人物が注目されてきました。初期において最も著名となったのは東村山問題に関する言論で中心的な役割を担ったAMUS(荒井禎雄さん、松沢呉一さん、宇留島瑞郎さん、3羽の雀さん)の4名でした。そして、その頃端役的なポジションであった李信恵さんが注目されるようになったのが、ガジェット通信「差別はネットの娯楽なのか」シリーズでした。特に沖縄県在住のしまふくろうさんが脅迫被疑事件で書類送検され、そのしまふくろうさんを告訴したのが著者である李信恵さんであるということは大きく注目されるきっかけとなりました。
 ただ、その後刑法や刑事訴訟法の取扱いを理解した上で考えると、李信恵さんは別に開かない壁を打ち破って書類送検にこぎつけたわけでもありませんし、書類送検という言葉の印象から刑事事件の本格的な捜査が始まるように感じたりするわけですが、警察の事件処理が終わったことを警察に伝えて事件関係の書類を引き継いだだけのことであることがわかるようになりました。
 在日コリアンを脅迫するようなクズはそれなりの制裁を受けるべきですし、書類送検によって事件が一区切りしたことは喜ぶべきことですが、李信恵さんは大きな宿題を忘れたままにしているのではないかと今では感じます。それは、書類送検がなされた後の検察官の処分内容の公開です。
 書類送検は前述のように被疑者の有罪が濃厚になったわけではありませんが、一般人が受け取る印象は有罪濃厚と事例が多いように感じます。だからこそ、李信恵さんはしまふくろうさんが公訴を提起されたか、不起訴となったかを明らかにすべきであったと思います。在日コリアンを脅迫するクズであったとしても、不起訴となって罪に問われる可能性がほとんどゼロになったか、公訴を提起されて裁判所で審理されることになったかを伝えることは、人権を守る立場から記事を書いている李信恵さんとして発信すべき情報であると思います。増してや、告訴した者に対しては検察が処分結果を文書で通知してくれますからわざわざ取材などする必要はないのです。その後、書類送検の知識が増えることと比例して、私の心の中で李信恵さんの言論人としての不誠実さが大きくなっていきました。

「大阪府警は7月3日、在日韓国・朝鮮人の排斥を主張するデモを批判したフリーライターの女性(41)を脅したとして、脅迫容疑で東京都品川区戸越、会社員の男(28)を書類送検した」――このニュース、多くのメディアで報じられたのでご存知の方も多いかと思うが、訴えたのは筆者だ。

ガジェット通信「差別はネットの娯楽なのか(15)」(李信恵)

 なお、しまふくろうさんが公開法廷での審理や略式手続に付されるようになると必ず発信していたはずと私が感じる李信恵さんがその後何も発信していないことから、しまふくろうさんは起訴猶予で不起訴となり、ご自分の意に沿わない結果であったことから李信恵さんがしまふくろうさんの事件に触れることがなくなったのではないかと私は想像しています。