見出し画像

「Dappi」名誉毀損裁判当事者尋問 6/最終回 被告株式会社ワンズクエスト代表取締役陳述書

乙第2号証
陳述書
令和5年5月8日
被告 甲

1 はじめに

 私は、頭書事件において、原告から被告として訴訟を提起された株式会社ワンズクエスト(以下「当社」といいます。)の代表取締役を務めているとともに、私自身としても被告として訴訟提起されており、この度、裁判所で尋問を受ける予定となっておりますので、尋問に先立って、本件に関係する事実を本件陳述書で述べさせていただきます。

2 私の経歴等

 私は、地元の高校を卒業後に上京し、都内の専門学校に通ったのち、デジタル機器メーカーの販売会社に就職して、その後、別のシステム開発会社に転職してシステム開発のe-コマース事業等を担当しました。
 そして、平成13(2001年)年に、同システム開発会社を退職して、インターネット関連事業(ホームページ制作やメルマガ発行等)を主業務とする、当社の前身である合資会社ケーウッドを設立しました。
 会社設立当初は、頭書事件で私と同じく被告とされている乙(以下「(乙の苗字)」といいます。)と私の役員2名と、制作スタッフ1名の3名体制でしたが、設立から4~5年は厳しい経営状態が続いていました。
 平成18(2008)年頃になって、ホームページ制作業務が軌道に乗り出し、スタッフを増員する必要が生じたため、社名をワンズクエストに変更するとともに、株式会社に組織変更を行いました。
 また、平成20(2008)年頃からは、技術者を採用して、自社にて本格的にシステム開発業務を開始しました。
 また、平成26、27(2014、2015)年頃に、ペット関連事業を営んでいたメインキャスト株式会社(以下「メインキャスト社」といいます。)を完全子会社化しました。
 メインキャスト社は、当社が合資会社時代からの顧客で、ホームページ制作や顧客管理、クレジットカード決済システムの導入、イベント事業の提案などを行っていましたが、メインキャスト社の多数の従業員が退職したことが一因となって同社の業績悪化したことを受けて、同社の代表者からの要望もあり、当社にて組織改革と営業のサポートを行うこととして、メインキャスト社の全株式を買い取って子会社化することにしたものです。
 その後、令和2(2020)年には、メインキャスト社を吸収合併し、メインキャスト社が営んでいたペット関連事業については、現在、当社の一部門であるドッグイベントクラブ事業として茅ヶ崎支社にて行っています。
 ところで、私とともに頭書事件で被告となっている乙は、私の前職時代の友人で、合資会社設立には私以外にもう1人の社員(有限責任社員)が必要だったため、乙に参画を依頼したものです。
 乙は、当社の経営が軌道に乗るまでの数年間は他社の業務と並行しながら、当社の経営が軌道に乗るようになってからは、当社専任として、当社の決算や資金繰り、会計等々の財務関係を担当してもらっていますが、基本的にはリモートワークで仕事をしており、事務所に出社してくるのは1年のうちでも数回程度しかありません。

3 当社について

 当社の組織や各組織の業務内容については
頭書事件において、被告らが提出した準備書面(7)に記載のとおりで間違いありません。
 茅ヶ崎支社で行っているドッグイベントクラブ事業部に所属する従業員を除き、本部に勤務する役員及び従業員は合計15名で、そのうち役員が2名、企画制作部及びシステム開発部の従業員の10名(パート1名を含む)、業務管理部の従業員が3名となっています。
 本社に勤務する従業員については、概ね平日の午前10時から午後九時を基本としたフレックス制を採用しており、各従業員がそれぞれの業務内容や顧客対応状況に応じて、柔軟に対応しているほか、新型コロナウイルスの感染拡大以前からテレワークを推進しており、テレワーク勤務とするかどうかの判断も従業員各自の判断に委ねられていて、出社率は平均すると20%弱程度であり、通常時、オフィス内にいる従業員は平均すると2〜3名程度となっています。
 頭書事件でも問題となっている本件投稿がなされた当時、本社に出社してきた従業員の大半(本件投稿者を含む)が執務をしていたスペースのレイアウトは準備書面(3)の2頁に記載のレイアウト図のとおりで、かつ執務スペース内のそれぞれの机上や机の前には複数台のモニターが置かれており、着席している限り周囲の見通しは非常に悪いうえ、前述したように同時に在室している従業員が平均2〜3名と少なく、かつ各従業員がそれぞれ独立した業務を担当していることも多く、各従業員がそれぞれ独立した業務を担当していることも多く、各自がそれぞれのモニターに集中して作業を行っている時間が長いことから、本件投稿者の行為について、他の従業員や役員が気づくことは一切ありませんでした。

