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堀口英利さんの提案する和解交渉に関する私見

特定電気通信事業者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律の取扱いについて

 特定電気通信事業者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律に基づく発信者情報開示命令及び提供命令に関して堀口英利さんからコメントがありました。

こちらの記事は、既存の発信者情報開示請求と、新設された発信者情報開示命令を混同して、あたかも私が欺罔して金銭を得ているかのような印象を読者に与えています。端的に申し上げて「デマ」と言うべきものです。

改正プロバイダ責任制限法の施行に伴い新設された発信者情報開示命令・提供命令の申立ては「非訟事件」であり、非訟事件手続法 第30条の規定により非公開です。よって、東京地方裁判所に問い合わせても、その詳細が回答されるはずもありません。

早急に記事を訂正してください。

Horiguchi Hidetoshi

 非訟事件による手続があって公開されないことは事実です。それによる手続をなさっているのであれば、記事で触れていた私の懸念は解消されることになります。ただ、堀口英利さんがこの法律に基づく手続をされているのであれば、新たな懸念が生じます。コメントをくださったことの礼の意味でお伝えしますが、堀口英利さんはツイッターインクに対して発信者情報開示命令単独ではなく提供命令も加えて申立てをなさったとのことですが、これは堀口英利さんがこの手続をしてもらいたいと述べて弁護士に依頼したものか、名誉毀損に基づく損害賠償請求の前提としてツイッターの投稿者の情報を得たいと述べて弁護士からこの手続を提案されて実行したのかいずれでしょうか。前者であれば、依頼されている弁護士に本当にこの方法でいいのか確認される必要があると思いますし、後者であればインターネット上の名誉毀損等に詳しい別の弁護士に現在行っている手続について相談された方がよいと思います。

ネットの名誉毀損の認容額の判例

 インターネット上の名誉毀損を理由として提起された民事訴訟の認容額について私が知っている判例をご紹介します。なお、認容額が高額となっているプロボクサー2名はいずれも世界王者経験者です。堀口英利さんとの和解を検討される方の参考資料となると思います。

原告 ジャーナリスト 被告 行政書士・社会保険労務士
形態 原告 本人訴訟 被告 本人訴訟
請求原因 ブログで本人の画像に落書きをしたのものを公開した
認容額 10万円

原告 公務員 被告 元雑誌副編集長
形態 原告 本人訴訟 被告 本人訴訟
請求原因 ツイッターでの「個人情報を盗んでいる」とのツイートと個人情報公開
認容額 20万円

原告 元公務員 被告 元政治団体副代表
形態 原告 本人訴訟 被告 本人訴訟
請求原因 ブログでの「創価学会の4悪人」との表現
認容額 10万円

原告 大学院生 被告 元雑誌副編集長
形態 原告 弁護士に依頼 被告 本人訴訟
請求原因 ツイッターでの個人情報公開
認容額 10万円

原告 プロボクサー2名 被告 ジャーナリスト
形態 原告 弁護士に依頼 被告 弁護士に依頼
請求原因 日本ボクシングコミッション職員を監禁したとのブログ記事
認容額 150万円×2名

原告 出版社社長 被告 ジャーナリスト
形態 原告 弁護士に依頼 被告 弁護士に依頼
請求原因 ツイッターで過激派とツイート
認容額 10万円

原告 市民団体代表 被告 行政書士・社会保険労務士
形態 原告 本人訴訟 被告 本人訴訟
請求原因 ツイッターで強制執行をなしたとのツイート
認容額 10万円

当事者がなす和解文書には確認が必要

 堀口英利さんがなしている和解交渉の呼びかけですが、振込先口座が弁護士の預かり口座でなく堀口英利さんの口座であることから、弁護士に依頼せずになしている和解交渉であると思われます。
 和解交渉について、不法行為により損害を受けたとする当事者が行うことについては法的に問題がありませんが、和解文書の内容には確認が必要です。和解文書は、当事者同士の合意により争いを完全に終結させるというものでなければ意味がないからです。弁護士が作成した和解文書であれば信用ができますし、和解文書に不備があれば作成した弁護士に懲戒請求を行うことも可能ですが、当事者同士でなした和解文書に不備があって和解したことになっていなかったとすれば、それによるトラブルは和解した本人の責任で対応しなければならなくなります。したがって、和解を呼びかける側は和解文書の文案を公開すること、和解をしようとする側は和解の手続きについて弁護士を依頼するか和解文書について法律相談すると後々のトラブルが避けられると思います。