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東京都保健福祉局が一般社団法人Colaboの再調査結果を公表 1 ~東京都保健福祉局は会計監査を乗り切ることができるのかその1

一般社団法人Colaboの調査結果が公表される

 令和5年3月3日、住民監査請求において一部請求が認容された一般社団法人Colaboの再調査結果が公表されました。

性暴力や虐待などの被害に遭った若い世代の女性を支援する事業で、東京都から委託を受けた団体が経費を報告するにあたり、処理のしかたに不備があったなどとして、都は190万円を経費と認めない決定をしました。

都は、東京の一般社団法人「Colabo」に5年前から性暴力や虐待などで居場所を失った少女たちを支援する事業を委託しています。

去年、「法人の会計報告に経費の過大申告がある」などと住民監査請求を受けて都の監査委員が調べたところ、法人の経費処理に不当な点が認められたとして、所管する都の福祉保健局に再調査を求めていました。

福祉保健局は3日、その結果を公表し、法人が経費として報告していた2900万円のうち、190万円を経費として認めない決定をしました。

それによりますと、他の事業も担当している税理士などの報酬が案分されないまま経費として計上されたものが100万円で最も多く、法人の自主事業のため、経費として適切でないと指摘されたものも6万円あります。

今回、認められなかった190万円を差し引いても、経費は委託費の上限を上回っているため、法人が返還する必要はないということです。

また、都は、法人が調査に対し、領収書の一部の提示を拒んだため、改善を求めたということです。

NHK「『Colabo』女性支援事業 東京都が経費の一部190万円認めず」

東京都は確実に来る会計検査をこの報告で乗り切ることができるのか

 一覧すると、東京都の報告書は事業に関して支出した費用として不適切に計上されていたものがあったものの、全体として事業のために支出した費用が委託契約額を上回っているため、委託料の返還を求めないというものであることがわかります。しかしながら、東京都のこの報告は、近い将来確実に来るであろう会計検査を乗り切ることができるものかという点においては危なっかしいものであるといえると思います。
 まず、会計検査院の調査官が東京都に問いかける質問として想定されるのは、若年被害女性等支援事業の委託契約によって受託者が支出する様々な費用の割合について東京都はどう考えているのかという点でしょう。
 若年被害女性等支援事業は、厚生労働省の若年被害女性等支援事業実施要綱に基づいて補助金が支給されていますが、補助金を受けて事業を実施する都道府県等においては、事業の目的を達成するために事業として実施する様々な費用の支出が適正になされているか確認する必要があります。例えば、若年被害女性等支援事業において、支援対象者との面談や支援対象者間の交流を促進し自立に向けた意識づけを目的とする会食等について、事業実施上必要性が認められていますが、受託者が給食費のみに委託料を費やしていたとすればどうでしょうか。事業実施上必要性が認められるからといって、適正な支出であると判断することは難しいのではないでしょうか。このため、国の補助金を受けて事業を実施する都道府県等は、受託者から事業に用いる費用の予算と決算報告を提出させることによって適正な支出がなされているか判断したり、都道府県等が費用の割合等について規則を決めて受託者にそれを守らせたりすることによって事業を進めていくわけです。

 会計検査では、受託者との契約において適切な費用割合について東京都に問いかけ、その際に東京都の考え方として外部に公開されている再調査報告書が調査官から示されることとなるでしょう。その際の東京都の回答次第では東京都が国から受領した補助金の返還を求められるおそれがありますし、不当行為の程度が著しいものであると判断されれば事業そのものの見直しを意見として付すことになるかもしれません。もちろん会計検査は一般社団法人Colaboに何らかの義務を課すことはありませんが、事業の方向性に大きな影響を与えるということの可能性はあり得るということです。