4 本件投稿について

 原告らは、本件投稿について、当社の業務として、私や乙が自ら、あるいは他の従業員らに指示して行わせたものである旨主張していますが、そのような事実は一切ありません。
 当社と合併する前からメインキャスト社がイベント関連情報等の発信にSNSを利用していたため、合併後のドッグイベントクラブ事業部ではSNSを利用していますが、本社にあるその他の部署ではツイッターを一切利用しておらず、SNSのアカウントももっていませんし、顧客からSNSの管理や更新を依頼されて行っていることもありません。
 つまり、茅ヶ崎支社にあるドッグイベント事業部(原文ママ)を除けば、当社において、業務でSNSに関わることは全くありませんし、本件投稿がされたツイッターアカウント(以下「本件アカウント」といいます。)も当社が開設したものではありません。
 本件が問題になった後で、本件アカウントに残っている投稿を確認しましたが、当社の業務に関係する投稿は一つもありませんでした。
 当社と何の関係もない投稿を、わざわざ当社の業務として従業員に行わせるはずもなく、このことからも本件投稿を含む一連の投稿が当社業務と無関係に行われたものであることは、冷静に考えれば容易に理解していただけるものと思います。
 また、私個人としても、ツイッターのアカウントはもっておらず、投稿をしたこともなく、投稿の仕方もよく分かっていません。

5 本件の発覚と本件投稿者に対する懲戒処分について

 当社が契約しているインターネット回線を通じて本件アカウントに本件投稿がされていた事実を、私が初めて把握したのは、訴外NTTコミュニケーションズ株式会社から当社に対して発信者情報開示に係る意見照会書が送付されてきた令和3年4月13日のことです。
 その時点では、誰が、当社内から本件アカウント投稿を行っていたのか全く分からなかったことから、1週間程度かけて、私が本社に勤務する従業員に聞き取りを行った結果、本件投稿者の特定に至りました。
 そこで、訴外NTTコミュニケーションズ株式会社きら当社に対して発信者情報開示に係る意見照会への対応は本件投稿者に任せることとし、併せて、私から本件投稿者のに対しては、勤務時間中に当社内から私的な投稿を行なっていたことについて、厳重注意をしました。
 原告からは、この時点で懲戒処分としなかったことが不自然であるなどと主張されていますが、令和3年4月の段階では、この問題がここまで大事になるとは考えてもおらず、本件投稿者に対して厳重注意をしておけば足りるという判断でした。
 しかしながら、それから半年ほどたった同年10月頃になって、当社事務所や私の自宅に多数の報道関係者あるいは報道関係者と称する人物が押しかけてきたり、問い合わせをしてきたりするなどの事態が発生し、本件投稿者が4月以降も投稿を継続していたことが分かるとともに、当社の営業活動が著しく害されることとなったため、かかる事情も踏まえて、同年11月になってから、私の判断で、本件投稿者に対して同年12月支給分から同年4年2月支給分までの3か月間、基本給の10パーセントの減給処分を科すことを決定し、本件投稿者に口頭で通告しました。
 なお、この処分について、本件投稿者から、一切異議などは出されていません。

6 本件投稿者の個人情報を開示できないこと

 裁判の中で、原告らからは、本件投稿者の氏名等の個人情報を開示するようにしつこく求められています。
 しかし、次に述べるような理由から、本件投稿者の個人情報開示に応じることはできません。
 令和3年10月以降、当社事務所や私の自宅に報道関係者等が多数押しよせてきたきたことは前述のとおりですが、その結果、テレビ番組の中で、当社が何らかの政治的思惑の下で、本件アカウントを運営し、本件投稿を行っていたと決めつけるかのような報道が繰り返されたり(別紙1)、原告らと同じ立憲民主党に所属する有田芳生議員から当社を揶揄するような投稿が繰り返されたりしました(別紙2)。
 これらの報道や投稿の中には、当社の社名がはっきりと出てくるわけではありませんが、当社の本社が入るビルの外観が写されているなど、その気になれば誰でも容易に当社のことだと特定できるだけの情報が垂れ流されています。
 実際に、グーグルの当社のクチコミ欄には、「最低の会社」「虚偽の内容に基づく他人の名誉毀損を行う会社」といった書き込みがなされていますし(別紙3)、当社の問い合わせ窓口には、「首吊って死ねや!カスが!絶対逃げ切れると思うなよ!!!死ねや!!!!!」「この税金泥棒が!地獄へ行け!」「帰り道が怖いですねぇ。夜道はお気をつけてください。後ろが怖いですよ。危険があるかも。」「夜道や電車、車道にはお気をつけてください笑 後ろには危険があるかも」といった、明らかに脅迫や業務妨害に当たるような書き込みがなされています(別紙4)。
 こうした一連のえい影響から、当時、当社の従業員や私の家族も大変疲弊し、とても大きな精神的ダメージを負うことになりました。
 もし、本件投稿者の個人情報を開示すれば、本件投稿者個人に対して、同様の事態が起こることが容易に想像できます。
 本件投稿者が行った投稿の当否は別として、本件投稿者も当社の従業員であり、わたしにとって大切な仲間ですし、会社としても従業員を守る義務があると余っていますから、個人情報を開示して本件投稿者やその家族を危険にさらすことは絶対にできません。

7 最後に

 本件投稿者を含む本件アカウントの一連の投稿は、あくまでも本件投稿者が私的に行ったものであって、当社や私、乙は一切関与していません。
 本件投稿が当社の業務として行われたという原告らの勝手な想像や思い込みにすぎず、全く事実に反するものですので、裁判所におかれましては、一日も早く、原告らの請求を棄却する判決を出していただきたく、お願いいたします。
以上