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原告タテナオコ、被告森奈津子「猫の力」名誉毀損裁判 3 〜訴状全文〜

訴状

2023年12月26日

東京地方裁判所 民事部 御中

原告訴訟代理人弁護士 神原 元

(当事者の住所氏名:タテナオコさんの住所地は東京都武蔵野市ではない。)

損害賠償請求事件
訴訟物の価額 金110万円
貼用印紙額 金1万1000円

第1 請求の趣旨

1 被告は、原告に対し、金110万円及びこれに対する2023年10月5日から支払済みまで年3分の割合による金員を支払え
2 訴訟費用は、被告の負担とする
との判決及び第1項につき仮執行の宣言を求める。

第2 請求の原因

1 当事者

(1) 原告は、住所地に居住する一市民である。
 原告は、インターネット上の短文投稿サイト「X」(旧Twitter)に、@naotate1とのアカウントを管理している。
(2) 被告は小説家であり、「白百合の会」の代表として、2023年6月15日に国会で意見陳述する等、大きな影響力を持っている。

2 被告らは、2023年10月5日、原告の投稿を引用し、別紙1投稿記事目録1の記事を投稿した(甲1 以下「本件投稿1」という)。
 本件投稿には、別紙2投稿記事目録2の記事(甲2 以下「本件投稿2」という)が引用されていた。

3 本件投稿が原告の名誉を毀損するものであること

(1) 人の品性、徳行、名声、信用等の人格的価値について社会から受ける客観的評価である名誉を違法に侵害する行為は名誉毀損として民法上不法行為と評価される(最高裁昭和61年6月11日判時1194号3頁)
(2) この点、本件投稿1は、そこに引用された本件投稿2と合わせて読めば、原告を「有名なしばき隊系活動家」と呼んだ上で、原告が、①原告が大学教授である小菅信子氏に嫌がらせを繰り返した事実、②同氏の愛猫を殺害した、又は、殺害を教唆し、幇助する等殺害に関与したとの事実を摘示し(以下「本件各摘示事実」という)、「後ろ暗いものがあるのだろう」と論評したものである。
(3) 「嫌がらせ」は不道徳な行為であり、また、飼い猫を殺害することは「器物損壊罪(刑法261条)に該当する犯罪行為である上、引用された本件投稿2においては、殺害の動機として「気に食わない知識人の愛猫を殺せば黙らせることができると考えた」等と政治的なテロリズムであることが示唆されているのであるから、そのような動機で嫌がらせをしたり、飼い猫を殺害する等したとの事実は原告の社会的評価を低下させることが明らかである。
(4) よって、被告は、本件投稿1を投稿したことについて、原告に対し、不法行為による損害賠償責任を負う。

4 予想される反論に対する再反論

(1) 被告は、本件投稿1は、本件摘示事実を摘示していないと反論することが予想される。
(2) しかし、この点、最高裁平成9年判決(最高裁平成9年9月9日判決民集51巻8号3804頁)は以下のとおり述べている。
「新聞記事中の名誉毀損の成否が問題となっている部分について、そこに用いられている語のみを通常の意味に従って理解した場合には、証拠等をもってその存否を解せないときにも、当該部分の前後の文脈や、記事の公表当時に一般の読者が有していた知識ないし、経験等を考慮し、右部分が、修辞上の誇張ないし強調を行うか、比喩的表現方法を用いるか、又は第三者からの伝聞内容の紹介や推論の形式を採用するなどによりつつ、間接的ないし婉曲に前記記事を主張するものと理解されるならば、同部分は、事実を摘示するものと見るのが相当である。また、右のような間接的な言及は欠けるにせよ、当該部分の前後の文脈等の事情を総合的に考慮すると、当該部分の叙述の前提として前記事由を黙示的に主張するものと理解されるならば、同部分は、やはり、事実を摘示するものととらえることが相当である。」
(3) この点、本件投稿1は、「反原発団体・首都圏反原発連合の活動家や、そこから派生したレイシストをしばき隊(現C.R.A.C.)の反差別チンピラやそのシンパが、小菅信子教授の愛猫に嫌がらせをしていた。そんな中、小菅教授の愛猫たまちゃんが何者かによって殺された」とか、「気に食わない知識人の愛猫を殺せば黙らせることができると考えた者がいたのかもしれない」等と記載された本件投稿2を引用し、「しばき隊の活動家」ないし「チンピラ」が愛猫を殺害したことを示唆しつつ、原告を「有名なしばき隊の活動家」と呼び、「小菅教授の愛猫が殺害されたことに関し、後ろ暗いものがあるのでしょう」というのであるから、当該部分の前後の文脈等の事情を総合的に考慮すると、当該部分の叙述の前提として本件各摘示事実を黙示的に主張するものというべきである。

5 損害

 原告は、本件投稿により、あたかも政治的理由に基づく嫌がらせや犯罪行為に関与したかのように表現されたことによって社会的評価を低下せられ、強い精神的苦痛を受けた。その慰謝料は金100万円を下らない。
 また、原告は、本訴を提起するため弁護士に依頼せざるを得ず、弁護士費用として請求額の1割に当たる金10万円を負担した。

6 結論

 よって、原告は、被告に対し、不法行為に基づく損害賠償請求権として、金11万円及びこれに対する2023年10月15日から支払済みまで民法所定年3分の割合による遅延損害金の支払いを求め、本訴に及ぶ次第である。

7 管轄の上申

 本件は名誉毀損訴訟であり、初雑な論点を含むので訴額に関わらず御庁にて受理していただくよう上申します。